「プリラズロムノエ」油田における石油出荷、2014年4月=写真提供: ガスプロム
世界の原油市場の現状と対ロシア経済制裁は、ロシアの北極圏大陸棚開発を困難にしていると、ロシア経済・国家行政アカデミー原料経済センターのアナリストであるレギナ・バザレワ氏は考える。
ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、イリヤ・バラキレフ氏は、「制裁と原油安が北極圏開発を大きく制約している」と話す。ロシア企業には現在、自力でこれらの油田を開発するために必要な技術と資金がなく、現在の1バレル当たり約50ドルの原油価格での生産は、経済的に妥当ではないという。
しかしながら、ロシア企業は北極圏プロジェクトを放棄していない。
国営天然ガス会社「ガスプロム」の石油子会社「ガスプロム・ネフチ」は、ロシアNOWの取材に対し、北極圏ペチョラ海大陸棚の石油掘削基地「プリラズロムナヤ」での石油採掘量を2倍に拡大することを計画していると話した。このために、2015年にはさらに4つの油井を掘削する予定。
プリラズロムナヤはロシア初の北極圏鉱床。すでに炭化水素の産業採掘が行われている。2013年12月に採掘が始まり、2014年4月に新油種アルコ(Arctic Oil)を積載したタンカー(載貨重量7万トン)が初めて出港。1月初めには北西ヨーロッパの消費者に向けて、4回目の輸送が行われた。昨年このプロジェクトで生産された原油は30万トンにのぼる。
もう一つの北極圏の石油採掘プロジェクトを手掛けているのは、国営石油最大手「ロスネフチ」。それは、カラ海の油井「ウニベルシチェツカヤ1」だ。ロスネフチの広報によると、総埋蔵量は石油1億3000万トン、ガス5000億立方メートル。「鉱床から採掘された超軽質油は、その性質でブランドのブレント原油、シベリアン・ライト、WTIを超え、ベトナム大陸棚の『ホワイトタイガー』油田の原油に匹敵する」とロスネフチ。資源量でメキシコ湾、ブラジル大陸棚、アラスカとカナダの大陸棚を超え、サウジアラビアの資源基盤に匹敵するという。
ロスネフチの戦略的パートナーはアメリカの「エクソンモービル」であったが、アメリカの対ロシア制裁により提携規模は縮小した。バラキレフ氏によると、ウニベルシチェツカヤ1では今のところ、探査掘削が実施されたのみで、生産は行われていないという。
専門家によると、ロシア企業が大陸棚プロジェクトの開発を中断することはないという。「プロジェクトの停止は、長期中断後再開した北極圏研究に悪影響をおよぼす」と、ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」の上級専門家であるドミトリー・バラノフ氏は述べた。過去にソ連では、こういう場合に中断されることが多かったが、ロシアはいまだにその影響を修正しようとしているという。
「石油生産がすでに始まっているプリラズロムナヤ、油井掘削に成功したウニベルシチェツカヤなどのプロジェクトを停止することはない。例え現時点で不採算だったとしても」と、会計事務所「フィンエクスペルティザ」法務コンサルティング部のヴィクトル・デミドフ部長は話す。
特にガスプロム・ネフチは1月、バレンツ海およびペチョラ海の大陸棚のさらなるライセンス区域2ヶ所について、地下埋蔵物使用権を取得している。2ヶ所の合計埋蔵量は石油2億4500万トン、ガス2兆立方メートル強。またガスプロム・ネフチは昨年11月、プリラズロムナヤ近くのドルギンスコエ油田で、油井の試験を実施している。この油田開発を支援するのは、ベトナムのパートナー「ペトロベトナム」。ただし、バザレワ氏によると、制裁が強化された場合、このプロジェクトの将来は不透明になるという。「輸入設備の割合が高いということは、プロジェクトの更なる発展のために、積極的な輸入代替の取り組みが求められるということ」
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