対ウクライナ支援融資反対の理由

ペトロ・ポロシェンコ大統領=

ペトロ・ポロシェンコ大統領=

ロイター通信
 「国際通貨基金(IMF)」がウクライナに対して金融支援を行うことに、ロシアは反対した。ウクライナがロシアに借りた30億ドル(約3000億円)をまだ返していないことが、融資支持を阻んでいる。

 IMF理事会の会議が9月14日に行われ、ロシアはウクライナへの3度目の分割融資に反対票を投じた。IMFの2019年までのウクライナ向け支援プログラムには、175億ドル(約1兆7500億円)の融資が定められている。ウクライナは2度の分割融資で総額67億ドルを受け取っており、現在、3度目を待っている状態。

 ロシアのアントン・シルアノフ財務相は先に、ロシアに対する債務をウクライナがまだ償還していないため、IMFがウクライナに融資することは、IMF自体の規定に反する、と説明していた。ロシア財務省は2013年12月、30億ドルのウクライナ債を購入した。だが当時ウクライナの大統領だったビクトル・ヤヌコビッチ氏がクーデターで失脚し、新政権はこの債務の償還を拒んだ。

 

IMFの規定

 IMFは2015年12月、ウクライナに融資を行うために、IMF規定を変えることを余儀なくされたと、「ロシア政府付属分析センター」のレオニード・グリゴリエフ所長主任顧問はロシアNOWに説明する。IMFは今や、延滞債務を保有する国にも融資できるようになっており、これは概して、IMFの従来の姿勢に矛盾するのだという。

 ウクライナに対する新たな分割融資を決定するには、IMF理事会で過半数の賛成票が必要になるが、IMFの投票権は加盟国の出資割当額に比例しており、採択の過程には16.54%の投票権を持つアメリカが大きな影響をおよぼす。ちなみにロシアはわずか2.6%。これを「ロシア経済・国家行政アカデミー」金融市場・金融工学講座のセルゲイ・ヘスタノフ准教授が説明した。「BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)がこの分割融資に反対したとしても、決定の阻止には足りない」とヘスタノフ准教授。

 IMF理事会は以前、先進国の投票権を縮小するために、新興国の投票権を拡大しようと改革を試みたことがあった。2010年に韓国ソウルで行われた主要20ヶ国・地域(G20)首脳会議で、これが合意された。だがアメリカ議会が2013年、この改革を阻止した。IMFの決定を阻止できるような現実的なレバーはロシアにはないと、ヘスタノフ准教授。

 

ウクライナは融資された資金をどう使うか

 IMFは従来から、経済の自由化を含めた改革を将来実施することを確約させて、国に融資を行ってきた。ヘスタノフ准教授によれば、IMFはここ20年、ウクライナに自国通貨フリブナの自由化、国内消費者の石油ガスの利用料金の引き上げを求めてきた。「ウクライナの歴代の政権は事実上、企業と国民の電力および暖房の利用料を補助してきた。これが国の借金を膨らませた一大要因」とヘスタノフ准教授。また、グリゴリエフ所長主任顧問の考えによれば、IMFが融資した資金は、ウクライナの経済ではなく、ウクライナ政府に流れるのだという。「政府の活動支出としては、額はあまり大きくないが、冬を乗り切るためにガスの購入に向けられるかもしれない」とグリゴリエフ所長主任顧問。

 ロシア政府は現在、裁判所を通じて、債権を回収しようとしている。ロシア財務省は、30億ドル(約3000億円)の債務の返済を求め、ウクライナをロンドンのイギリス高等法院に提訴した。審理は2017年1月17~20日に行われる。とはいえ、問題はすぐに解決しそうにない。「この種の紛争の前例が示しているように、とてもゆっくり解決される。今後5年は進展がなさそうだ」とヘスタノフ准教授。

 過去にこのような問題はあった。ソ連崩壊後の1997年、ロシア帝国によって1917年まで蓄積された債務を、ロシアがイギリス、フランス、ベルギーに償還したのだ。「この状況は、現在ロシアがウクライナと抱えている問題と似ている」とヘスタノフ准教授。現ウクライナ政権が前政権の債務の償還を拒んでいるように、ソ連はロシア帝国の債務の償還を拒んでいたという。