18世紀から、ロシアの毛皮商人、狩猟家、企業家などが、アラスカとアリューシャン列島の開拓を始めた。
その結果、アメリカ西海岸の北部に、ロシアの集落がいくつか生まれ、それらは「ロシア・アメリカ」と呼ばれた。
フォート・ロスは、サンフランシスコの北80キロのところに位置し、当時のロシア人集落のなかで最も南にあった。
フォート・ロスは、ロシアの国策会社「露米会社」が1841年に売却するまで、ロシアの北米大陸における拠点として機能し、30年間にわたり、毛皮加工と交易に従事した。
この集落があった場所は台地で、海に面していた。周囲を深い谷で囲まれていたので守りやすく、天然の要害でもあった。
ここに1812年、ロシアの商人イワン・クスコフが、95人のロシア人と80人のアリューシャン人とともにやってきた。9月11日、ロシア帝国の三色旗がここにそびえ立った。
フォート・ロスは、木製の要塞で、そのなかにあらゆる必要な施設が入っていたほか、カリフォルニア最初の正教の建築物、「聖三位一体礼拝堂」も建てられた。
しかし、ロシア政府が、カリフォルニアの領有地が大した収入をもたらさないと判断し、フォート・ロスは1841年以後、何度か転売される。ロシアのアメリカ開拓自体も、1867年にロシアが米国にアラスカを売却して(720万ドル)、終止符が打たれた。
現在、フォート・ロスは、カリフォルニア州国立公園に含まれている。歴史的遺産として保護されており、博物館もある。