お粥(カーシャ)はロシアの食文化において、いつの時代も疑いもなくもっとも親しまれた料理である。お粥は、家庭の懐具合によって素材や具の内容は違うとはいえ、裕福な家でもそうでない家の食卓にも、永くのぼってきた料理である。
残念なことに、今では、グーリエフの粥やカボチャ入りの野生小麦の粥など、多くの甘美で風味の良いお粥は最早それほど食べられなくなった。その理由は、単につくるのに時間と手間がかかるからだと思われる。
しかし、ドラゴミロフの粥は、思いのほかずっと簡単につくれる。この料理の歴史は19世紀にまでさかのぼることが出来る。伝説によれば、これが、ニコライ2世が毎日のように食べていたお粥であると言う。
そして、この料理がどうしてロシアの優れた将軍であり、軍事作家であったミハイル・ドラゴミロフの名が付いたか確かなことは誰も知らない。彼は、若きニコライ2世が皇太子であった頃の歴史と軍事の教師であった。興味深いことに、将軍の妻であるソフィアは、料理好きで、700種以上ものレシピと理想的な厨房案を掲載した料理本も出して、大好評を博していた。一説によれば、この本に、まさにポリチーニ茸とそばの実の粥のレシピが載せられており、これが後に皇帝のお気に入りとなり、ソフィアの有名な夫の名が付けられたと言う。あるいは、もしかしたら、彼女自身の名前から付けられたのかも知れない。
ドラゴミロフの粥はどの肉料理とも相性がよいし、それだけでも美味しい。材料もとても簡単で、そばの実とキノコは黄金の組み合わせだ。そしてこのお粥を特別なものにしているのは、あまり一般的でない半球型の形だ。キノコは、もともとのレシピではポリチーニ茸であろうと思われるが、どんなものもお好みで良いし、家にあるもので良い。
キノコソースのベースも同様で、より味をクリーミーにするのなら、濃厚な生クリームを使う。しかし、ここではサワークリームを使う。少し酸味を足すことで味が豊かになるのだ。
1. そばの実は流水で洗い、鍋に入れ、2カップの水を注ぐ。
2. 塩少々を加え、沸騰させたら、蓋をして、弱火で柔らかくなるまで煮る(15分ほど)。
3. その間にキノコソースを作る。まずニンジンは角切りにし、たっぷりのバターを加えて、中火で5〜7分炒める。
4. 次に、キノコを細かく刻む。
5. キノコにニンジンを加え、柔らかくなり、茶色く色づくまで炒める。
6. 小麦粉、サワークリーム(または生クリーム)、塩、挽いたコショウを加え、中火で数分温める。
7. 火から下ろし、刻んだパセリを加えて、混ぜる。ここで一番難しいのは、キノコソースを食べてしまわないこと(本当においしい)。
8. 丸い器に柔らかいバターを入れ、1/3のそばの実を器の底にスプーンで押しながら、広げる。
9. 上にキノコソース半量を注ぐ。
10. またそばの実を置き、ソースを注ぐ。
11. 器の上に大きいプレートを置き、そっとひっくり返す。すぐに落ちてこない場合は、薄いナイフを使う。
12. ドラゴミロフ粥の上に刻んだフレッシュなパセリをふりかけ、温かいうちに出す。どうぞ召し上がれ!
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