あなたがもしロシアの年金生活者だったなら、いくらもらえただろうか?

 ロシアの年金生活者は1人あたりいくらもらえるのか。誰がその年金を支払っているのか。その年金の額では何が買えるのか。ロシアの高齢者たちがどのような生活をしているのか、お話しよう。

ロシアの年金とは?

ロシアの年金手帳

 年金とは、人が公式に労働能力がない年齢に達したと認められたとき、毎月あるいは生涯にわたって、国家または保険会社から年金を受け取るお金のことである。しかし、法では、これは(よく勘違いされることが多いが)労働能力がない人間がもう働いてはならない、あるいは退職しなければならないということを意味するわけではない。仕事をしていても年金生活に入ることは可能である。その場合、その人は年金も給料も得ることになる。言い換えれば、年金というのは、賃金があってもなくても手にすることができるお金ということである。

 年金にはいくつかの種類がある。どの年金を受け取ることになるのかは、職場、勤続年数、障害の有無、戦争で負傷したかどうか、国家賞の授与されたかどうかなど、実にさまざまな要因による。しかし、ロシアでもっとも一般的な年金の種類は、国家が支払ってくれる「保険年金」と呼ばれる(保険を基礎としたものであるため)老齢年金である。

何歳から年金をもらえるのか?

 2019年に年金改革が行われて以降、この年齢は毎年、6ヶ月ずつ引き上げられている。この変更は、女性が60歳、男性が65歳で年金生活に入れるよう2028年まで続くことになっている(改革までは男女ともに5年早かった)。 

 いくつかの特定のグループの市民(およそ30ある)は早期に年金生活に入ることが可能となっている。たとえば、多子家庭の母親、有害な工場で働く労働者、極北の厳しい条件の下で働く人たち、障がいを抱える人たちなどである。

 しかし、年金生活に入る年齢以外も、重要な条件がある。

年金はどのように形成されているのか?

 保険年金を受け取るためには、定められた最低勤続年数働かなければならず、またいわゆる年金ポイント(納入した保険料の額に関わらず、勤続した年数を1ポイントとするもの)を有していなければならない。勤続年数とポイントが多ければ多いほど、年金額も多くなる。

 年金生活者の中には追加の支払いを受け取れる者がいる。たとえば、80歳以上の人、村や北極での労働経験がある人、扶養家族がいる人などである。この追加額はわずかな額であることもあれば、かなりの金額になることもある。

 2022年時点のロシアの平均老齢年金額は1万8,500ルーブル(およそ2万6,000円)となっている

 もっとも多額の年金を受け取るのは、危険な職業に就いていた人、人民芸術家、議員、裁判官、そして宇宙飛行士である。たとえば裁判官の年金は3万5,000〜20万ルーブル(およそ5〜28万円)、国家会議の議員は4万6,000ルーブル(およそ6万6,000円)以上、宇宙飛行士は平均44万6,000ルーブル(およそ65万円)である。

勤続年数や年金ポイントが足りなかった場合は?

 勤続年数やポイントが足りなかった場合は、最低勤続年数に達するまで(2022年の最低勤続年数は13年、ポイントは23.4)仕事を続けることができる。しかし、その職業が正式なものでなくても、あるいは仕事をしていなくても、その人は老齢年金を受け取ることができる。ただしこの場合は、保険年金ではなく、社会年金(最低額)となり、年金生活に入る年齢は自動的に5年遅くなる。

 ロシアの社会年金の金額は6,242ルーブル(およそ9,000円)。これは地域によって異なる最低生活費を下回るものである。そこで、最低生活費より不足している分は、その分を追加で支払ってくれる。たとえば、モスクワの最低生活費は2万1,193ルーブル(およそ3万円)、バルナウルでは1万0882ルーブル(およそ1万5,000円)、ウラジオストクでは1万2,119(およそ1万7,000円)となっている。

生活できる金額なのか?

 2019年、ロシア会計会議所の計算によれば、ロシアの年金生活者が、この年金額で生活するためには、1日200ルーブル(およそ280円)で暮らさなければならない。統計によれば、これは公共料金、医薬品の購入を払った後に、食料品に使える金額で、衣服や靴は含まれていない。

 こうした現実を背景に、老後の生活費のことを考え、年金生活に入るより前に、民間の年金基金に投資する人もいる。民間の年金基金は、大手企業や銀行、保険会社などが運営しており、こうした年金は「自主年金保険」と呼ばれる。これは国家が保障してくれる年金の代わりになるものではなく、追加で支払われるものとなる。

 つまりこれは、将来、年金生活に入る人たちが、自らに見合った形の投資の形で行う別の年金である。契約を結び、最初の支払いを行い、その後、定期的に支払いを行う。この民間の年金基金は、契約者の支払ったお金を、リスクを軽減しながら収入を得るため、株や証券、貴金属に投資してくれる。その後、年金生活に入る年齢に達すると、基金から毎月、年金をもらえるシステムになっている。 

 民間の年金に入っているオレグ・チホミロフさんは、「民間の基金では、年金を受け取る段階になると、自分が支払った分よりも金額が多くなっているんです」と話す。「支払い期間に支払ったお金の返金が必要となった場合は、年金の支払額が払い込んだ金額を下回ることになりますが、年金の支払い時期まで生きられなかった場合は罰則はなく、遺族が払い込んだ金額の全額を受け取ることができます」。

 しかしながら、このような民間の年金を利用している人の割合はそれほど高くはない。こうしたシステムにはデメリットもあり、ロシア人の間ではあまり信頼されていない。たとえば、インフレが上昇すると、長期的な収益性がなくなること、また利用する年金基金は5年に1度しか変えられないこと(変えた場合は年金が受け取れなくなる)、また本人は基金がどのような投資を行うか決められないことなどである。そこで、ロシア人の間では、「怪しいシステム。20年の間にこの基金に何かあったらどうなるのか。そのようなことはロシアではこれまでもよくあった。どうせなら不動産を購入して、年金生活に入ったら、その不動産収入を得る方がよっぽど信頼性が高い」というような意見が多く聞かれる

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