イリーナは1992年3月30日にモスクワに生まれた。生まれ育ったのは、まったく映画とは何の関係もない家庭で、母親は代々の美容師である。
映画に出演したいという夢は密かに持っていたという。しかし、叔母のアンナ・スタルシェンバウムが女優として人気を獲得したとき、彼女は計画を立て始めた。 もっとも常に懐疑心に悩まされていた。イリーナは後に、「わたしはどこにいるのか。国民の愛とはどのようなものなのかと考えていたんです。だって、俳優になれるのは人々に愛される人だけだから」と語っている。
どんな職業に就きたいのか決めることができないまま、彼女はモスクワ印刷大学のメディアビジネス・広報学部に入学した。一方で並行して、映画の世界について学ぶため、演劇コースの授業を受けたり、俳優のための心理的・肉体的トレーニングにも参加していた。
映画への道の第一歩となったのは、テレビでの仕事。イリーナは司会としての仕事をしながら、小劇団の芝居に出演した。デビュー作となったのは、「引越し」という作品。そのほぼ直後に、ロシアの田舎の雰囲気を持ったホラー映画「黒い水」に出演した。しかし、この映画のロケではあまり良い思い出は残っていないという。初日、イリーナはカメラに恐れを抱いた。しかも、映画の撮影の大部分はサンクトペテルブルクの凍った水の中で行われたのである。
今、イリーナはこの撮影について、映画における「もっともハードな経験」だったと振り返り、これに較べればどんな試練も大したことはないと語っている。
そしてその後すぐにイリーナはロシアのフョードル・ボンダルチューク監督のブロックバスター映画「制圧」の主役に抜擢された。巨大宇宙船がモスクワのベッドタウンに飛来したというこのSFアクション映画はたちまちヒット作となり、映画は10億ルーブル以上の興行収入を記録したほか、独立国家共同体、アジア諸国でも上映され、イリーナはあっという間に有名女優となった。
共演したアレクサンドル・ペトロフとの交際が報じられた後、2人は「Ice」、「Т-34レジェンド・オブ・ウォー」 を始めとしたいくつかのヒット作でも共演した。2人の関係は2019年まで続き、婚約まで発表していたが、結婚には至らず、破局した。
イリーナはブロックバスター映画から、大胆なドラマ「Soderjanki」(Amazon Primeが放映権を獲得)、少し小規模なプロジェクト(「The Dorm」の映画化)など、実に多彩な作品に出演している。 ちなみにこの「The Dorm」でイリーナは1980年代に活躍したソ連初のフェミニストで、自由な女学生を演じている。それまでハリウッドで活動していたロマン・ヴァシヤノフ監督が彼女を抜擢した。
今年広く公開されるマイケル・ウィンターボトム監督の「Shoshana」はイリーナにとって、初の英語での主役となった。共演はイギリスのスター、ダグラス・ブース、ハリー・メリング。この作品に向け、イリーナは自然な話し方をするためヘブライ語を習得した。
ウィンターボトム監督は、2018年のカンヌ映画祭で上映されたキリル・セレブレニコフ監督の映画「レト」(夏)で イリーナに目をつけた。イリーナは次のように回想している。「彼のプロデューサーが私にメールをくれ、新しい映画のURLを知らせてほしいと言われたんです。それからズームで話をしたときに、監督がわたしにこんなシナリオを用意していると言ってくれたのですが、そのシナリオが本当に気に入ったんです。人生で一番オリジナリティのあるシナリオでした」。
この作品以前にも彼女は欧米の映画に出演している。ナスターシャ・キンスキーと共演した、 ドイツの作家クレメンス・マイヤーの小説を下敷きにした「ダーク・サテライト」である。
イリーナがジャンカルロ・ジャンニーニやヤン・ベイヴートと共演する SF映画「The Primary Talent」は現在、ポストプロダクションの段階にある。これはある俳優と、ある殺人事件の謎解きをテーマにした作品である。
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