ロシア人はどのようにしてサンタクロースを信じなくなるのか

ライフ
ゲオルギー・マナエフ
 多くの人々にとって、両親や祖父母が子どもたちにジェド・マロース(ロシア版サンタクロース)を信じさせようと奮闘してくれたことは最良の思い出となっている。

 ロシアの子どもたちにとって、無邪気な子ども時代と、ジェド・マロースの存在を信じている時期はほぼ合致している。わたしたちは疑いもなく、恥ずかしげもなく、そして分かりやすいトリックにも気付かずに、”優しいおじいさん”の存在を信じているのである。27歳のオレグは5歳のとき、ジェド・マロースがやってくるとき、父親がどこかに出かけて「留守にしていた」事実をまったく関連づけていなかったと回想する。また35歳のゲオルギーはジェド・マロースに書いて窓から投げた手紙を、ちょうど仕事に出かけた母親が階下で拾っていたことにまったく気づいていなかったと話す。

 しかしジェド・マロースを信じる気持ちは時とともに揺らいでいくものだ。それは普通こんな風に起こる。アレクサンドラ(32歳)は語る。「ジェド・マロースが小窓から飛んでくるのを待ち伏せしようと部屋に待ちかまえていたら(自分の家がある1階の窓には鉄格子がついていることも心配しつつ)、大急ぎでクリスマスツリーの下にプレゼントを隠す両親を見つけてしまったんです」。

自分が誰かを見破られて

 一方、もっと驚くべき話もある。「新年の最初のある日、父親がジェド・マロースの格好をしていたんです。そのときわたしは5歳くらいだったのですが、当時はまったく気づきませんでした」と話すのは27歳のオレグ。「でも数年経って、まるでハリウッド映画のフラッシュバックのようにクリスマスのことを思い出し、すべてが嘘だったことに気づいたんです。ジェド・マロースなんて存在せず、パパが変装していたのだと。すべてを悟ったのは次のようなことがあったからです。新年の朝の仮装のために母がわたしにちょっと変わった衣装を作ってくれたんです。その衣装は「秘密の人物」というものでした。段ボールで作ったシルクハットに黒いコート、英国風チェック柄のベストというもので、それはファンシーなものでした。そしてジェド・マロースは部屋に入ってくるやいなや、どこかで聞いたことがあるような声で「おお、これが秘密の人物だね!」と言ったのです。5歳のわたしは北極から来たおじいさんの洞察力の高さにただただ驚きました(彼はこれほど“はっきりしない”衣装が何なのか分かったのですから)。そして数年後、わたしは騙されていたのだということを理解しました。すぐにパパのところに走っていって、本当のことを話してと言うと、父はすべてを白状しました」。

 一方、子どもたち自身が、家庭での演し物で、ジェド・マロースになったりスネグーロチカ(雪娘)になったりしてお祝いごとに参加する場合があり、子どもたちはクリスマスのイベントの仕組みを内側から理解するようになる。33歳のグレプは、5歳くらいのときにジェド・マロースの格好をして、近所のおばあさんにお祝いを言いに行かされたという。「それですべてをすっかり理解してしまいました」。

ジェド・マロースの存在を守り続ける

 ジェド・マロースの存在を子どもたちに信じさせることに、親はある程度の責任を感じている。ある親にとっては、物分かりのよい子どもたちにはもはや隠すことが何もなくなったときでも、伝説を守ることは「名誉の問題」であり続けている。「数年間、夜中の12時になるとわたしは家族の中でもっとも疑い深くなり、ジェド・マロースが小窓から忍び込むのを見てやろうとしていました」と話すのは25歳のカーチャ。「しかしわたしが目にしたのは、両親が奇妙な行動をとり、ツリーを持ってわたしの横を通り過ぎて、部屋にこそこそ入ってくる光景でした。しかし両親がわたしのそばまで来たとき、わたしは言いました。もうお芝居はいいよ。全部知ってるから!と。しかし両親は頑として、自分たちは知らない、これはすべてジェド・マロースがやってくれたんだ。これは奇跡なんだと言い張りました」。

 また両親がジェド・マロースに変装したり、秘密を装ったりしなくてもよい場合もある。その場合はもっと親の上の世代の者が助けてくれるのである。31歳のワシリーは、自分にクリスマスのプレゼントをくれるのは両親だと言うことをよく知っていた。しかしそれだけではちょっと物足りない魔法の力を感じさせてくれたのは祖母であった。祖母は「魔法使いの冷蔵庫」なるものを考えだしたのである。「祖母の家にはジル製の冷蔵庫があったのですが、新年が近くなるとそのトレイの中にジェド・マロースからの手紙が置いてあり、プレゼントがいつもフルーツケースの中に入っていました」。彼は、6歳くらいのときにこれが普通の冷蔵庫だということに気がついた。しかし祖母はこの瞬間が来ることを予見していたのである。「わたしが冷蔵庫の中から最後に見つけたプレゼントには魔法使いの冷蔵庫から胸を打つメッセージがついていたんです。わたしはもう年老いてしまったので、魔法の力がもうなくなってしまいましたとね」。

 残念ながら、最近のクリスマスには、世界のすべての街にありとあらゆる大量のジェド・マロースやサンタクロースが溢れるようになってしまった。その数はあまりに多すぎて、ジェド・マロースが貴重なものであると子どもは信じなくなっている。34歳のマリヤは、4歳の娘に「ママ、ジェド・マロースって、お仕事の名前?」と訊かれたことを覚えている。

 おそらくすべての子ども時代の記憶の中にあるサンタクロース、あなたにはどんな思い出があるでしょうか?もしかしてあなたはまだサンタクロースが本当にいると信じているのでは?あなたのサンタクロースの思い出をぜひコメント欄で共有してください。

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