ロシアの伝統的なこのサラダを台無しにしてしまうもっとも簡単な方法、それは典型的でない食材を加えることである。
インターネットユーザー、タマリスカさんはネットの掲示板で、ある苦い経験についてこう書いている。「あるとき、招待されたお宅でザワークラウトの入ったオリヴィエサラダを食べました。その何がおかしいのか最初は誰も解らなかったのですが、後にホストが家に普通の缶詰のピクルスがなかった、それで代わりにザワークラウトを加える以上にいいアイデアが浮かばなかったと打ち明けたのです。そのオリヴィエサラダは不思議な酸味がしました」。
オリヴィエサラダにはときに玉ねぎが加えられることがある。とはいえ、大部分の人は、お祝いの席で出す場合には玉ねぎを極力入れないで作るか、あるいは彩りのために少量のネギを入れるに留める。
りんごを入れた場合も、間違いなくこのサラダをちょっと馴染みのない味にしてしまう。りんごを入れると、サラダに新鮮さを与えてくれるが、一方で、その甘さがサラダを一般的な味から遠く離れたものにしてしまう。
またオリヴィエにコーンを入れるという人がいるが、こちらも万人受けするものではない。さらに、倹約家の主婦たちは、オリヴィエサラダに濁った色をした、えんどう豆の缶詰の汁を加えるが、そうすると確実にサラダではなく「お粥」ができる。
しかし、クラシカルなレシピに沿ってオリヴィエサラダを作るときでも、加えるソーセージや肉は上質なものを選ぶ、ジャガイモを入れすぎない(サラダを粉っぽく、ねばねばしたものにしないため)、そして野菜を茹ですぎないことが重要である。
加えて、使う食材がすべて理想的なものであっても、安価で質の悪いマヨネーズを使ってしまうと、サラダはそれでたちまち台無しになってしまう。
オリヴィエサラダとは異なり、この「毛皮を着たニシン」には玉ねぎが使われている。しかしながら、玉ねぎをたくさん入れすぎてしまうと、火を吐くドラゴンたちのパーティーになってしまう可能性があるため、推奨される適量を使うべきである。また玉ねぎを熱湯にさらすかレモン汁をかけると味を和らげることができる。
ジャガイモとにんじんをビーツと一緒に煮ると、すべての野菜が同じような色になってしまい、美しい色鮮やかな層立てサラダを作ることができなくなる。またニシンの骨は、不愉快な「ケーキの上のさくらんぼ・・・いやより正確にはサラダの上のさくらんぼ」になってしまう。
またそれぞれの層にマヨネーズをたっぷり塗ってしまうと、こってりしすぎた料理になり、不安定な野菜の層にニシンがマヨネーズの中を泳いでいるようなものになってしまう。さらに、このサラダを招待客が到着する直前に作るのは誤りである。少し余裕を持って作ると、適量のマヨネーズをちょうどサラダになじませることができる。
ボルシチといえば、調理する人の数だけその作り方があるものだが、とはいえ、指針にすべき模範的なレシピというものがある。
普通、ボルシチは質のよい骨つきの牛肉と忍耐力を要する煮出したブイヨンで作られる。ボルシチの味を台無しにしてしまう簡単な方法は、肉を入れた後に冷水ではなく、熱湯を注いでしまうこと、そして灰汁を取らずに強火で沸騰させてしまうことである。こうした作り方をすると、確実に、鍋の内側に粘液がつき、ブイヨンが濁ってしまう。
ボルシチの主要な特長といえば、ビーツから出る深い色合いである。ボルシチを簡単に台無しにする調理方法は、すべての野菜を同時に鍋に投入して、煮続けることである。そうすると、ジャガイモは赤みがかったオレンジ色になり、ビーツは色褪せてしまう。ボルシチを「赤いごった煮」にしないため、調理人たちはビーツを煮るときにトマトペースト、レモン汁、あるいはお酢を加える。ここで重要なのは、これらを入れ過ぎないようにすることである。やり過ぎると、ボルシチは、見た目は美しいものの酸味が強すぎるものになってしまう。ビーツは一番最後の調理段階で入れること。そうすれば、他の野菜にビーツの色がつくこともなければ、ビーツそのものの色が失われることもない。
ブリヌィはシンプルな材料で作ることができるが、最初から簡単に作れる料理ではない。ちょっとしたミスが致命傷となる可能性がある。
冷蔵庫から取り出した冷たい材料を使って調理すると、大切な気泡が出てくるのを待ちきれず、良い生地ができないため、確実にダマができる。また生地に砂糖を入れすぎると、ブリヌィはフライパンの上で焦げついてしまう。一方、小麦粉が少なければ、ブリヌィはお皿に置いたり、口に入る前に破れてしまう。ブリヌィの生地を作ったら、すぐに焼くべし!と思いがちであるが、実はそうではない。実際には、生地に入れたすべての材料をよくなじませるために、30分ほど時間を置いた方がよい。
生地を焼く前に、フライパンを温めておかないと、ブリヌィは必ずフライパンにくっついてしまう。そして裏面をしっかりと焼いていないと、家族や友人たちに生焼けのブリヌィを食べさせることになってしまう。生の生地ほどおいしいものはない!
有名なソ連映画『運命の皮肉、あるいはいい湯を』の中に、「なんてひどいんだ!あなたの魚のゼリー寄せは!」と登場人物が言う場面がある。
ゼリー寄せに魚の尾、骨、鱗が残っていると、間違いなくひどい一品が完成する。また別の料理に使えないような、臭いのある魚を使えば、そのゼリー寄せは一生忘れられないものになるだろう。残念ながら、悪くなりかけた魚はゼリー寄せにしたとしても新鮮なものにはならないのである。
もう一つ、この料理を台無しにするトリックは、ゼラチンを入れすぎることである。このトリックは奇跡を起こすことはなく、その代わりにゼリーをゴムのようにしてしまう。より良い方法は、きちんとレシピに従い、ブイヨンをそのまま固めることができるくらいコラーゲンをたっぷり含んだ魚を選ぶことである。魚のゼリー寄せに適しているのは、鮭、タラ、アトランティックサーモン、マス、パイクパーチ、カラフトマスなどである。
もう一つの「有害なアドバイス」は、ゼリー寄せを作る容器に魚を入れた後、ブイヨン全量を一度に入れてしまうというもの。見た目の美しいゼリー寄せを作りたいなら、これは絶対に回避すべきことである。正しい規則に従えば、魚は底に触れさせず、ゼリーの真ん中にくるように作らなければならない。そのためには、まず容器の底に少量のブイヨンを注ぎ入れて冷まし、その部分を先に固めてから、魚、野菜を並べ、その後で残りのブイヨンを注がなければならない。段階を分けずに一度に作りたい場合は、先に、底に野菜やハーブを置いて、それからその上に魚を置くようにするとよい。
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