ロシアで最も話者の多い言語TOP10

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エレオノラ・ゴリドマン
 ロシアの地域の多くでは、すべての標識が地元の言語でも表記されており、メディアもそれで報道する。

 ロシアでは、ロシア語の話者が圧倒的に多く、99%以上の住民が話す。次いでは英語で、ロシア人の5%弱が話せる。

 しかし、ロシアは非常な多民族国家であり(190以上の民族が住んでいる)、ロシア語に加えて、270の言語・方言が話されている

 一部の民族は、2つの言語をもっており(たとえば、マリ人とアルタイ人)、カバルダ人とチェルケス人のように、共通の言語をもつ民族もある。また、先住民が多数住んでいる地域では、彼らの言語は、ロシア語と同じく公式レベルでも使用される。

1. タタール語

 420万人以上のロシア国民がタタール語を話し、タタルスタン共和国では公用語でもある。タタルスタンのほか、この言語は、隣接するバシコルトスタン共和国、マリ・エル共和国、ウドムルト共和国、さらにウラル地域でも非常に普及している。

 タタール語は、学校で教えられており、多数の出版物、動画、歌、文学作品が、この言語で出版されている。

  また、都市部では、道路標識がロシア語とタタール語で併記されている。言語学者はタタール語を3つの主要な方言に大別する。カザン(中部タタール語)、ミシャル(西部タタール語)、シベリア・タタール語(東部タタール語)だ。

 西部タタール語が古代のそれに最も近く、中部タタール語が最も近代的だと考えられている。東部タタール語は、他の2つとは非常に異なり、しかも地域の方言が非常に多いため、一部の言語学者は、それを独立した言語とみなしている。

2. チェチェン語

 130万人以上がチェチェン語を話している。もちろん、ほとんどの話者はチェチェン共和国に住んでいるが、隣接するイングーシやダゲスタンの一部地域にも、その話者がいる。

 ちなみに、この言語は、チェチェン共和国だけでなく、ダゲスタンでも公用語に定められている。この言語には、7つの方言と、非常に多数の方言がある。

3. バシキール語

 バシコルトスタン共和国の公用語だ。約150万人が話しており、その3分の1はバシキール人ではない(バシキール人以外の話者としては、タタール人、ロシア人、チュヴァシ人、マリ人が多い)。 この言語は、タタール語と同じく、テュルク系言語に属している。

 バシキール語は、3つの地域の方言に大別されるが、それらがさらに数十の方言に分かれている。 バシキール人は1940年以来、キリル文字を使用している。それ以前は、まずアラビア文字を用い、その後はラテン文字で書いていた。現代のアルファベットは42文字で構成される。33のキリル文字と、9つの独自の文字だ。

4. ウクライナ語

 隣国ウクライナの言語は、ロシア国内では180万人以上が話しており、4番目の普及率だ。話者は、ロシアのさまざまな地域に住んでいるが、とくに、北部のハンティ・マンシ自治管区、ヤマロ・ネネツ自治管区、コミ共和国に多い。

5. チュヴァシ語

 チュヴァシ共和国では、ロシア語とともに、チュヴァシ語が公用語に定められている。ロシアの主にヴォルガ沿岸で100万人以上が話している。

 チュヴァシ語は、今は死語となったブルガール語と同じく、テュルク系言語のオグール語派に属しており、この語派で今も話されている唯一の言語だ。

 チュヴァシ語には、「はい」という助詞はない。肯定の答えの代わりに、その動詞を繰り返す。

6. アルメニア語

 ロシアでは、90万人以上がアルメニア語を話す(世界中ならその6倍)。ロシアには(主に南部およびカフカスだが)、約170万人のアルメニア人が住んでいる。ただし、アルメニア語はロシアのどの地域でも公用語とされていない。

7. アヴァル語

 アヴァル語は、ダゲスタン共和国の14の公用語の1つ。ロシア語に次いでこの共和国で最も普及しているとされる。70万人以上のダゲスタン住民が話し、もちろん、そのほとんどがアヴァール人だが、民族間の共通語でもある。

 ただし、アヴァール人が住む各地域にはそれぞれ独自の方言があり、しかも非常に異なるため、近隣の村の住民でも、意志の疎通が難しいほどだ。

8. アゼルバイジャン語

 アゼルバイジャン語は、ダゲスタン共和国の公用語の1つでもある。また、ロシアに移住したアゼルバイジャン人も話す(アゼルバイジャンとアルメニアは、旧ソ連構成共和国だが、連邦崩壊後に独立国家となった)。世界には2500万人以上の話者がいる。

 ロシアでは、アゼルバイジャン語の話者は約67万人で、最も普及した言語の1つだ。ただし、アゼルバイジャン共和国とは異なり、ロシアでは、ラテン文字ではなくキリル文字が表記に用いられる。

9. モルドヴィン諸語

 言語学者は、モルドヴィン諸語は実は2つの言語からなる、と考えている。モクシャ語とエルジャ語で、この名称は、ヴォルガ川中流域のモルドヴィア共和国に住む、2つの主要な民族の名だ。両言語とも、モルドヴィアの公用語だが、隣接するチュヴァシ共和国でも話され、タタルスタンとバシキールにも少数の話者がいる。

 モクシャ語とエルジャ語の語彙は、会話のそれなら約70%一致し、文章語なら90%が一致。だから、モルドヴィン諸語のネイティブはお互いに理解できる。話者の数は、計43万人以上だ。

10. カバルド語

 ロシアでは、50万人以上のカバルド人とチェルケス人がこの言語を話す。世界では160万人以上にのぼる!

 カバルド語は、カフカス(さらにはヨーロッパ全体)で最も古い言語であり、いくつかの興味深い特徴を保っている。たとえば、(ケルト語やマヤ語のように)二十進法を有している。この言語に最も近いのは、アディゲ共和国で話されているアディゲ語だ。

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