ロシアのウェイトトレーニングはきつさよりもスマートさに重点を置いている。ジムで毎回限界に挑戦したり、一日に何度もジムに通ったりするのを好む人もいるが、一方ロシア人は心技体の原則に従ってもう少し緩やかに取り組む傾向がある。夏本番に向けて以下のルーティンと食事案とを徹底して実践すれば、すぐに効果が実感できるはずだ。
ロシア式トレーニングの根幹部はソビエト時代に遡る。当時は強く逞しいプロレタリアートであることが、アスリートやボディービルダーに限らず、皆にとって必須要件だった。健康体でいることはソビエト人の日々の労働にも浸透していた。ソ連に生まれた人の多くが、ラジオから流れる朝のザリャトカ(「体操」)のルーティン(下のURLでパロディー版をチェック)を覚えていることだろう。職場で従業員とともにこの体操を行う上司もたくさんいた。体育も極めて厳しいもので、GTO(「ソ連労働防衛準備完了」)証書を得るためには、25歳のソビエト男子ならば100㍍を13秒で走らなければならなかった。
ソビエトの強い男には西側が誇る巨体やサプリメントはなかったかもしれないが、ホモ・ソビエティクスの逞しさは、健康維持と巧みなトレーニング技術を優先する考え方を彼らに植え付けた。ソビエト式トレーニング法を学んだマイケル・イェシス氏が主張するように、「ただ体を大きく強くすることが大事なのではない。最も大切なのは、さまざまな力がいかにアスリートの究極の演技を向上させるかということだ。」
ロシアのトレーニング精神の結晶が、力を基礎に置いた爆発的エアロビクス・トレーニングだ。筋肉の増強よりも脂肪の燃焼と筋肉調整に重点がある。これはつまり、運動が比較的短時間で変化に乏しくいくぶん負担が軽い一方、徐々に技術が身に付くよう反復に重点が置あり、かつ一貫しているということだ。
プライオメトリックスから始めよう。これはソビエトの科学者ユーリー・ヴェルホヤンスキーが考案した筋力強化システムで、リフティング競技におけるソ連の過去の成功は部分的にこのシステムのおかげだと言われている。本質的には一連の複合ジャンプから成るこの道具いらずのトレーニングは、筋肉と関節の力を大いに高めてくれる上に、ほとんどどこでもできるという利点がある。ぜひ試してほしいプライオメトリック運動をいくつかご紹介しよう。
プリエ・スクワット・ジャンプ:脚を広げて立つ。通常のスクワットの体勢まで屈伸し、そこからできる限り高く跳ぶ。その際、宙で両足の踵を触れ合わせる。
ボックス・ジャンプ:膝の高さまでスクワットする。その状態からジャンプし、膝の高さの箱(台)の上に柔らかく着地する。箱からは跳び下りるのではなく、ゆっくり降りるようにしよう。
横跳び:横へのジャンプで小さなコーンを跳び越え、着地とともにすぐさま反対側へとジャンプする。
プライオメトリック腕立て伏せ:通常の腕立て伏せの体勢になり、床から手が離れるほど体を押し上げる。
縄跳び:縄跳びを持ち、跳ぶ。
ウェイト:米国在住のトレーナー、クリスチャン・シボドーによれば、ソ連での肉体労働に役立ったロシア人の祖父のルーティンに組み込まれていたのは、週4回(1回35分)のチェスト及びスクワット運動だけだったという。この無駄のないルーティンは、限界の7~8割の力でできる少なめの反復運動だけが必要で、ウェイトも少しずつ上げていく。反復によって技術がしっかり身につく。
スクワットもまた、歴史の長いソビエト式トレーニングの根幹であり、最良の全身運動と考えられている。1976年のオリンピックでのソ連ウェイトリフティング・チームの手引き(その年の金メダルを総なめするのに一役買った)では、スクワットとデッドリフトは一週間欠かさず取り組むべきだとされている。その際、反復運動1セットの限界の8割の力をキープする。
月曜日:チェストプレス。ベンチプレス(仰向けに寝そべる)、ミリタリープレス(立ったまま胸の位置から頭上にバーを持ち上げ、また戻す)。自分が持ち上げられる最大重量の85パーセントの重さでのベンチプレス1反復を5セット行う。持ち上げられる最大重量の約4分の3の重さで3反復を1セット行う。ミリタリープレスで繰り返す。各セットの間には90秒の休息を入れる。
火曜日:スクワット。フロントスクワット(バーベルを胸の高さで持つ)とバックスクワット(バーベルを首の後ろに持つ)。自分が持ち上げられる最大重量の85パーセントの重さでのフロントスクワット1反復を5セット行う。持ち上げられる最大重量の約4分の3の重さで3反復を1セット行う。バックスクワットで繰り返す。各セットの間には90秒の休息を入れる。
水曜日:プライオメトリックス。上記の運動をそれぞれ60秒で2セットずつ行う。
木曜日:月曜日に同じ。
金曜日:火曜日に同じ。
土曜日:水曜日に同じ
日曜日:休養
概して、ウェイトトレーニングにはおよそ35分、プライオメトリックスにはおよそ10分を要する。悪くない。
いくぶんカッテージチーズに似たこのロシアの凝乳製品は、他のどんな食品よりもプロテインを多く含んでいると言われる。しかも美味だ。このクリーミーな名品を最大限に活かす方法を見るにはこちら。
ソバの実粥
ロシアの「奇跡の食品」は、この国の料理DNAの一部である。この軽くて極めて柔軟性のある穀物は最も腹を満たしてくれる食品の一つで、トレーニング前の食事に理想的だ。一番美味しいというわけではないかもしれないが、味付け方法で何かアイデアが欲しいという場合はこちらをどうぞ。
毛皮コートを着たニシン
このロシアの伝統料理は平均的な西洋人が抱く美味しいサラダのイメージとは異なるかもしれないが、このサラダは魚や卵などプロテインが豊富で有益な食材をふんだんに使っており、すぐにあなたの体の材料となる。野菜は茹でて、脂質の少ないマヨネーズを使って料理するようにしよう。こちらで我々のレシピをチェック。
さあ取り掛かろう。
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