1904年、32歳のアレクサンドラ皇后はようやく待望の男児を出産した。しかし、不幸にも遺伝性の血友病が発覚した。血液の凝結に異常が見られる病気である。アレクサンドラはこの病気を祖母のヴィクトリア女王から受け継いでいた。
アレクセイの病は経過が悪く、わずかな怪我でも内出血を誘発し、ある時は鼻血により命の危険があるほどだった。病気のために関節が痛み、時には自力で歩行できないほどだったため、「傅役」の士官が付き従い、アレクセイを運んだ。
男児が誕生して1年後、ニコライとアレクサンドラは「神の人」グリゴリー・ラスプーチンと出会った。そして、アレクセイの病気の発作を抑えられるのは、ラスプーチンだけだったのだ。
病気のため、アレクセイは内気な子供だった。両親からは素朴さを受け継ぎ、軍服を好んだ。食事には、兵士たちと同じ「シチーとカーシャ(ロシア風のキャベツスープと粥)」を頼んだ。
第一次大戦中、アレクセイ(公式には、コサック隊の長官で士官だった)は数回、父と共に前線を訪問している。
母と姉たち(とくにマリヤ)はアレクセイをとても愛した。病弱ではあったものの、皇帝とその周囲は皇太子について、皇位を継ぐに相応しい意志の強さと気質を見出していた。