お正月だけじゃない:ロシアの1月には祝日がたくさんある

Alexander Ryumin/TASS
 1月はロシアで最も「休日」の多い月だろう。一つの休日が“スムーズ”に別の休日につながることが何度かある。

 1月は、元日から休日が8日も続くため、ロシア人にとって最も好きな月の一つだ。しかし、1月にはさらにいくつかのお祝い事がある。 

1月7日:クリスマス(降誕祭)

モスクワの救世主ハリストス大聖堂でのクリスマスの礼拝、2023年

 正教徒のロシア人は、1月6日、つまりクリスマス・イブ(ロシア語で「ソチェリニク」)に、クリスマス(降誕祭)を祝い始める。 この日は、40日間にわたる、降誕祭前の精進の最終日で、最も厳しい日でもある。教会は、食を慎むよう定めており、許されるのは「ソチヴォ」だけだ。これは、蜂蜜やドライフルーツといっしょに煮た小麦粒である。これが「ソチェリニク」(クリスマス・イブ)という言葉の由来になっている。こうして、1月6日には、降誕祭の一連の礼拝(奉神礼)が始まる。

 1917年の革命以前には、ロシアのクリスマスは、ユリウス暦に従って12月25日に祝われていた。1918年以来、この国はグレゴリオ暦に切り替わり、この祝日は13日先に「移った」。

 しかし、ロシア正教会は依然として旧暦、つまりユリウス暦に従って「生きている」。ロシア正教会のウェブサイトでは、新暦(グレゴリオ暦)と旧暦(ユリウス暦)の両方の日付が常に示されている。したがって、グレゴリオ暦の1月7日が、ユリウス暦の12月25日になるわけだ。

 ソ連時代になっても、1929年まで1月7日は休日だった。この日を休日にする伝統が復活したのは1991年になってからだ。

1月6日~18日:スヴャトキ(クリスマス週間)

リャザン市、2017年

 「スヴャトキ」(クリスマス週間)は、 降誕祭と「主の洗礼」を記念する「神現祭」との間の12日間だ。それはクリスマス・イブ(ソチェリニク)に始まり、神現祭に終わる。

 この祝祭の時期には、異教のルーツがある。キリスト教導入以前の時代、スラヴ人は、12月20~22日の冬至の直後に、「コリャダ」を祝った。これは、季節の変わり目と冬の始まりを意味していた。キリスト教は、異教の伝統を新たな宗教的祝祭に置き換えようとしたわけだ。そのため、クリスマスは、冬至に非常に近い12月25日という日付に「設定」された。「スヴャトキ」は、キリスト教の祝日に「時期を合わせた」。しかし、それは元来の儀式的な要素を失わなかった。

 「スヴャトキ」は、異教では冬と春の間、キリスト教では2つの重要な宗教的祝祭の間の時期と位置づけられていた。民衆の考えでは、そのような「はざまの時間」には「コリャドヴァチ」してもよかった。つまり、お互いに訪問し合い、儀礼の歌をうたい、占いをすることさえできた。現在では、この期間にはさまざまな野外の娯楽が催される。 

1月14日:旧正月(文字通りに訳すと「古い新しい年」)

サンクトペテルブルク、2023年1月14日

 非公式にだが、この祝日は、新年の祝賀の終わりを告げる。多くの家ではクリスマスツリーや装飾が片付けられ、街ではクリスマスのイルミネーションが撤去される。

 1月14日という日付には、面白い背景がある。

 1699年12月20日に、ピョートル1世(大帝)は、暦も改めた。1月1日を元日と定め、合わせてキリスト生誕を紀元とする暦(いわゆる西暦)を導入する布告を出した。

 この暦の導入以前は、「世界創造紀元」が用いられていた。これは、10世紀末のキリスト教導入とともにビザンツ(東ローマ帝国)からロシアにとり入れられたもので、旧約聖書にしたがって、天地創造を西暦紀元前5508年とした。

 ピョートルは、世界創造紀元で7208年12月31日の翌日を、1700年1月1日とし、それを元日と定めた

 このピョートルの布告までは、9月1日が元日であり、これは、モスクワ大公国時代の1492年(世界創造紀元7000年)の布告にもとづく。この布告以前は3月1日が元日だった。

 革命後の1918年以来、ロシアは、ユリウス暦からグレゴリオ暦に切り替わり、暦は13日進んだ。グレゴリオ暦の新年の1月1日は、ユリウス暦12月19日となった。したがって、ユリウス暦の1月1日は、グレゴリオ暦の1月14日になる。旧正月(古い新年)は、ユリウス暦、つまり旧暦による新年だ。

 ちなみに、ロシア正教会は、ビザンツの伝統に従って教会年の始まりである「教会の新年」を祝う。上に記したように、ユリウス暦では9月1日(グレゴリオ暦では9月14日)だ。

1月19日:「神現祭」または「主の洗礼」

 キリスト教のこの祝日は、ヨルダン川でのイエスの洗礼を記念している。このとき、イエスは初めて救世主として世界に姿を現し、聖三位一体もまた世に現れたとされる。

 この日、ロシア全土で湖水や川の氷に穴が開けられ、正教会の司祭が水を成聖して聖水とする。 「神現祭」の聖水は、魂と体を癒す聖なるものとされる。

 聖三位一体の名において、水中に全身で3回浸かる慣わしだ。浸かる前ごとに、計3回十字を切る。

 この祝日では、その前夜も重要だ。これも「ソチェリニク」と呼ばれるが、「ナヴェチェリエ」の呼び名もある。この日、信者は食を慎み、「ソチヴォ」だけを口にする。教会で礼拝(奉神礼)が執り行われ、この祝日における最初の「大聖水式」が行われる(水を成聖して聖水とする儀式だが、日常的に適宜なされる小聖水式と区別する)。

1月25日:タチアナの日

カザンのTISBI経営大学での学生の日のお祝い

 1755年のこの日、女帝エリザヴェータ・ペトローヴナは、モスクワ大学創設の法令に署名した。当時用いられていたユリウス暦によれば、これは1月12日で、殉教者「ローマの聖タチアナ」を記念する日だ。タチアナは、ローマで生まれ、226年1月12日に殉教したと伝えられる。

 1791年、殉教者タチアナの教会が、大学の建物の翼の1つに設けられた。やがてタチアナは、教育機関、そしてすべての学生の庇護者だとされるようになる。

 2005年1月25日、ロシア大統領は、1月25日を「ロシア学生の日」と定める法令に署名した。

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