昔からの伝統ホルモゴルィ骨彫刻

 ニコライ・ザチニャエフさんは、マンモスの牙から肖像彫刻をつくっている。この高価な材料は1キロあたり3万ルーブル(約5万5000円)する。1キロは拳ほどの大きさ。顧客はマンモスの骨代を先払いすることが多いという。

 ニコライ・ザチニャエフさんは、マンモスの牙から肖像彫刻をつくっている。この高価な材料は1キロあたり3万ルーブル(約5万5000円)する。1キロは拳ほどの大きさ。顧客はマンモスの骨代を先払いすることが多いという。

ヤナ・デイネガ撮影
 マンモスやセイウチの牙などから、小さな像、ナイフ、宝飾品などを情熱的に彫刻する、ロシア極北の職人がいる。
 骨彫刻の芸術は何世紀にも渡り、ロシア北西部アルハンゲリスク州ホルモゴルィ村の生活に不可欠な一部となってきた。発祥は東ローマ帝国、中世のロシアまでさかのぼる。
 ホルモゴルィ村の芸術はかつて、ロシア全土で知られていた。ここの職人は17世紀、皇帝の注文に応じて制作するため、モスクワ・クレムリンにしばしば呼ばれていた。
 骨彫刻では、チェスの駒、マスク、動物や人間の像、宝飾品、ナイフ、食器などがつくられる。
 ホルモゴルィ彫刻家組合は、さまざまなビジネス・モデルを経てきた。工場企業になり、株式会社になった。2002年、ホルモゴルィ彫刻骨公営企業に変わった。
 最高だった時期はソ連時代の1930年~1970年。  国の支援のもと、製品はソ連で広く販売された。職人は国際見本市や美術館のコレクション用に特別な品をつくるよう求められることもあった。
 1990年代の経済混乱期、ホルモゴルィの骨彫刻業界は困難に直面した。職人は現在、旅行者向けのシンプルな民芸品を制作しているが、時に、高額な受注をすることもある。
 骨彫刻の職人は、材料の組み合わせにも目を向ける。骨や角は金属、木材、真珠とよく合う。
 マンモスやセイウチの牙、マッコウクジラの歯は、高価で貴重な材料。大口受注する芸術家のみが、これらの材料を買うことができる。大量生産には通常、牛の骨が使われる。
 ゾヤ・オレホワさんは、友人が働いていた店でマンモスの骨を偶然見つけた。重量5キロほどの骨が、マネキンを支える道具として使われていたのだ。
 骨彫刻を職業に選ぶと、離れるのは難しくなると、職人は話す。
 ゾヤ・ゴルバトワさんは、彫刻の需要が以前は高かったと話す。  以前は国中から受注していたが、今、職人は顧客探しに苦労している。
 職人のウラジーミル・ミニンさんは、モスクワに長く暮らしていた。ポップス音楽のコンサートの装飾を行っていた。ホルモゴルィの伝統芸術で生活に調和が生まれると感じ、モスクワを去った。
 職人は時々、ノルウェー、イスラエル、フランスなどの外国から受注する。ホルモゴルィ彫刻骨はアメリカでも知られている。
 1990年代、職人のミハイル・ブトリンさんは、ローマ法王の宝石箱を受注した。だが、注文はキャンセルになった。今はウラジーミル・プーチン大統領に文房具一式を制作したいと思っている。これにより、ホルモゴルィ彫刻骨の人気が戻ると考えている。