サウス・ストリーム建設中止で困るのは誰

ラミル・シツディコフ撮影/ロシア通信

ラミル・シツディコフ撮影/ロシア通信

ロシアはガスパイプライン「サウス・ストリーム」の建設計画を中止した。その主な理由はブルガリアの問題。専門家は、計画中止の一因として、急激な費用増をあげている。建設が実現しなければ、ブルガリアは自国内の通過ガスの収入を、日本、ドイツ、イタリアの企業は締結した契約の収入を得ることができなくなる。またガスパイプラインはトルコに方向転換される。

 ウラジーミル・プーチン大統領は訪問先のトルコで、サウス・ストリームの建設中止を発表した。これはロシア産天然ガスを黒海経由で中東欧に送るガスパイプラインで、中東欧は年間640億立法メートルを受け取ると試算されていた。「ブルガリアから許可がおりない限り、黒海からブルガリアの海岸へ向かうガスパイプラインの建設を始めることはできない。不合理だ」。ロシア産ガスは液化天然ガス(LNG)プロジェクトの推進・実現を通じるなどして、他の市場に方向転換される。ブルガリアは計画中止によって、自国内を通過するガスに対する通過料年間4億ユーロ(約600億円)ほどを受け取れなくなるという。

 だが、ロシアの国営天然ガス会社「ガスプロム」の損失の方が大きい。ここ3年で、この計画に46億6000億ドル(約4660億円)を投じていた。

 

計画中止の主な理由

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 このプロジェクトの運営会社「サウス・ストリーム・トランスポート」によると、ヨーロッパの企業は中止によって25億ユーロ(約3750億円)ほどを失う。同じくプロジェクトに参加していた日本の会社が受け取れなくなる金額は、3億2000万ユーロ(約480億円)。これは住友商事、伊藤忠丸紅鉄鋼が受注した鋼管の契約金である。

 ロシア経済・国家行政アカデミー国家規制講座のイワン・カピトノフ助教授はこう話す。「ブルガリアは自国内でのガスパイプライン敷設の禁止について、以前から話していたため、プロジェクトの中止にそれほどの驚きはなかった。ブルガリアを翻意させることはできなかった」

 ブルガリア経済・エネルギー・観光省は今年8月、このプロジェクトが欧州連合(EU)の第3次エネルギー・パッケージに準拠していないとして、実現への参加を中止していた。パッケージの規定によると、ガス採掘企業はEU領域内のガスパイプラインの保有者になれない。

 カピトノフ助教授によると、決定に影響をおよぼすようなプロジェクトの費用の著しい上昇が、今年10月に明らかになった。サウス・ストリームの黒海部分の費用は100億ユーロから140億ユーロ(約1兆5000億~2兆1000億円)まで、ヨーロッパの陸上部分の費用は66億ユーロから95億ユーロ(約9900億~1兆4250億円)まで上昇。総額はガスプロムの2013年EBITDA(利払・税引・償却前利益)に相当する、550億ドル(約6兆6000億円)であることが判明した。

 サウス・ストリームの建設中止が発表された後、ガスプロムの株価は1.1%上昇した。ロシアのFX会社「アルファFOREX」分析部のアンドレイ・ディルギン部長はこう話す。「投資家はサウス・ストリームの建設中止を肯定的に評価した」

 

トルコに方向転換

 ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長はプーチン大統領の発表の後、ガスパイプラインをブルガリアからトルコに切り替えると述べた。トルコに配分されるガスは年間140億立法メートル。残りはトルコとギリシャの国境すなわちEU向けに供給される。

 カピトノフ助教授はこう説明する。「ロシアはここで計画(サウス・ストリーム)の効果を得る。それは供給の多様化と不安定な通過国の回避」。EUはこのようなプロジェクトの妥協案は見つからないと考えていたため、EU諸国にとってトルコ経由、特にEU加盟国ではない国のルートの選択は予想外だった可能性がある。ロシアは通過国トルコに依存することになるが、妥協は必要だという。

 ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」の上級専門家であるドミトリー・バラノフ氏は、EUの姿勢次第でサウス・ストリームが当初の姿に戻る可能性があると話す。「既存のEUへのガス供給契約すべてをロシアはしっかり履行する」。ロシアは十分なガス備蓄を保有しているため、供給先の多様化を拒むようなことはせず、あらゆる国に輸出する可能性があるという。「東向き、西向きのガス供給は維持されるが、インドがロシア産ガスに関心を持っていることを考えると、近い将来、南向きが出現する可能性もある」とバラノフ氏。マロシュ・シェフチョヴィチ欧州委員会エネルギー副担当は、ロシアから建設取りやめの発表があったものの、9日に予定されているサウス・ストリーム・プロジェクトの参加国会合をEUはまだ中止していないと話した。