エカテリナ・シュツキナ / ロシア通信
そのフォーラムで、同首相は、当面ロシアは主にアジアのパートナーとの接近を図る、と語り、ロシアに対する制裁は経済的指標の低下にもかかわらず歴史的観点から非生産的である、と述べた。
メドベージェフ首相は、ソチ投資フォーラムの開会式でこう述べた。「今年は、転換の年として、とくに、ウクライナで戦争が始まりクリミアがロシアへ返還されて我が国に対する制裁が導入された新時代の起点として、歴史の教科書に記されよう。西側のパートナーとの関係の冷却は、私たちがこれまで暮らしてきた座標軸の見直しを迫るものである。私たちは、多くの西側のパートナーはロシアに自国の国益があることを認めなくなり、その結果、第二次世界大戦後に形成された世界発展の哲学全体が疑問に付された、との感覚を抱いている」
制裁の波紋
メドベージェフ首相は、ロシアは前世紀にいくども制裁に晒されたとし、こう述べた。「ソヴィエトの政治体制はさまざまに捉えることができるが、私たちは制裁を克服してきた。1981年に米国はウレンゴーイ・ウジゴーロド間のガスパイプライン用の材料の供給を停止したが、それは完成し、1998年に米国はイランとの協力が疑われる研究機関に対する制裁を導入したが、歴史は、ロシアへの圧力が空しく終わったことを示している」。さらに、同首相は、比較的小さな国に対する制裁も成果なく終わっているのに、ロシア経済は世界第六位である点を指摘し、こう付言した。「制裁に基づく対立は私たちにとっても西側にとっても悪しきものであり余計なものである、という真実を直視する必要がある。私たちは損失を被っているが、世界経済における制裁の行方を予想することは誰にもできない」
メドベージェフ首相は、現在の状況が2008年の経済危機と異なる点として、当時は世界の主要な経済がみんな一緒に活動しており、まさにその頃にさまざまな国を一つに束ねる「G20」が創設されたことを挙げ、こう述べた。「そこに成功の保証があった。私たちには、今なお、私たちのパートナーがふたたびロシアの国益を考慮するという条件で彼らの言い分を聞く用意がある。欧州の企業は、今も主たるロシア経済への投資家であり、その投資額は、約3000億ドルにのぼる」
アジアへのシフト
メドベージェフ首相は、当面ロシア経済がアジアへのシフトを続ける点を指摘し、こう述べた。「ロシアとアジアの接近は、客観的なプロセスであり、私たちは、10年ほど前にこの政策を開始した。主眼は、中国、印度、日本、および、より小さな経済を具えた国家という、すべての国との協力である。早くも今秋、主にアジアの投資家を対象としたシベリアおよび極東における税の優遇を具えた14の急速発展地域の創設に関する法案が議会下院へ提出される」
アジア諸国との別の活動分野となるのは、シベリア横断鉄道幹線とバイカル・アムール鉄道幹線というユーラシア横断鉄道回廊の拡張をはじめとしたインフラ・プロジェクトの推進であり、プロジェクトへの投資の総額は、5000億ルーブル(130億ドル)を上回る。メドベージェフ首相は、こう述べた。「アジアにおける私たちの新たな戦略は、地域における我が国の強化が欧州を含む他の地域における我が国の権威の増大を促すという事実を考慮しないわけにはいかないものの、欧州への無意味な報復ではなく事態の推移の自然な流れである」
国内の問題
メドベージェフ首相によれば、アジアのパートナーとの協力は、ロシアの経済的指標の深刻な悪化を背景に進められる。この8ヶ月間でロシアのGDPは0,7%増加し、2014年のGDPの増加率は約0,5%になる見通しだが、ここ五年間はGDPの増加率は年1%前後を維持してきた。2014年の1月から8月にかけて、固定資本への投資は2,5%減少したものの、工業生産は1,3%増加した。同首相は、こう述べた。「農業は、他の経済部門より急速な発展を遂げており、その生産は、この8ヶ月間で5%増加した。失業率は、昨年が5,7%であったのに対し、現在は5%の水準を保っている。私たちは、かなり大きな金外貨準備高を維持することができ、より本格的な経済復興を当てにしていたが、対外経済の状況の変化により予想の見直しを余儀なくされた」
ちなみに、インフレ率は年7,8%だが、一部の専門家によれば、それは、構造的、循環的、対外経済的な要因によるものである。
メドベージェフ首相は、さらにこう述べた。「どんな政府も、困難を対外経済のせいにしたがる。私たちは、一連の構造的問題を抱えているが、今後もそれらすべてのパラメータを対象に活動していき、私たちの優先事項のあり方も、変わらない。経済的指標の悪化にもかかわらず、ロシア経済が閉鎖されることはない。私たちは、自分たちの路線を変えずに独自性を保っていき、自国通貨の相場形成の柔軟性やインフレターゲットは、すべてそのままとなる」
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