王様のヴァトルーシュカ:皇室の祝席に喜びをもたらしたパイ(レシピ)

オリガ・ブロフキナ
 小ぶりながらも味は最高で、見かけも非の打ちどころがない、レストランでも出されるデザート。

火から来た名

 伝えられているところによれば、「ヴァトルーシュカ」とい言葉は、古くから伝わる由来がある。どのように現代にまで伝わってきたのかは諸説ある。そのひとつは、「ヴァトルーシュカ」という語は、西ウクライナの方言の、「焚火」を意味する「ヴァトラ」から来たというもの。また別の説では、ルーマニア語で、火の中で焼かれる平たい円形のパン(フラットブレッド)を意味する「vatra」から借用したものだという。 

 どの説を支持するにせよ、どれもが火に関係していることは間違いない。それは、その昔、「ヴァトルーシュカ」は焚火の上に直接のせた巨大な石のかまどで焼かれたからである。ともかく、作り方自体は何世代にもわたって伝えられ、少しは手が加えられたが、元の美味しそうな形は残されたまま現在まで伝わった。

この素朴な料理がどうして皇室のお気に入りになったのか? 

 このような一見農民のお菓子のようなものが、どうして王様の料理と呼ばれるようになったのか分かるだろうか?おそらく、ツァーリ一家のお気に入り料理のひとつになったのだろう。ロシアでは、皇室一家がこのお菓子を気に入り、どの祝席においてもなくてはならないものになった。そして、ロシアの料理人たちは毎回何か新しく仰々しいものを伝統的なものに加えていった。それは宮廷の食卓を飾る数あまたの料理の中でもひときわ明るく輝くものだった。一方、ロシアやウクライナで非常に人気のあったヴァトルーシュカが東欧でもよく知られていたことは指摘しておくべき点である。つまり、「王様のヴァトルーシュカ」がこのお菓子のヨーロッパ版の影響を受けた可能性があり、「ツァーリの」ヴァトルーシュカではなく、「王様の」ヴァトルーシュカと呼ばれていたのもそのせいであると思われる。何れにせよ、ヴァトルーシカにはそれぞれの国でさまざまな作り方がある。

甘くてヘルシー

 さらに、このレシピは、見た目は明らかに不健康であるが、甘い中にも健康的なものになっている。これは子どもに焼くのにちょうどよい。ということで、ここではまさに、甘い香りを加えつつも、サクサクしたバター入り生地にコッテージチーズを閉じ込める作り方をしてみたい。

 王様のヴァトルーシュカの基本は、ショートクラストであるが、中に入れるものには想像力を働かせることができる。伝統的なものとしては、カッテージチーズとサワークリームでつくるが、最近の主婦たちはジャム、新鮮な果物、チョコレート、その他いろいろなものを使う。このお菓子を美味しくつくるのには基本的に何を使っても良いし、どの組み合わせでも最高の出来上がりになるだろう。

美味しいヴァトルーシュカをつくるための4つの秘訣 

 お菓子作りに熱中する前に、覚えておくべきことを書いておく。まず、材料の多くは変更することが可能で、それが長所だと言うことだ。たとえば、バニラシュガーはバニラエッセンスに変えても大丈夫だし、ベーキングパウダーのかわりに重曹でも良い。次に、王様のヴァトルーシュカを高く作りたいのであれば、卵と砂糖をミキサーで撹拌するが、小麦粉はヘラかフォークで加える。3つめは、オーブンで焼く間、覗き込んではいけない。パイが崩れてしまいかねないからだ。最後に、オーブンで焼いた後、10〜15分はそのままに冷まさなければならない。

 これ以上時間を無駄にすることは止めて、さっそくお菓子作りに入るとしよう。

材料:

生地:

  • 小麦粉 300g
  • 砂糖 50g
  • ベーキングパウダー 小さじ1/2
  • 塩 小さじ1/2
  • バター 100g

フィリング:

  • カッテージチーズ(脂肪分5-9%) 450 g
  • サワークリーム 150 g
  • 砂糖 150 g
  • バニラシュガー 小さじ1
  • 卵 3個

作り方:

1. すべての材料を計量する。深いボウルに小麦粉、塩、砂糖、ベーキングパウダーを入れて混ぜる。箱型のおろし器で凍らせたバターを削る。

2. 削ったバターを手で小麦粉に混ぜ込み、パン粉状になったら、ボウルを冷蔵庫に入れ、半時間ほど休ませる。

3. この間にフィリングに取り掛かる。ミキサーのボウルにカッテージとサワークリーム、砂糖、バニラ、卵を入れ、均等に混ざるまでよく混ぜ合わせる。

4. 生地 3/4を 底が外れるケーキ型に入れ、底と縁に押し付ける。

5. 生地の高さを超えないようフィリングを注ぎ入れる。

6. 残りの生地をフィリングの上にふりかける。

7. ケーキ型を180℃のオーブンに入れ、45分ほど焼く。焼きあがったら、オーブンを消し、15分ほどそのまま置いておく。

8. ケーキを取り出し、室温まで冷まし、型から外す。ほどよい大きさにカットし、サーブする。

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