新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に、今年3月28日、モスクワとモスクワ州ではレストランが閉鎖され、これに続いてロシアの他の地域でも同様の措置が講じられた。モスクワでは、6月16日になってテラス席での営業のみが許可されるようになり、少し後になってその他の地域でもレストランは営業を再開した。しかし、モスクワでは制限が解除された後も、2割ほどのレストランが閉店したままとなった。この危機を生き延びることができたのは、レストランのサイトやデリバリーサイトを使って食材や料理キットのデリバリーに方向転換できた店だけである。レストランやその関連企業はどのような策を講じ、これから何をしようとしているのか?ロシア・ビヨンドがまとめた。
レストラン・ホールディング「ティグラス」(5系列、30店舗以上のレストランを所有)の共同設立者であるヘンリック・ヴィンター氏
「ロシアのレストラン業界は、他の国に較べれば、かなり打撃も少なく、短期間で危機から抜け出すことができたと思います。時宜良く、厳しい自主隔離体制が導入されたおかげで、あるべき方向に向かうことができたからでしょう。
自主隔離措置が解かれた地方において、レストランの営業状況はかなり良好です。カザンとトリヤッチにある私どものレストラン「オステリア・マリオ」と「シヴィリ」では、予想外にも、収益が昨年の同時期に比べて増加しています」。
「モスクワではショッピングセンターの近く、またベッドタウンにあるレストランで、特に大きな収益が確認されています。危機の間、収益は20%ダウンしましたが、現在、盛り返しているところです。まだ在宅勤務を続けている人もいますし、レストランに行くにも徒歩で行ける場所を選ぶ人が多いと思います。現時点での弊社の収益は昨年の90%になっています。
もちろん、業界はまだ低迷しています。弊社の統計によれば、20%から30%ほどのレストランがまだ営業を再開していないことから、モスクワの賃料は低下しています。良いロケーションの場所がたくさん空いたので、そこを再び借りることもできます」。
マクドナルド・ロシアPRの担当者のナタリヤ・メルクショワ氏
「コロナウイルスの感染が拡大する前に、社内の規定が、国で定められている基準より厳格化されたおかげで、わたしたちは店舗を閉めずに営業形態を変え、テイクアウトとデリバリーに方向転換することができました。自主隔離措置が導入されている間もほとんどの店舗が、安全基準を遵守しながら、営業を続けていました(70%がテイクアウトとデリバリー。完全に営業を停止していたのは、ショッピングセンター内の店舗のみ)。そして6月初めにはマクドナルドはより厳しい安全基準でのコンセプトを提示することができました」。
「コロナウイルス感染拡大の間、ドライブスルーとデリバリーの需要はこれまでにないほどの伸びを見せました。デリバリーは自主隔離前の時期に比べて4倍増加、ドライブスルーでは、1時間に200台以上の自動車のオーダーを処理したという店舗がいくつもありました。店舗も営業を再開して久しいですが、現在も、デリバリーの利用者は自主隔離前よりも大幅に増えています」。
フードプロデユーサー、IFスタジオ・プロダクション、レストラン&ガストロノミープロジェクト創始者のイロナ・フェドートワ氏
「幸いなことに、多くのプロジェクトがコロナ禍を乗り越えることができました。やはり、早い時期に方向転換をし、追加的なサービスを開始したことが功を奏したと思います。たとえば、弊社が経営するレストラン「Drinks@Dinners」と「Uhvat」はオンラインショップでのデリバリーをスタートし、オンラインでオーダーを受けられるようにしました。
「Drinks@Dinners」では独自の半加工食品(肉製品、魚製品、スィルニキ、ペリメニ、ヴァレニキ、肉の煮込みなど)のラインを作り、手頃な価格設定でテイクアウトできるようにしました。またデリバリーできるオンラインディナーやパーティセットなども用意しました」。
「またコロナ禍の中、デジタル・マーケティングにも力を入れています。レストラン「Uhvat」のシェフがYouTubeにブログをアップし、ロシア料理のレシピやライフハックなどを紹介しています」。
スイーツチェーン「Kuzina」(モスクワ、ノヴォシビルスク、トムスク、バルナウルに展開)の運営スタッフ、エヴゲニヤ・ゴロフコワ氏
「コロナウイルス感染拡大以降、半加工食材の料理キットが人気を博していますが、わたしたちはこれまでになかったお菓子のキットを作ることにしたのです。わたしたちのレシピとキットを使って、家でケーキを作ってもらおうというものです。またノヴォシビルスクでは、売り子を置かないケーキ屋を試運転する計画です。お店に来て、自分でコーヒーを作り、デザートを選び、カードで支払いを済ませられるようにできるようにするというアイデアです」。
コンセプト「ルサーロチカ・スシ」の共同発案者、HURMA企業グループ代表、ゴーシャ・カルペンコ氏
「わたしどもの和食カフェ“ルサーロチカ・スシ”は、昨夏からモスクワで営業しています。デリバリーはまだ計画段階にありましたが、自主隔離が始まったのを受けて、これはすぐにスタートしなければならないと理解しました」。
「次に行ったのは、ダーク・キッチン形式への移行です。これは実際の店舗を持たずに、デリバリーのみで営業することです。8月初旬に最初のダーク・キッチンを開始しました。1年の間に、モスクワのいくつかの地区で10店舗開業する予定です。この形式にする利点は、賃料が安いこと、ビジネスをスタートにかかる費用を抑えられること、うまくいかなかったときの損失もそれほど大きくないことです」。
エージェント「アペチートヌィ・マーケティング」(ロシアの主要なレストラン業促進団体の一つ)の設立者、マリヤ・チュメネワ氏
「現在、わたしたちは、ロシア全土の40のレストランと協力関係にあります。現在もっとも多い問い合わせは、新規店のオープンに関するものです。大規模なレストラングループからの問い合わせもあれば、新しい企業からの問い合わせもあります」。
「モスクワとは異なり、地方ではわたしたちの契約はすべて継続されました。サンクトペテルブルクではBio my bioというプロジェクトをスタートしました。コロナ禍にオープンしたロシアで唯一のレストランですが、デリバリーのみでの営業を行っています。またテラスはオープンしてもよくなったときにはもう一つのプロジェクト「コココ・ビストロ」がオープンしました」。
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