ムーディーズで投資適格級脱落

写真提供: ロイター通信

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アメリカの格付け大手「ムーディーズ」が、ロシアの国債格付けを1段下の「Baa2」に引きさげた。対ロシア経済制裁の悪影響を指摘している。専門家は、原油価格下落とルーブル安が、別のアメリカの格付け大手「スタンダード&プアーズ(S&P)」の判断材料にもなる可能性を指摘する。S&Pの格付けが発表されるのは24日。

 ムーディーズはロシアの国債格付けを、これまでのBaa1からBaa2に引きさげた。その理由はロシア経済の中期的見通しの悪化。ウクライナ情勢の継続と制裁の悪影響が成長の重しになっている。「このようなロシアの低い評価は、経済にのしかかる長期的なリスクなどによるもの。そのリスクの影響は現在では予測できない」と、ロシアの仲介業会社「FBS」の上級アナリスト、キーラ・ユフテンコ氏が、ロシアNOWに説明した。

ロシア以外でBaa2に属しているのは、イタリア、スペイン、ブラジル、カザフスタン。ギリシャはもう少し低い。しかしながらIMFの評価によると、ロシアは現在、石油輸出国の中でもっとも対外債務の少ない国である。世界の経済大国上位10位の中で、ロシアの対外債務はもっとも低い(GDP36%)。対外債務が数倍に膨らんでも、依然としてEUレベルである。

 ムーディーズの予測によると、ロシアの2014年のGDP低下はないが、年末から2015年半ば頃まで指標が”赤域”に入る。引きさげの他の理由は、資本流出による外貨準備高の減少と、法人債務者の国際市場への到達の問題。今年9ヶ月間の資本流出は852億ドル(約8兆5200億円)。外貨需要の拡大は、昨年末より554億ドル(約5兆5400億円)少ない、4542億ドル(約45兆4200億円)までの外貨準備高の低下を招いた。

 ロシア連邦経済開発貿易省はこれを大きな問題とはとらえていない。アレクセイ・ウリュカエフ経済開発貿易相は最近、ロシアの対外債務がGDPの3%以下、国債総額がGDPの11%で、世界でもっとも低い国の一つだと述べていた。「その気になれば1年で償還可能」とウリュカエフ経済開発貿易相。

 ロシアの外貨準備高は依然として多いが、緊張によって民間セクターに流動性を与えなくてはいけなくなっている、とムーディーズ。ロシア連邦中央銀行のデータによると、ロシアの銀行と企業は2015年末までに対外債務1340億ドル(約13兆4000億円)を償還しなければならない。ウリュカエフ経済開発貿易相は、企業債務のリファイナンスの現実的な試算総額として、900億ドル(約9兆円)をあげている。

 短期的見通しでは、外国からの資金調達の制限に、ロシア経済がもっとも苦しむ、とムーディーズ。資本流出および原油価格の下落と同様、この要因もルーブル安によるロシアの外貨準備高の主な脅威。格付けの主要な維持条件になっているのが、この外貨準備高の多さ。今年初めからその額は11%減の4540億ドル(約45兆4000億円)となっている。

格付けの引きさげが与える影響

 格付けがさがったことで、大部分のロシア企業の今後の資本金減少、新規公開株(IPO)の難化などを引き起こす可能性があるものの、ロシア経済への循環的影響はないかもしれないと、ユフテンコ氏は考える。「昨年のロシアの投資価値は格付けに関係なく明確にさがっていた。格付けの悪化は追い打ち、共通の問題認識に沿うもの。ロシア経済にとって今重要なのは、ウクライナ情勢と原油市場の現実的な動態」

 商工会議所投資・革新促進部のアレクセイ・ヴャルキン部長はこう話す。「ロシアに生産拠点を置くロシアや海外の製造会社は、この格付けの引きさげによる悪影響を受けない」

 FX会社「アルパリ」のアンナ・コロレワ氏は、ムーディーズの格付けが客観的ではないと考える。「困難な経済状況にもかかわらず、ロシアは支払能力のある国家で、デフォルトからはほど遠い」

S&Pおよびフィッチの格付けは

 ロシア政府は格付けの見直しを今月中旬の時点で予期していた。ウリュカエフ経済開発貿易相は14日、格付け引きさげの「客観的な前提条件はない」ことから、不適格または政治的だと言っていた。

 ムーディーズに続いて、S&Pやフィッチも引きさげる可能性があると、コロレワ氏は考える。「格付け会社がロシアの支払い能力を評価するモデルは、S&Pが以前は評価に含めなかった夏の支払い能力の変化に類似している」

 24日に発表されるS&Pの格付けの発表は深刻なリスク要因である。S&Pの格付けで、ロシアはすでに投資カテゴリーの最低限の段階にあると、ユフテンコ氏。S&Pの格付けが現在のBBB-からBB+(非投資適格または投機的レベル)までさがった場合、ロシアの金融システム全体への打撃となる。

 S&Pが非投資適格まで格付けをさげると、ロシアへの投機的資金の流入を数年間止める。民間の投資家は従来から、格付け大手3社の「非投資適格国」への投資に極めて慎重で、欧米の大手集団投資研究所(および西側寄りのアジアの研究所)にとって、このような投資は不可能である。