ロシアは大量の雪をどのように処理しているのか?

ライフ
ヴィクトリヤ・リャビコワ
 戦車を使った除雪作業、街路清掃人の自作の発明品、融雪機・・・。降雪対策で使われるロシアの秘密兵器を紹介しよう。

 公共サービスの職員たちは、いつ雪が降るのかを知っている。普通、降雪が始まる4時間前に、天気予報士が教えてくれる。この4時間前の予報で、人々は降雪に備えることができる。除雪のための設備を準備し、急な勾配の坂道や橋、公共交通機関の停留所に滑り止めのための試薬をまくのである。

  ロシアの都市では、すべての通りや大通りが、重要性によりいくつかのカテゴリーに分けられている。 雪が降り始めると、公共サービスの職員たちはもっとも重要な地区から除雪作業を始める。自動車道、人の往来が活発な歩道、市の重要な施設―病院、消防署、警察などに向かう道、そして公共交通機関のルートなどである。その重要な区域の除雪が終わってから、小さな通りの清掃を始め、学校、幼稚園、小さな歩道、住宅周辺地区などを除雪する。

 また都市では、住宅敷地内の除雪に関する規定がある。たとえば、モスクワでは、歩道に2センチ以上の雪が積もると除雪を始めることになっている。また激しい降雪のときの決まりもある。もしも1時間に1〜2センチの降雪があるときは、清掃人は4時間以内、そして翌日の朝9時までに除雪を行わなければならない。降雪が1時間に2センチ以上の場合、清掃人は積雪が4センチに達するまでに除雪作業を開始する。

  降雪が多すぎて、街路清掃人の勤務時間内に除雪しきれないということは珍しくない。そのときは、24時間体制で除雪が行われる。2020年の秋、ヴォルゴドンスク(モスクワから1,100キロ)やサラトフ(モスクワから842キロ)では24時間体制での除雪が始まった。

 除雪を行う清掃人にはさまざまな設備が用意されている。一番多いのが、必要な設備を搭載できるトラック、除雪設備のついたトラクター、そしてショベルローダーなどである。こうした除雪車は、モスクワには7,600台ある。その他の都市ではもう少し数は少なく、数百台となっている。加えて、住宅の前などでは清掃人がショベルで手作業の除雪をする。除雪車で清掃した後に残った雪を手作業で取り除く場合もある。

融雪

 モスクワでは2002年まで、集めた雪をモスクワ川に投棄していたが、現在、モスクワ、サンクトペテルブルク、カザン、ノヴォシビルスクなどの100万人都市では、融雪機を使って、そのまま水に変えてしまうという方法が用いられている。

 融雪所には、プール状の2つのコンクリートの容器と2本のポンプがあると話すのは水道会社「モスヴォドストク」の技師ゲオルギー・レヴィンさんは言う。片方の容器に雪と温水を入れると、融雪が起こる。溶けた雪は別の容器に移され、集水機にたまり、それをモスクワ川に流すのである。この2つの穴には網がついていて、降雪の中に入っているゴミなどを除去することができるようになっている。 

 モスクワにある融雪所の管理会社のアレクセイ・ボイコフ副社長は、「ゴミの中には、花の苗や縁石などがあります。ベビーカーが入っていたこともあるんですよ」と話す

 こうした融雪機の他に、ロシアの都市には雪の集積場がある。集めた雪が運ばれ、春になり自然に融けるまでそこに放置される。エカテリンブルクにある施設には、一冬の間に12万トンもの雪が運ばれる

軍の援助

 2020年11月20日、モスクワから195キロ離れた人口30万人強のカルーガを雹と雪が襲い、道路、自動車、道路標識、ベンチなどが雪の層に覆われた。降雪は2日続いたが、2日目の朝には街路清掃人たちは、22センチもの積雪を処理するのは無理だということが分かった。

 カルーガ州のドミトリー・デニソフ知事は、23日に「軍と相談することにした。街にはなんとかするだけの資源がありません」との声明を表した

 こうした戦法をとるのは珍しいことではない。異常なほどの降雪があるときには、自治体政府は除雪のために軍の援助を要請する。2018年、140年ぶりの豪雪の際にもモスクワとモスクワ州で、また2019年にはクールスク州(モスクワから525キロ)、ヴォルゴグラード(モスクワから969キロ)、サラトフ(モスクワから842キロ)で、それぞれ軍が出動し、除雪作業にあたった。しかし、戦車でさえも対処できないこともあると言う。

 2019年1月に、雪にはまって動けなくなった戦車をスマホで撮影した兵士は、「雪にハマった戦車もあれば、故障した戦車もある」と紹介している

 中には、戦車でさえも近づけない雪の塊もある。2020年4月、北方ムールマンスク州にあるテリベルカ村は、降雪が道路を分断したため、2週間にわたって、文明から切り離された。地元住民には食料がソリで運ばれ、除雪車が車列になって雪かきを行った。

 住民の1人、ラリサ・ホロドワさんは、「20年この村に住んでいます。家の玄関を出ると、雪のトンネルのような道を歩くのですが、あれほど恐ろしいのは初めてでした。タイミングよく対策を行い、それから良い除雪機を用意することです」と不満を口にした

超ハイテク機器

 ペルミ(モスクワから1,400キロ)在住の3人の発明家は2013年に、自動清掃人を作った。家の周囲の雪かきをしてくれるショベルを持った小さなロボットで、ジョイスティックで遠隔操作できるというものである。

 ロボットを開発したメンバーの1人、オレグ・キヴォクルツェフさん,は、「ロボットには3つのモードがあります。1つは人が操作するモード。窓のそばに立ち、ロボットの動きを見ながら、外に出ることなく操作できます。2つ目はコンピュータゲームのようなモード。モニターを見ながら、ロボットを操作します。そして3つ目は自動モードで、ユーザーが雪かきをし、「保存」ボタンを押しておけば、次からロボットは「開始」ボタンを押すと自動でその作業を行います」と説明している。

 当時、50台ほどがヨーロッパに輸出されたと言うが、ロシアの通りにこのロボットが現れることはなかった。 

 2020年、ペルミ州ではショベルの代わりにブロワー、ケメロヴォ(モスクワから3,600キロ)では芝刈り機が支給された。実はこれらの道具も除雪に役立つことが分かったのである。

 モスクワの街路清掃人、アンドレイ・ペトロフさんは創意工夫を凝らしている。2020年2月、除雪機をつけた自作の一輪車で雪かきをした。

 ペトロフさんは、「雪かきショベルは半分に切ったガスボンベで作り、タイヤは庭用のリヤカーのを使いました。取っ手はパイプを曲げて作りました。作業は大変ですが、人々に必要なものだと感じました」と話している

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