アプリコティンは5層からなるアプリコット・リキュールを加えられたクリーム入りのショートブレッド・ケーキである。上部はピンク色のアイシングでコーティングされ、網状のチョコとナッツで飾られ、側面にはクッキーがちりばめられている。
驚くことにこの美味しいケーキはソ連時代にはあまり店頭に並んでおらず、家庭でもあまりつくられなかった。結局のところ、多くの自家製ケーキは工場で大量生産されるケーキとあまり変わらない程度のおいしさだったということである。
アプリコティンのようなケーキをつくるのには、熟練の技が必要なだけでなく、材料を正確に測るための精度の高い重量計が必要だ。ソ連時代、店頭で売られているすべてのケーキは国家調理標準(GOST)によって承認されたひとつのレシピに則って製造されていた。そして、アプリコティンを家庭で焼くのが難しかったのは、必要な多くの材料が手に入りづらかったからだ。そんなわけで、工場での製造法と少し違う作り方が家庭の主婦の間で伝わっていた。
わたしの家では、アプリコティンは大昔祖母の結婚の時に焼かれた特別なケーキで、わたしの結婚式でも振る舞った。
概して、アプリコティンを作る上で変わったものは何も使わない。使うのはショートブレッド生地、シャルロット・クリーム、ナッツ、アイシングだ。しかし、とても大事なコツがいくつかある。まず、生地をとても薄くローラーで伸ばし、均等に切ることが重要だ。
次に、家庭でグレイズを作るのはとても難しい。砂糖の温度を測る温度計が必要で、温度計がなければ、眼でじっと見てシロップの温度を正確に見極めなければならない。そのために、ここではグレイズの代わりにカラー・アイシングを使った。味は同じだが、少しだけドロッとしたものになる。縞模様はチョコレートを溶かして作る。
ソ連時代の工場で製造されていたアプリコティンは四角であったが、家庭でつくるものは円形の場合が多い。これは、家庭では丸く作る方がはるかに簡単であるからだ。このケーキはアプリコティンと名付けられているだけに、アプリコット・リキュールを加えるのを忘れてはいけない。手に入らない場合は、お好みで他のフルーツ・リキュールで代用できる。
材料(8人分):
生地:
- 小麦粉 – 360 g
- バター(室温にもどしたもの)– 200 g
- 砂糖 – 150 g
- 卵 – 1 個(大きめ)
- ベーキングパウダー – 小さじ1
- 塩ひとつまみ
シャルロット・クリーム:
- バター – 160 g
- 卵黄 – 2個
- 砂糖 – 150 g
- 牛乳 – 110 ml
- バニラシュガー – 10 g
- アプリコット・リキュール – 大さじ2
グレイズ:
- 粉砂糖 - 100 g
- ビーツの汁 – 小さじ1
- アプリコット・リキュール(または水)– 大さじ2
その他:
- ピーナツ – 100 g
作り方:
1. 卵(大)1個、砂糖、塩ひとつまみをなめらかになるまで混ぜる。
2. 小麦粉300gを小さじ1杯ずつふるい入れ、ベーキングパウダー、柔らかくしたバター200gを加える。
3. 生地をこねる。
4. 生地を同じ大きさのもの5つ、小さいもの1つ(飾り用)に分け、ラップで包んで、冷蔵庫で20分休ませる。
5. 生地が冷めたら、それぞれをのばし、直径20㌢の丸型に切る。それぞれを冷凍庫に入れる。1枚ずつ、200℃のオーブンで15分ほど焼く。小さい生地は小さくして、オーブンで30分以上焼いて、焦げ色をつける。
6. シャルロット・クリームを作る。卵黄、牛乳、砂糖、バニラシュガーを合わせ、弱火にかけて沸騰させ、ドロッとするまで4分ほど煮る。卵黄が固まらないよう、弱火にしたままにする。できたら冷ます。
7. バター160gは白くなるまで泡立て、混ぜながら、シロップを少しずつ加える。最後にアプリコット・リキュール大さじ1とバニラを加える。
8. クリームを6等分し、おいておく。4枚の生地をクリームを挟みながら重ねていく。
9. グレイズを作る。ビーツを茹で、おろし器でおろし、チーズクロスで汁をしぼる。
10. 粉砂糖100g、砂糖大さじ2、ビーツの汁を混ぜ、丁寧にケーキに塗る。
11. ピンク色のグレイズを塗ったら、側面にも残ったクリームを塗り、ビスケットクラムを振りかける。
12. ケーキの表面を飾る。チョコレートを溶かし、小さなセロファン袋に入れ、袋に穴を開けて、網状に飾る。
これでソ連のアプリコティンは完成。最後にフレッシュなベリーを加えてもよいし、ナッツやクリームなど、お好みで飾り付けて。どうぞ召し上がれ!