新施設では、リハビリ関連の資格や経験を持つロシア人を5人程度採用する。指導役として日本からベテランの理学療法士を派遣し、北斗のノウハウに基づいたリハビリサービスを行う。対象患者は、脳疾患による機能障害を抱える人や、外科手術の後で機能回復を必要とする人など。開業時に受け入れられる患者数は1日最大で30人前後だが、ニーズが高いと判断すれば職員を順次増やして対応する考えだ。
東方経済フォーラムでは北斗のほか日揮、沿海地方政府、極東人材開発公社の計4者で、リハビリセンター事業の可能性調査・協力について覚書を交わしていた。北斗はこれ以前に2013年からウラジオで「HOKUTO画像診断センター」を運営しており、すでに地元の医療業界にはよく知られた存在。新しいリハビリ施設の場所は目下選定中だが、今ある画像診断センターと同じ敷地内、または市内中心部に近い立地の両方を検討している。
北斗の大島正夫ロシア事業担当課長によると、運動療法やマッサージなど、個々のリハビリ手法についてはロシアのレベルは決して低くないという。だがロシアでは手法ごとに専門家がいて、それぞれが独立して治療を行うため、必ずしも患者に適したリハビリ手法がとられているとは言い難い。一方の日本は、患者の動作回復のために種々のリハビリ手法を組み合わせてプログラムをつくり、治療に当たる特徴がある。
リハビリに対する基本的な発想にも違いがある。北斗は調査の一環で、今秋、ウラジオの医療関係者を集めて北斗の理学療法士によるリハビリ技術講習を実施した。大島課長は「私たちのリハビリは、患者が持っている力を引き出すことに重点を置くため、動作を援助しながら可能な限り患者自身に動いてもらいます。ロシアではどちらかといえばセラピストが患者に対して他動的に刺激や力を加える治療が主流。ここは大きな違いでした」と話す。日本の場合、療法士が持つ技術だけでなく患者自身のやる気も重要な要素となる。「日本の理学療法士は患者のモチベーションを高めようと、治療の際には患者とさまざまな会話をします。そうしたやり方を講習で紹介したところ、ロシアの関係者にはとても新鮮に映っている様子でした」
開設準備を進める中、課題として浮上しているのが病院との連携だ。ロシアでは、病院で手術を受けて退院した患者は自分自身でリハビリ施設を探さなければならないという。有力な病院と提携できれば患者のスムーズな受け入れができ、患者側の利便性も高まる。だが極東の大きな病院はほとんどが公立で、民間業者が運営するリハビリ施設と手を組むのは難しい。こうした問題についても関係者と協議の最中にある。
日露の医療協力は両国間で長く語られてきたテーマの一つで、日本の病院によるロシア人患者受け入れや、両国医療関係者の人的交流は拡大傾向にある。北斗は、日本の医療機関のロシア進出という新しい流れをつくる立役者となるかもしれない。
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