ソ連邦の衰退を誰よりもうまく捉えた米国の写真家

歴史
ニコライ・シェフチェンコ
 写真家ピーター・ターンリーのコレクションは、ソ連時代の最後と新生ロシアの誕生の本質を映し出している。

 ソ連邦は1980年代の終わりに終焉を迎えていた。まだ崩壊していなかったが、その政治体制と経済システムは綻び始めていた。生活品や食料品が不足し、全体的な貧困がソ連の構成国全体に広まっていた。

 経済問題は人間の状態に重くのしかかり、人々は新たな現実社会において生き抜くための方法を模索せねばならなかった。しかし、それでも子どもたちは学び、遊び、学生たちはパーティを開き・・・、つまり概して人々は、それまでとは違う方法ではありながらも、現実を受け入れ、生活を続けていたのである。

 有名な米国の写真家、ピーター・ターンリーは、避けられない最期に近づきつつある、滅びゆくソ連文明の本質的な部分をカメラに捉えた。

 「人間の状態の現実」を記録する写真家として知られたターンリーは、何年にもわたり、地球上の歴史的な瞬間を撮影した。ターンリーは、1991年の湾岸戦争やバルカン半島、チェチェン、ソマリア、アフガニスタン、ルワンダ、南アフリカなど多くの戦争の目撃者となった。

 ニュースで扱われる地政学的な問題の他に、ターンリーは、ストリート写真でも有名であった。衰退しつつあったソ連という大国の生活を映したユニークな写真は、 その時代のオーラを感じさせる。

 ターンリーの作品の中には、ソ連の生の生活を映したものもある。たとえばこれは、なんとか生活していくために、鶏の足を売る高齢女性を映した写真である。

 ターンリーがソ連で撮影した写真のほとんどは、国を大きく変えようとする歴史的な出来事に襲われていても、自分たちの人生を生きた庶民の日常を映し取ったものである。