フィギュア世界選手権で表彰台を独占したロシアの3人娘(写真・動画特集)

oel Marklund/Keystone Press Agency/Global Look Press
 ストックホルムで開かれたフィギュアスケートの世界選手権大会の女子シングルでは、史上初めてロシア人選手が表彰台を独占した。1つの国の選手がメダルを独占するのは、米国の選手が達成した1991年以来のことである。

アンナ・シェルバコワ(金メダル)

 17歳のシェルバコワにとって、今シーズンの主要な大会である世界選手権は、シニアデビューの場となり、選手として大きな試練となった。2020年12月、シェルバコワは3度目のロシアチャンピオンとなり、ストックホルムへの出場権を手にしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響(トレーニングも定期的に行われなかった)だけでなく、健康の問題をも抱えることになった。

 シェルバコワは秋に重い肺炎にかかり、演技を滑りきれるかどうか分からないとさえされた。2ヶ月もの間、リンクに上がれず、屋内のトレーニングのみに集中し、その様子を録画・編集し、インスタグラムに投稿していた。コーチや両親は、ロシア選手権のショートプログラムの演技後、苦しそうに息をするシェルバコワに棄権するよう言ったが、彼女は意志を貫き、素晴らしい演技を見せた。

 「今まで、誰かがわたしに何かを無理強いしたことは一度もありません。両親はいつも、やりたくなかったらやめてもいいのよ、勉強してもいいし他のことをしてもいいと言ってくれていました。もちろん、それはもっと幼かったころのことで、今は両親も、わたしにとってスケートがとても大事なものであることを理解してくれていますし、ちょっとしたことでやめてもいいなどとは言いません」とあるインタビューで、シェルバコワは語っている

 シェルバコワは3歳半でスケートを始めた。比類ない成功を見せたシェルバコワは、伝説的なコーチであるエテリ・トゥトベリゼの指導を受けることになった。これまでに、世界ジュニア選手権で銀メダル、ヨーロッパ選手権で銀メダル、グランプリ・ファイナルで銀メダルを獲得している。

 2021年、シェルバコワは学校の卒業試験を受けることになっており、より大きな負担を抱えている。しかし、シェルバコワ曰く、学校の先生たちも協力してくれ、教材を郵送してくれているという。空いた時間があると、ドラマを見たり(シャーロック・ホームズがお気に入りとのこと)、学校の教科書ではないものを読んだりしている。最近気に入った本は、ストルガツキー兄弟の「路傍のピクニック」だという。しかし、生活のほとんどは、スポーツと大会のための旅行に割かれている。そして彼女自身、そんな生活がとても気に入っているのだそうだ。

 「普通の生活なんて想像できません。毎日、学校に行って、帰ってきて、宿題をしての繰り返しなんて、考えられません。わたしには動くことが必要なのです」。

 

エリザヴェータ・トゥクタミシェワ(銀メダル)

 24歳のトゥクタミシェワは、ウドムルト共和国グラゾフ出身。今回の世界選手権にたどり着くには6年かかった。2015年の世界選手権とヨーロッパ選手権で勝利を上げた後、2度のオリンピックと世界選手権に出場できなかったトゥクタミシェワが「偉大な復帰」を遂げると信じていた人はそう多くはなかった。すでにピークは過ぎたとも囁かれていた。 

 トゥクタミシェワは、すでに2000年代の終わりにロシア選手権大会の女子シングルで異彩を放った。スケートを始めたのは9歳と遅かったにもかかわらず、12歳のときには全種類の3回転ジャンプを習得するなど難易度の高い技を身につけたことから、フィギュアスケートの天才少女と言われ、もっともジャンプをたくさん跳ぶ選手との評判を手にした。

 「すでに高学年を終えていました。それからスケートを始め、大きな大会で勝利をあげるようになりました。2009年から2010年ごろのことで、ロシアの女子シングルは低迷していて、とにかくジャンプしなければなりませんでした。幼いころから、とにかく跳べば勝てたのです。それが標準でした」とトゥクタミシェワは打ち明けている

 2018年から2019年にかけては、グランプリシリーズで、キャビン・アテンダントの衣装をつけ、ブリトニー・スピアーズの「トキシック」のなまめしいメロディに乗って妖艶な演技をしたことで、世界でもっとも話題の選手となった。演技に対しては、やりすぎだとの非難の声も上がったが、彼女はこれに対し、「フィギュアスケートにセクシーさを取り戻しただけ」と答えた。

 2020年のグランプリ大会で、トゥクタミシェワは実力を見せつけ、今シーズンの勢力図を大きく変えた。そしてこの成功が偶然ではないことを、ロシアカップで証明したトゥクタミシェワはストックホルムへの切符を手にした。これほどのブランクを経て、いかにして第一線に戻ることができたのかとの問いに、トゥクタミシェワは「自分でも分かりません。わたしはいつも大きな大会の後、ゼロからスタートします。何年も結果を出せず、いつもと同じ生活を送っていても、自分ができると信じなければ、熱意は湧いてきません。しかし、新たなスタートを切れば、なんでもできると信じることができるのです」と答えている

 

アレクサンドラ・トゥルソワ(銅メダル) 

 トゥルソワはこの中で最年少の16歳。4歳でスケートを始め、2016年に有望なジュニアとして、エテリ・トゥトベリゼコーチの指導を受け始めた。

 今のところまだ、主要な大会では銀メダルと銅メダルしか手にしていないが、ミスのない高い技術で今後、大きな成功を収めるだろうと期待されている。

 トゥルソワはこれまで数々の記録を打ち立ててきた。何より、1つのプログラムに3つの4回転ジャンプを女子として初めて跳んだのがトゥルソワである。その技術力で、彼女はシニアのすべての選手を追い抜いた。最近のトゥルソワのエキシビションの演技は、シャロン・ストーンにもリポストされている。

 トゥルソワ自身は、人生で一番好きなものとして、スケートと犬(チワワのティーナ、プードルのラーナ、ハスキーのジャック)を挙げている。2020年以降はエヴゲーニー・プルシェンコに師事、トレーニング場への移動時間を短縮するため、プルシェンコのアカデミーに付属するコテージに滞在している。

 普段の生活について、トゥルソワは次のように説明している。「7時半ごろ起きて、朝食をとり、アイスリンクに行きます。朝はウォーミングアップかトレーニングか振り付けをして、それからリンクに入ります。その後、短いクールダウンをして、家に帰り、昼食をとり、少し休みます。それからまたリンクに行きます。またウォーミングアップかトレーニング、ダンスのレッスンです。そしてもう1度、滑って、クールダウンをします。夜、家に戻り、ほぼ毎日、スカイプで授業を受けています。ときどき、9時ごろにまたリンクに行って、滑ることもあります」。

 トゥルソワは、現在の大きな目標をオリンピックだとし、失敗したときの感情を取り戻すのがとても難しいと話す。「失敗すると落胆します。でも絶対にそれを表に出したりはしません。誰もそんなもの見たくはないからです。皆、明るく楽しそうなわたしを見にきてくれるのですから」。

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