ネコ、クマ、剣闘士...ロシアのクラブ・マスコット

昨年12月中旬、あるネコがロシアの話題をさらった。ウラジオストク空港の店にひょっこりとあらわれたネコが、6万ルーブル(約11万円)相当の海産物をたいらげてしまったのだ。大きな注目を集める中、地元のアイスホッケー・チーム「アドミラル」は、このネコ(メスネコであった)の引き取りを名乗り出た。グルメで大食いなネコ様は、こうしてチームのシンボルとなった。
鉄鋼業が盛んなウラル地方チェリャビンスク市。ここにはもっとも屈強な人々が暮らしていると、国内では考えられている。地元のアイスホッケー・チーム「トラクトル(トラクター)」は、ホッキョクグマをシンボルに選んだ。ホッキョクグマのぬいぐるみはとても強そうだが、本物にはやはりかなわない。
ロシアでは、特に地方の工業都市で、アイスホッケーが大人気である。ウラル地方の別の産業中心地マグニトゴルスク市でも、住民が地元チーム「メタルルク」に熱狂している。キツネのマスコットのチモシャも、試合の盛り上げに一役買っている。
サッカー・クラブ「CSKAモスクワ」のマスコット選びに時間はかからなかった。その歴史が答えを与えてくれたからだ。CSKAモスクワのサポーターはライバルにしばしば「馬」と呼ばれていたが、CSKAの最初のスタジアムの場所にはかつて馬屋があった。クラブの幹部は21世紀に入り、馬のイメージをアピールすることを決めた。馬は今や、クラブに欠かせないものとなり、試合の合間に観客を楽しませている。
CSKAモスクワの最大のライバル「スパルタク・モスクワ」。サポーターはライバルに「豚」、「肉」と呼ばれている。モスクワの精肉コンビナートでチームが結成されたためだ。だがクラブは豚ではなく、その名称にもなっているスパルタクスから剣闘士をマスコットに選んだ。ローマの剣闘士の銅像は、昨年モスクワで開業した新スタジアム「スパルタク」のわきに立っている。
マスコットは陽気でファンを楽しませるもの。だが時に騒動の原因になることもある。2012年に行われた、クラスノダール市のバスケットボール・クラブ「ロコモティフ・クバン」と、モスクワ州のクラブ「ヒムキ」の試合で、騒動は起こった。ロコモティフ・クバンのキャラクター・マスコット「ズバスチク」が、休憩時間に相手チームのハリネズミのぬいぐるみを持ってコートにあらわれ、それを蹴ったり、ゴールに投げ入れたりしはじめたのだ。ヒムキの幹部は立腹し、このふるまいを無礼、下劣と呼んだ。ロコモティフ・クバンの社長は、行き過ぎたマスコットのふるまいに対し、正式に謝罪しなければならなくなった。
マスコットは時に、クラブへの注目度を高める存在にもなる。リーグ2部のアイスホッケー・クラブ「リペツク」は、マスコットのマルハナバチ「ジェカ」によって活気づいた。攻撃的でゆがんだ顔のマルハナバチは滑稽で、ロシアの人気トーク番組でネタにされ、すっかり知名度をあげた

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