ロシアのコーカサス地方はカスピ海と黒海に挟まれた山岳地帯だ。何世紀もの間、多くの民族が隣り合わせに暮らしてきた。
ダゲスタン、北オセチア、チェチェン、カバルダ・バルカル、カラチャイ・チェルケスなどの国々に、それぞれ独自の民族料理がある。しかし、料理が栄養満点で野菜が豊富なことはすべての地域に共通している。ロシアで食べることのできる最も人気のある(あくまで我々の意見!)コーカサスのご馳走をご紹介しよう。
串に刺した肉(ふつう仔羊か鶏)は最も人気のあるコーカサス料理の一つだ。19世紀末にロシアにもたらされ、ソ連時代には春と夏の週末と言えばシャシリクというほど大人気になった。現在ではレストランだけでなく、文字通りロシアの至る所で見られる。外でのバーベキューはロシア人がこよなく愛することだ。肉は焼く前にマリネにするが、その方法や材料は何十通りもある。
いろいろな具の入った平たいパンは、カバルダ・バルカル共和国と隣のカラチャイ・チェルケス共和国の食卓の王様だ。しかし、それぞれの国でヒチンは全く異なり、各地域のシェフの間で論争がある。バルカルのヒチンは薄くて平たいが、カラチャイのものはケフィールかミルクを含むふっくらとした生地で作られる。たいていジャガイモやハーブ、肉が詰まっている。とにかく、これらの地域を訪れるのなら、ヒチンで胃袋が破裂しそうになることを覚悟しておこう。
これは最もダゲスタン的な料理だ。ジョージア料理のヒンカリに似ているが、ヒンカルの場合は茹でた生地と肉が別々に供される。ダゲスタンには30ほどの民族集団がおり、それぞれが独自の方法でヒンカルを作っている。アヴァール人は大きな生地を使い、ラク人は細長い生地を使う。クムク人は生地を薄い菱形に巻き、ダルギン人はカタツムリ状に巻いて蒸す。どれが最もおいしいかは、グルメ・ツアーをしてみないと決められない。
*ダゲスタンのヒンカルのレシピはこちらからどうぞ。
ダゲスタン料理でもう一つ特徴的なのがチュドゥという平たいパンだ。ふつう野菜が詰まっており(香辛料の効いたものもある)、乾いたフライパンで焼いてバターや油を塗る。
チュドゥそのものに伝統的なレシピはないが、ふつう季節によって具が異なる。春には新鮮な野菜(イラクサか春タマネギ)、夏にはチーズや新ジャガイモ、秋にはカボチャ、冬には仔羊肉を詰める。
チェチェンの平たいパンはヒンガルシュと呼ばれる。チュドゥやヒチンとは異なり、この料理は小麦だけでなくコーンフラワーからも作られる。生地はとても薄くてほとんど重さがなく、具は鮮やかでジューシーだ。最も人気のある具はカボチャである。ヒンガルシュはふつう切り分けて提供される。これもチェチェンで人気の屋台料理だ。
この発音の難しいチェチェン料理は、実は単なる肉を載せたニョッキだ。ジジグは肉、ガルナシュはニョッキを意味する。大きく切った肉(仔羊、牛か鶏)を茹で、小麦粉で作ったニョッキかダンプリングと一緒に、肉の出汁を入れた深い皿に載せて提供する。
北オセチアの大きくておいしいパイはロシア中でよく知られているが、コーカサスでは実にさまざまな形や具のものを見ることができる。
フィッジンは、みじん切りにした牛肉と出汁を詰めた(大きなあるいは小さな)パイだ。ワリバフはオセチアの自家製チーズを入れたパイである。現地ではカボチャやジャガイモ、豆を具にすることもある。どれも一度食べてみる価値がある。
*オセチア・パイのレシピはこちらからどうぞ。
アディゲの人々は牛乳から柔らかいチーズを作る。このまろやかなチーズは焼いたり揚げたりしても溶けず、ぼろぼろに砕くこともできる。1980年のモスクワ・オリンピックまでは完全に家庭で作られていたが、当時これを食べたソ連人や外国人の気に入り、量産が始まった。2009年、アディゲ・チーズは地域限定の商品名として商標登録され、現在ではアディゲの企業しかアディゲ・チーズの商標を使うことができない。
*アディゲ・チーズのレシピはこちらからどうぞ。
コーカサス版ヌテラはウルベチと呼ばれる。これはアーモンドやカシューナッツ、ピスタチオ、クルミ、カボチャの種など、多くの自然の恵みを揚げて作るバターだ。ダゲスタンでは、ウルベチにハチミツを混ぜたものがデザートして人気で、薬に使われることもある。
コーカサス人は発酵したミルクを飲むことが健康の秘訣だと考えている。中でも最も人気なのが、ケフィールという酸味のある牛乳だ。コーカサス地方(現在のカバルダ・バルカルとカラチャイ・チェルケスの地域)発祥で、ロシアでも百年以上前に広まり、現在ではロシア人の食生活の重要な一部と見なされている。
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