お粥と言えばヘルシーな朝食というイメージはあっても、心奪われるデザートというイメージは普通はない。しかし、「グーリエフの粥」はこれまでの常識を変え、セモリナ粉、ナッツ、ベリー類、キャラメルの風味のする”焼いた牛乳の膜”を組み合わせることにより、単なるお粥が、普段の食卓にも、ごちそうのテーブルにもぴったりなおいしいお粥に変えることができるのである。
グーリエフの粥は19世紀に当時の財務大臣であったドミトリー・グーリエフの料理人であったザハール・クズミンが作り始めた。次第に広く知られるようになり、皇帝アレクサンドル3世のお気に入りとなった。1888年に悲惨な列車事故に遭った瞬間にも皇帝一家は食堂車でグーリエフの粥を食していたと伝えられている。
この層になったおいしいデザートの面白さは、セモリナ粥から作られることにある。セモリナ粥はロシアの他の伝統的なお粥とは異なっていて、一見シンプルでありながら、とても複雑なものである。というのも、セモリナ粉は調理の過程でダマになってしまい、子供たちはこれがどうしても好きになれないからである。
しかし、わたしはこの粥が大好きである。短時間で作れて、その食感はとても柔らかくクリーミーだからである。しかも、セモリナ粉がダマにならないようにするやり方さえマスターすれば、最高のセモリナ粥が出来上がる。
グーリエフの粥のもう一つの特徴は牛乳の膜をベースとしていることである。特に美味しそうとは思えないかもしれないが、実はこの膜は甘くておいしく、粥に独特のキャラメル風味を与えてくれ、他のデザートとはまったく違ったものにしてくれる。
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