ノヴォシビルスク動物園の“顔”リリガー

ノヴォシビルスク動物園は現在、あるユニークな動物の飼育場所になっている。それは「リリガー」とよばれる、ライガーとライオンの交雑種だ。最初のリリガーは、この動物園で2012年に生まれた。一番最初のリリガーは、映画”ライオン・キング2”の主役にちなんで、キアラと名付け られた。
その後3匹のリリガーの子が生まれた。ライガーの母親ジータの母乳がすぐに出なくなり、地元のネコが「乳母」役を果たさなければならなかったが、5月に生まれたリリガーたちは、かなり活発に育っている。
リリガーの子たちは1日2回エサを与えられる。このちびっ子動物たちは、それでも1日に7キロの肉、うさぎ1匹、ミルク800グラムと卵1個を平らげる。
彼らの母親のジータは、この動物園で2004年に生まれた。ライガーとは、ライオンの雄とトラ(タイガー)の雌との交配による雑種の子である。サイズと外見という点では、ライガーは、更新世期のホラアナライオンや、アメリカライオンに類似している。
ジータの出生は自然に発生した出来事で、全く意図的なものではなかった。「ユニークな交雑種をつくろうなんて、誰も考えてもいませんでした」と、ノヴォシビルスク動物学公園の上級技術士のローザ・ソロヴィヨワさんは、確信をもって話す。「スペースを節約するために、ライオンとトラ の子を2頭、同じ囲いに入れたんです。それはよくあることです。捕食動物の子は、食べ物をめぐって喧嘩する必要さえなければ、一緒に仲良く過ごせるものです。ライオンとトラの子たちは仲良くなり、跳ね回ったり、鬼ごっこをして一緒に遊んでいました。彼らが成長してきたら、もちろん別々の囲いに入れましたが、2頭の“愛人たち”は動物園全体をひっきりなしに忙しくさせました。
リリガーたちの父親は、アフリカライオンのサムだ。当初、交雑種の大型ネコたちは、ジータのように見世物用動物園やサーカスのような所で自然に生まれていた。しかし、これらの一風変わった動物たちに対して人々が興味津々であることに調教師たちが気づくと、意図的にリリガーが育成されるようになった。ヨーロッパのサーカスでは、こうしたネコを金もうけになる「招き猫」と呼んでいる。
ライガーは、世界一大型のネコだ。ちなみに世界一大きなライガーは、米国マイアミにあるインターアクティブ型テーマパークの”ジャングル・アイランド”で飼育されているヘラクレスだ。ヘラクレスの体重は410キロで、飼い猫100匹、あるいは大型のライオン2頭か、人間5〜6人分に匹敵し、その運送力は標準的なエレベーターと同じだ。ヘラクレスは、後足で立ち上がった場合の身長が4メートル近くにまでおよぶ巨体だ。
珍しい例外を除いて、ほとんどの雄のライガーにはたてがみがないが、ライオンとは違って、ライガーは泳ぐことができ、実際に泳ぐ。もう一つの独特な特徴は、雌のライガーには生殖能力があるということだ。これはネコ科の交雑種では珍しいことだ。
このライガーの驚異的な巨大さは、おそらくゲノム刷り込みの結果として生じたものだ。ゲノム刷り込みにおいて胎児と胎盤の成長を加速化させる遺伝子は、通常、父系の染色体によって活性化される。一方の、胎児の成長を妨げる役割を果たす遺伝子は、母系の染色体によって活性化される。
多婚性の動物種(雌が何頭もの雄と交尾することがあるライオンを含む)は、単婚性の種(トラを含む)よりも父系遺伝子から受ける影響がより強いと仮定されている。ライガーは、子どもの成育をより強力に促進するライオンの遺伝子を引き継ぐ。一方で、雌のトラの遺伝子は、それを阻害したり弱体化したりする。これにより、ライガーがライオンよりも大型で、タイゴン(父がトラで母がライオンの交雑種)がトラよりもより小型である理由の説 明がつく。
自然界には存在しない希有な動物としてライガーは象徴的な存在であるため、ノヴォシビルスク州のザエルツォフスキー地方では、ジータを記念してその紋章に採用されている。ノヴォシビルスクの生徒たちはジータについて作文を書かされ、子どもの「芸術宮殿」の 1つは「ライガー」と呼ばれている。
この動物園のスターであるジータは優しくて遊び好きだ。彼女は、知らない人に対して驚きと好奇心の表情を示すが、なじみのある顔に対しては微笑みに近いような表情で接する。毎日、ジータは8キロの肉を平らげるので、その外見は良く肥やされているように見える。
「ジータはこの地方のほとんど全員の子どもの顔を覚えているんですよ」とローザ・ソロビョーワさんは言う。「当然ジータの囲いは高い防護柵に囲まれているので、檻に近寄って彼女をなでたりすることはできません。なんといっても彼女は捕獲動物ですから、いつ彼女の本能が覚める可能性があるのか、誰にも分かりません。

このウェブサイトはクッキーを使用している。詳細は こちらを クリックしてください。

クッキーを受け入れる