ダーク系の濃いアイシャドウ、長くしっかりつけたマスカラ、5ミリほども厚く描いたブラウン系の口紅、きれいに梳かしつけスプレーで固めたヘアースタイル、重厚なゴールドのネックレスに革のコート。これが、1990年代初頭のおしゃれな女性のファッションと言って、まず頭に浮かぶものである。
当時の写真をご覧いただこう。
濃いメイク、派手なヘアスタイル、黒のタートルネック、革のジャケットまたはコート。これはかつての時代のシンボルであった。ソ連後期、ファッション雑誌のモデルだけでなく、女性のほぼ半数がこのような格好をしていた。古い家族アルバムの写真がそのことを証明している。
この冷たい眼差しをした運命を感じさせる危険な美女のイメージには、はっきりとしたモデルがある。ロシアのドラマに出てくる地方のギャングの恋人たちは皆、このようなファッションをしていた。そしてロシアのブロガーたちが、「地元のカリスマのガールフレンド」という新たなファッション・トレンドを生み出した。
ユーザーのヴィクトリヤ・アンドレーエワさんが、Tik Tokにロシアのドラマや映画に出てくる有名な犯罪者たちの妻のイメージを再現した動画を投稿すると、激動の1990年代の美的感覚を取り入れたファッションはたちまち大人気となった。ヴィクトリヤさんは最初に自身の普段の姿を紹介している。
それから、ヴィクトリヤさんは、眉を黒く、細くし(当時は線のように細くするのが流行っていた)、目の下に黒いアイラインを入れ、暗い色のアイシャドーを塗り、ほお骨のあたりにチークを濃いめに入れる。そして髪を整え、「母親の洋服ダンスから取り出した服」で身を包む。
この動画は数百万回再生され、そこからこうしたファッションを再現する動画の撮影が流行となった。
コメントを見ると、過去のものとなった1990年代のファッションのファンが今もたくさんいることが分かる。人々は、かつての女性たちがヴェルサーチやドルチェ&ガッバーナといったブランド品を愛し、黄金のアクセサリーで自らの裕福さを見せつけるように着飾ったことを思い出している。
ファッション評論家たちは、「1990年代の犯罪社会のファッション」はソーシャルネットワーク以外でも人気を博する可能性があると指摘している。
スタイリストのラリサ・ブルガコワさんは、「ロシア人女性の広い心は、どこか心の奥深くで、派手で明るい生活を恋しく感じています。ヴェルサーチや喧嘩やカラオケのない楽しい生活なんてあるでしょうか。リスクと輝きを求める気持ち、『ママ、わたしの好きな人は犯罪者なの』という犯罪社会のロマンティシズムが求められているのです」と締めくくっている。