現代のロシア人は、多くの映画が描いているような大酒飲みではない。実際には、ロシア中で飲酒を控える人が増えている。とはいえ、この方面の“守旧派”は、昔ながらの飲み方に従っている。何よりも楽しみながら飲むためだ。
さて、あなたのロシアの友人たちがあなたをパーティーに招き、美味い料理とアルコールで宴会を始めたとする。しかし、あなたが遅刻した場合は、彼らはあなたに、「罰として」一杯飲ませるかもしれない。これは何だろうか?
実は、この「ペナルティ・ショット」は、ピョートル大帝が始めたもので、臣下が遅刻しないように躾けたものだ。 彼は遅刻した臣下にウォッカを、1.5リットルの巨大グラスで一気飲みさせた。これで遅刻がなくなったかどうかは定かではないが、伝統は残った。ただ最近は、幸いにして、ふつうのグラスで一杯飲ませるだけだが。
また別のロシアの伝統によると、ウォッカの最初の一杯の後は、まだつまみを食べてはならない。つまり、最初の一杯と二杯目の間に一休みするわけにはいかない。二杯目と三杯目の間も短い。おまけに、その間にたくさんの乾杯があるだろう。
ロシア人はつまみその他の食べ物(とくにマヨネーズサラダのような脂肪分の多い料理)がアルコールの量を減らすと信じている。だから、もしあなたがあまり早く酔っ払いたくなければ、オリヴィエ・サラダやホロデーツ(肉の煮凝り)を食べよう。覚えておいてほしいのだが、ロシアの宴会はふつう数時間続く…。
あなたがロシア語を知らなくても、たぶん「Vashe zdorovye!」(「あなたのご健康のために」)という乾杯を聞いたことがあるだろう。アルコールが健康とどう結びつくのか?イワン雷帝(4世)の時代、ロシア人はウォッカを使って薬のチンキを作った。今日ではウォッカは多少変わったけれども、この昔ながらの乾杯はいつも受ける。
客が宴会から帰るときは、主催者は通常、「ちゃんと帰れるように」、最後の一杯をすすめる。ロシア語では、「杖のために(“na pososhok”)」という。昔、客は、杖の握りの上に置かれた小さなグラスを飲んだが、もしグラスが落ちれば(バランスをとれなくて)、「不吉な道中」を避けるために、一晩中宴会にとどまることになる。これは、アルコール検知器が発明される前の最初のアルコール検査の1つだった。
ウォッカをグラスに注いで瓶が空になったらすぐに、テーブルの上に空瓶を残さないように、別の場所に置く。この伝統はナポレオン戦争の時代に生まれたと言われている。1814年のパリ入城の後、ロシアのコサックは、地元のレストランでは、テーブルに残っている瓶の数で料金が計算されたことに気付いた。そこでコサックは、賢明にも瓶をテーブルの下に置いたらしい。
ロシアでは、「Soobrazit na troikh」(3人で割り勘で飲む)というフレーズをよく聞く。あなたが2人の友人にこう言われたら、それはウォッカをいっしょに飲もうという誘いだ。これはたぶん、ニキータ・フルシチョフ時代の反アルコールキャンペーンに由来する。当時、ウォッカはずっと高価になり、ひと瓶約3ルーブルもした。しかも、それを樽から売ることは禁じられていた。そこでソ連市民は、ウォッカを買うために「トロイカ」をつくり始めた。つまり、3人の仲間を集め、割り勘にしたわけだ。 もっとも、別の説によると、ロシア人は単に良い仲間同士で飲みたかった。ロシア人のジョークによれば、ウォッカは人を結びつける。
ロシア人が新車その他の高価な買い物をしたときは、「買った物を洗う」(「obmyt pokupku」)。もちろん、比喩的な意味で、実際に酒で洗うわけではない。それはつまり、新たに買った物を友人や親戚と祝うべきで、さもないと、それは幸せをもたらさないという意味だ。昔、人々は、高価な買い物をすると、隣人に妬まれかねないと信じていたので、司祭を招き、聖水でその品を祝福してもらった。この慣わしが後に、車などの新しい買い物に対しウォッカで乾杯して、象徴的に「洗う」、清めるというふうに変わったわけだ。
みんなのグラスに注ぎ出した人は、その瓶が空になるまでそれを続けなければならない。注ぐ人が変わると、人々が泥酔したり喧嘩が始まったりしかねないと言われる。もっとも実際には、たらふく飲んだ後は、どっちみち何か起こる可能性はあるわけだが。
宴会が終わる前にウォッカがなくなってしまうかも。だから誰かが急いで店に買いに行かねばならない。
*もしあなたがロシア出身ではないのに、あなたの国に同様の飲酒の伝統があったら、下のコメント欄に記入してください。
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