もちろん、CIA(米中央情報局)のエージェントは、運用中の基地には侵入できなかった。そこで、彼らは、流氷が崩壊し始め、ソ連の極地探検家たちが急いでそこから退避するのを待ち構えた。一部の機器を取り外す暇がない可能性があったからだ。これが、CIAのいわゆる「コールドフィート計画」だ。
まさにそういう事態が、流氷基地「北極-8」(NP8)で起きた。1962 年5月28日に、ジェームズ・スミス少佐とレナード・レシャック中尉が 、爆撃機B-17からパラシュート降下した。現地にいた3日間で、彼らは、80以上の重要文書を発見し、放棄された装備の一部を集め、数百枚の写真を撮った。
しかし、米国の砕氷船は流氷群をすり抜けて基地に達することができず、ヘリコプターは航続距離が足らず、さりとて、崩壊する流氷上に飛行機を着陸させることもできなかった。そこで、エージェントたちは、収集した資材とともに、CIAが開発した「フルトン回収システム」により回収された。
ヘリウムを充填した気球が必要な高さまで上昇する間、ロープで気球に縛り付けられたエージェントが流氷上で待機する。飛行機は、目標に近づくと、鉄製パイプでできた特殊な「角」を使ってロープを挟み、気球を切り離す。ロープはウインチによって自動的に巻き取られ、エージェントは機上に引っ張り上げられる。こういう仕組みだ。
「コールドフィート作戦」の成功の結果、米国は、ソ連が極地気象学と極地海洋学で長足の進歩を遂げたことを知った。さらに、ソ連が北極で米潜水艦の音響探知用の機器を使用している証拠も得た。
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