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JCBと銀聯は、アメリカが経済制裁を発動したSMP銀行とは提携しない。SMP銀行のエレーナ・ドヴォロヴィフ副総裁が、「銀行カード:実践と変革」会議でこれを伝えた。ドヴォロヴィフ副総裁によると、交渉は2ヶ月続いたものの、日中の両社も理由の提示なしに、提携見送りを伝えてきたという。
アメリカは昨年3月20日、ウラジーミル・プーチン大統領の親友と考えられ、SMP銀行の大口株主とされるオリガルヒ(新興財閥)アルカジー・ロテンベルク氏を経済制裁の対象にした。そしてSMP銀行も昨年4月28日、制裁の対象とした。アメリカのクレジットカード大手「ビザ」と「マスターカード」は昨年3月21日、いかなる事前連絡もなしにSMP銀行発行のカードを1日ブロック。またSMP銀行との業務も停止した。
このような状況を受けて、SMP銀行はアジアのクレジットカード会社との業務を模索し始めた。「マスターカードやビザではない外国の代替クレジットカード会社を選択しても、制裁の問題は解決しない」と話すのは、「オトクルィチエ」銀行カード部のユーリ・ボジョル部長。SMP銀行をめぐる状況は、国内の決済を守る唯一の案として、ロシアの「国家決済カード・システム」の創設を決めたことが、正しかったことを証明するという。ロシアは今年4月、「国家決済カード・システム」の運営を開始した。これによってビザやマスターカードを含むすべてのカード決済は、国内のサーバを経由するようになった。
提携できない主な理由
「コメルサント」紙によると、銀聯はドルのみの国際決済を提案しているが、SMP銀行は制裁により、ドル決済を行えない。人民元での決済は、中国国内の取引に限定されている。JCBはユーロと日本円での決済を提案しているものの、日本は昨年4月に対ロシア経済制裁に加わっている。
「アメリカの制裁対象になっている者は、アメリカ財務省外国資産管理局(OFAC)のリストにのっている。これはつまり、アメリカの銀行には対象者の資産と取り引きを凍結する義務があるということ。対象者が”間接的”に取り引きに関与しているリスクがある場合は、その取り引きを拒否しなければならない」と説明するのは、ロシア経済・国家行政アカデミー株式市場・金融工学講座のコンスタンチン・コリシチェンコ主任。
JCBと銀聯のシステムには、アメリカで業務を行い、直接的または間接的にOFACの要求を遵守する義務を負っている銀行も参加しているため、制裁対象となっているロシアの銀行が参加してくると、アメリカの銀行が制裁対象の銀行と業務を行うような事態を招きかねないのだという。
SMP銀行はたまたま?
銀聯がロシア市場に参入したのは、アメリカがロシアに制裁を発動した直後の昨年4月。日本のJCBは今年3月に参入した。2017年までに、銀聯カード約200万枚、JCBカード約300万枚がロシアで発行されると計画されている。ロシアの銀行にはこれまで同様、アジアと提携していく用意がある。「国や経済に利点を与えるのであれば、どことでも提携可能」とボジョル部長。銀行は特に、アジアのクレジットカード会社との提携には積極的である。
とはいえ、アジアの会社の今回の決定を、世界規模で考えない専門家もいる。ロシアの大手証券会社「フィナム」のアナリスト、アントン・ソロコ氏によると、SMP銀行が提携の交渉で合意にいたれなかっただけだという。それでも、「クレジットカード会社が西側諸国からの何らかの制限を恐れた可能性はある」という。
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