ロシアの甘草に注目

甘草は古くから漢方薬などに使われてきたマメ科の多年草で、主に中国の新疆ウイグル自治区から中央アジア、ロシア南部にかけて自生している。=GettyImages/Fotobank撮影

甘草は古くから漢方薬などに使われてきたマメ科の多年草で、主に中国の新疆ウイグル自治区から中央アジア、ロシア南部にかけて自生している。=GettyImages/Fotobank撮影

ロシアの多様な資源が、また一つ日露間にビジネスをもたらそうとしている。医薬品原料メーカーの宏輝(東京)が、来年秋にロシア南部アストラハン州で工場を稼働させる。地域に群生する甘草(カンゾウ)という植物を採り、現地に新設する工場で医薬品の有効成分を取り出して主に国外に輸出する計画。

 9月に吉田博会長がアレクサンドル・ジルキン州知事を訪ね、事業開始に向けた合意書に調印した。

 甘草は古くから漢方薬などに使われてきたマメ科の多年草で、主に中国の新疆ウイグル自治区から中央アジア、ロシア南部にかけて自生している。

 体の抵抗力を高めるとされる成分「グリチルリチン」を根に含み、日本でもこれを原料とする処方薬が多くつくられている。

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 ロシアでは甘草の研究は進んでいたが、西洋医学が主流のため薬の原料とは見られていなかった。

 宏輝は1960年代から、輸入甘草から取り出した原料を製薬会社に納めてきた専門メーカーだ。

 90年代には甘草の自生地である中国・新疆に工場を設置。その後現地事情で中国での自社生産は停止しているものの、2012年以降、やはり甘草が多いタジキスタン、アゼルバイジャンでの製造に乗り出している。

 現在はカザフスタンにも工場を建設中。旧ソ連というつながりもあり、ロシアではこれまで中央アジアで蓄積したノウハウが生かせると見る。

 アストラハン州では州政府の協力の下、子会社である宏輝システムズと現地企業が合弁で工場運営会社を設立する。

 甘草の採取地は約2000へクタール。甘草は採るときに根を一部残しておけば数年で再生するため、エリアを複数に分けて段階的に採取することで事業を長く続けられる。

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 予定生産量は顆粒状にした濃縮甘草で年間約200トン。加工前の甘草の扱い量は乾燥させた状態で2000トンに及び、地元には50人規模の直接雇用が生まれる見込みだ。

 主な出荷先は日本や中国だが、コスト高な中国内陸部を抜ける物流ルート以外にも、黒海方面に陸送した上で海路で運ぶことも検討している。

 宏輝の進出先は日本企業の少ない地域ばかりが並ぶ。リスクの高さをどう考えるのか。伊藤眞取締役の答えは「私たちは甘草の豊富なところで生産するだけです」と実にシンプルだ。

 原生地が広がる旧ソ連地域で人脈をつくり、事業を進めるにはロシア語や現地語が不可欠となる。ここ数年宏輝は語学力に優れた人材を積極採用しており、現在従業員60人強のうち7人がロシア語を操る。

 アストラハン州政府側は将来は加工・輸出にとどまらず医薬品製造まで実現したい意向という。実現可能性を巡って、双方で引き続き協議する見通しだ。