クチヤ:ロシアのクリスマスのメインのご馳走

ヴィクトリア・ドレイ
 もしロシアの古代の人々がご馳走用に一品だけ選ぶとすれば、それはクチヤだろう。クチヤは、毎年クリスマスイブの食卓には絶対に欠かすことのできない、伝統的な儀礼食だった。

 クチヤが正教会の信徒にとって重大なものであったのは、これが大変深い意義を持つ料理だったからだ。東スラヴ人は常に、どの料理についてもその材料の一つ一つをとても大切にしてきた。クチヤは、再生の象徴である小麦、永遠の象徴である蜂蜜、健康の象徴であるナッツ、多産の象徴であるケシの実を主な材料としている。これらの強力な象徴が組み合わさったクチヤは、クリスマスのご馳走のメイン料理と考えられているのだ。

 実のところ、クチヤには伝統的に二種類のものが存在する。“豊かなクチヤ”と、“控えめなクチヤ”だ。“控えめなクチヤ”がクリスマスイブに作られるものだ。伝統的に、これは小麦、蜂蜜、ドライフルーツやベリー、ケシの実を材料とする。正教会のクリスマスは斎戒の直後なので、この種のクチヤは断食を終えた褒美と言える。いわゆる“豊かなクチヤ”は誕生日や洗礼式など他のお祝いのさいに作られ、牛乳やクリーム、バターをたっぷり含むこともある。

 クチヤは、敬虔な家庭においては今日でもクリスマスに欠かせない一品だ。唯一の違いは、主な材料である小麦にある。今日では、クチヤは大麦で作ったりお米で作ったりと、幅広いバリエーションがある。ちなみにお米のクチヤが私のお気に入りだ。この特別なクチヤのレシピの魅力は、材料の比率がとても覚えやすい点だ。ほとんどすべての材料について、半カップずつ用意して頂ければ良いのだ。

 

材料:

  • 米 半カップ 
  • ケシの実 半カップ
  • クルミ 半カップ
  • レーズン 半カップ
  • 干しアンズ 半カップ
  • 蜂蜜 大さじ3~4
  • シナモン ひとつまみ
  • 塩 ひとつまみ

 

 まず、ドライフルーツを準備しよう。今回私は伝統的なレシピに従って、レーズンと乾燥アンズを使うが、せっかく現代風のクチヤを作るのだから、お好みに合わせて他の具を足してみてはどうだろうか。干しクランベリーやプルーンなど良いだろう。

 フルーツにお湯1カップと半量をかけ、脇に置いておく。こうしてある種のコンポートを作るわけだ。ドライフルーツが十分に戻ったら、汁をきれいなコップに切る。この汁は捨ててしまわないように。後で役に立つので。ケシの実もお湯に浸けておよそ20分置く。 

 次にお米を準備しよう。冷水ですすいで鍋に移す。普通の水で炊いても良いだが、先ほどのレーズンとアンズの出し汁を使うことをお薦め。お米に豊かで独特の味わいが生まれるよ。塩ひとつまみを加え、中火で炊く。その間にクルミと戻したアンズ、レーズンを包丁で粗めにみじん切りする。 

 ケシの実の水分を切り、2〜3分フードプロセッサーで挽く。みじん切りにしたクルミの3分の1を加え、再び挽く。混ぜ合わせたものは白みを帯びていて、程良くソフトな歯ごたえがなければならない。より良く仕上げるには、すり鉢でさらにすり潰すと良いだろう。

 お米が炊けたら、少し水っぽいうちに火を止めて、味付けに蜂蜜を加える。みじん切りしたクルミ、アンズ、レーズン、すり潰したケシの実を加え、すべて混ぜ合わせる。

 ほっぺも落ちそうなおいしいクチヤは、少なくとも30分冷まして、みじん切りした干しアンズとナッツ、挽いたシナモンをまぶして出してください。冷めたままでも、あるいは温めても大丈夫だ。実は、クチヤは寝かせれば寝かせるほど味が濃密になる。ですので余った分は冷蔵庫で保存して頂いて構わない。後で十分に楽しめる。 

 正教会式にメリー・クリスマス! そしてプリヤートナヴァ・アペチータ!(召し上がれ!)

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