2019年2月19日、画家のワレリー・イワノフさんは、自身の“作品”をモスクワのオークションハウス「十二番目の椅子」(小説『十二の椅子』に引っかけている)で売却したが、これは一風変わったものだった。
大きなキャンバスに黒いゴシック体で 「Prostite」(許してください、ごめんなさい)と書いてあり、その下に、ソ連最後の指導者ミハイル・ゴルバチョフの自筆のサインがある。このソ連最初のそして最後の大統領の下で、かつて超大国だったソ連は1991年末に崩壊した。
これは、アイロニカルな「芸術的挑発」といった作品だが、いちばんの「ミソ」は、ゴルバチョフがこの手の題辞、碑文を書いたことがない点だ。この作品が生まれた経緯をその作者イワノフさんは、次のように説明している。
2009年、イワノフさんがまだ学生だったときのこと、彼の大学でゴルバチョフが講演したことがあった。「講演の後で、非公式の会話が持たれた…。私は、大きなキャンバスとマーカーペンを用意し、勇気を出しながら、ゴルバチョフに何かを描くように頼んだ」
元政治家は微笑み、キャンバスに署名して、私の願いにこう答えた。「君が自分で何かを描きなさい。君には十分なファンタジーがあると思うよ!」
で、イワノフさんはそうした。その日のうちにキャンバスに「ごめんなさい」と書き込み、ゴルバチョフの「共同制作者」になったわけだ。
幸運にも、このキャンバスは、10年後に1200万ルーブル(約2000万円)を彼にもたらした。買い手は匿名を希望している。
ゴルバチョフ自身がこの驚きの顛末をどう思っているかは推測するしかない。
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