塩ソムリエ:ユニークな種類のロシアの塩はどんな味をしているのか?

 わたしたちは塩ソムリエに、変わった種類のロシアの塩について、またマリネや肉にはどんな塩が合うのか、さらに食事中にもう少し塩味を加えるのにはどんな塩をテーブルに置くべきなのか伺った。

 珍しい塩は世界中のグルメを魅了しているが、ロシアも例外ではない。塩ソムリエのユーリー・ケセリマンさんは、「塩は料理における創造性に対する人々の欲求を満たすものだ」と語っている。

 ユーリー・ケセリマンさんは、料理と錬金術師の研究室と、そして塩を重要な材料の一つと比較している。ある塩は、そこで塩を燻製させたハンノキあるいはさくらんぼの香りを感じることができる。また別の塩には、強いニンニク味がするカフカスのモチーフを感じることができる。「それぞれの料理に、それぞれの塩がある」とソムリエは言う。

 2012年、ケセリマンさんは、世界中にある地理的に珍しい種類の塩(ある特定の場所だけで製造されているもの)を、ロシアで販売するため輸入するようになった。そのとき、ケセリマンさんが扱っていたのは60種類ほどの塩であった。しかし、2016年、ロシアはEU(欧州連合)、アメリカ、カナダ、オーストラリア、その他の国々からの塩の輸入を禁止した。ロシアの塩製造にとってこのことは、産業の発展に向けた新たな刺激となり、また塩の専門家にとっては、ロシアの製品にフォーカスするのに適した時期となった。 

 ロシアでは毎年、800万トン以上の塩が採掘されている(2022年のデータ)。最大の食塩の産地はイレツコエ(オレンブルク州)、ティレツコエ(イルクーツク州)、バスクンチャクスコエ(アストラハン州)、ヴェルフネカムスコエ(ペルミ地方)、エリトンスコエ(ヴォルゴグラード州)、ブルリンスコエ(アルタイ地方)である。

 一方、ロシアにも、世界のどこにもない地理的にユニークな塩がある。たとえば、クリミアやアルタイのピンクソルト、あるいはダゲスタンのクヴァンヒダトリ村で採れる岩塩などである。

 ソムリエと共に、彼の会社SaltLabが扱っている塩の中から、ロシアの塩3種を選び、どんな料理と一緒に食べればいいのか、話を聞いた。

1. ロシアのブラックソルト

 ブラックソルトのレシピはもっとも長い歴史を持つものの一つである。ブラックソルトは、塩とその粉砕が高価だったとき、塩の粉砕を行わず、完成品の出費を下げるために考え出されたものである。塩はライ麦粉(パン粉またはクワスの沈殿物)と混ぜて、リネンの布きれに包み、7時間、かまどで炭火焼きにした。これで塩は細かい粉になり、茹で卵の風味が出た。

 この方法で、聖木曜日に作られ、教会で清められた塩は木曜の塩と呼ばれる。

 現在、ブラックソルトはロシアの中央帯のあちこちで製造されているが、もっとも有名なものはコストロマ産である。

 この塩はジャガイモ料理、卵料理、肉料理と合う。また食卓塩にもなり、食事中に料理に塩味を足すのにも使える。

2. アディゲ塩

 この塩も塩が高価だったときに登場した。使用する塩の量を減らすために、一部をスパイスと混ぜるというアイデアが生まれたのである。ミックススパイスとニンニクを混ぜたこの香り豊かな塩は、焼いた肉、ジャガイモ、フレッシュサラダ、あるいは濃厚な温かいスープに合う。

3. クリミアのピンクソルト

 これはクリミアのサクスコエ湖で採掘される完全なる天然の塩である。湖の水は、その特別な鉱物組成と微細藻類のためにピンク色をしており、採れたての塩もピンク色をしている。塩の名前もそこから付けられた。この塩を製造するには、特別な容器の中で、濃縮された塩水を沈澱させる。結晶には多くの有用物質が残っているため、食用はもちろん、化粧品にも使われている。クリミアの塩はほんのり海の香りがし、マリネにも、焼いた料理にもよく合う。

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