なぜロシアの人口は減るのか

キリル・ブラガ撮影/Sputnik
 2050年のロシアの人口は? 最新の人口予測では、ロシアの人口は2050年までに約1000万人減るという。だがこれは楽観的な予測とされており、ロシアの人口はもっと劇的に減少する可能性がある。ロシアは人口の点でイギリスに抜かれてしまうのだろうか。

 ガイダル・フォーラム(ソ連崩壊後初の首相代行ガイダルに因んで名付けられた専門家組織)で発表された予測では、2050年のロシアの人口は約1億3700万人と見積もられている。

  ロシア大統領府直属国立経済行政アカデミーとロシア連邦統計局、国際応用システム分析研究所が共同で行った調査で導かれたこの結論は、最も暗いものではない。例えば国連の予測は、2050年のロシアの人口を1億3200万人と見積もっている。だがこれも最悪のシナリオではない。「10年前に出された最も悲観的な予想では、2050年までの人口は1億2000万人とされていた。当時はそれが非常に現実的に思われた。もし我々が過去15年の成果をすべて失い、出生率と死亡率とを当時の水準に戻せば、21世紀末には容易に1億1000万人や1億人に達してしまうからだ。この場合、人口の点でイギリスがロシアを抜くことになる」と大統領府直属国立アカデミーの人口学者、経済学者のセルゲイ・シュリギン氏は言う。

 実際、ロシアの人口は2年連続で減少している。2018年の10ヶ月間の死亡者数は新生児数を18万人上回った(昨年の値は11万5千人)。これは人口が増加していた前年までの状況と矛盾するものだ。

「人口は減少の一途」

 今は状況が異なる。最新の人口予測の作成者らによれば、現状ではロシアの人口は減少の一途を辿っている。新生児数が減少しているのは、それが人口ピラミッドの影響を受けるからだ。今ロシアの出生率がいくぶん上がり、一人の女性につき2人の子供を産むようになったとしても、人口増加の潜在性と呼ばれる単純なモデルによって、新生児数は減り続けるだろう」と予測を発表した科学プロジェクトの責任者、セルゲイ・シチェルボフ氏は話す。一人の女性が2人の子供を産むこと(この指標は総計出生率と呼ばれ、人口学者にとって重要な意味を持つ)が人口回復に十分な率と考えられているが、これでもロシアにとって十分とは言えない。なぜロシアの人口は減る運命にあるのか。

 ロシアの人口ピラミッドの問題点は、出産適齢期(15〜49歳)の女性の数にある。カーネギー基金の雑誌に掲載された人口学者、経済学者のミハイル・デニセンコ氏のデータによれば、ロシアではこの数が1990年代半ばから増え始め、過去15年間に史上最高値に達したが、数年前に減少に転じた。

 人口減少の原因は1990年代にある。ガイダル政府の急激な経済改革の影響に直面して、ロシア人は子供を作ることを急がなくなったのだ。1993年までに、新生児数は1980年代後半と比べて半減した。1990年のロシアの新生児数は190万人だったが、1997年には120万人だけだったと高等経済学院のアンドレイ・コロタエフ氏は話す。潜在的な母親の数が減ってしまうと、有効な手立てはほとんどない。

国の補助金は効果があるか

 潜在的な母親の数を増やすことはできないが、産む子供の数を増やすよう促すことはできる。予測では女性一人当たりの子供の数が1.7人(多くの先進国の水準)と見積もられているが、ロシアの現状は1.62人だ。これを1.7人に増やす(ロシア政府の目標値でもある)ことは容易でない。ここで効果が見込まれるのが、国の努力だ。「人口学」と呼ばれる国家プロジェクトが最近立ち上がり、その予算は400億ドル以上と言われている。これは、2000年代半ばから始まった国家プログラムの延長線上にあるようだ。目玉は、2007年に導入された複数児童手当だ。

 シュリギン氏によると、このプログラムは成果があり、ロシアで2000年代に出生率がピークに達したのは、プログラムの効果と人口学的好条件が結び付いたおかげなのだという。こうした政策の延長が人口問題の改善に必須の条件と言われている。しかし、総計出生率を1.9〜2に近い値にし、人口を現在の1億4000万人のまま維持することは、「特筆すべきこと」であると同時に、非常に「難しい選択」だという。同氏によれば、これには「人口学」プロジェクト全体に匹敵する規模の投資が必要だ。

移民は人口増加の鍵となるか

 出生率を上げる努力の他に、人口減少に歯止めを掛け得るのが、平均寿命の向上だ。ロシアの平均寿命は低い水準だったが、近年では著しいペースで延びている。2003年には65歳だったが、昨年には73歳に延びた。5年後には78歳にまで向上すると予想されている。少なくとも、プーチン大統領は政府目標としてこの数字を掲げている。ガイダル・フォーラムで出された人口予測では、平均寿命は2050年には80歳になる。

 総計出生率が1.7のままだろうと、平均寿命が延びようと、ロシアの人口は移民に大きく依存している。予測される2050年の人口1億3700万人のうち、600万人は移民が占めると考えられている。

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