クリミアへの電力供給停止か

タラス・リトビネンコ / ロシア通信

タラス・リトビネンコ / ロシア通信

クリミア半島の電力網を所有するウクライナの国営電力会社「ウクルエネルゴ」が、電力供給の制限を警告した。これを受けて、ロシアの専門家は半島のエネルギー的独立の必要性に言及。しかしながら、ロシア本土とクリミアの間の架橋が完了するまで、それはほぼ不可能だ。

 ウクルエネルゴは、電力供給を制限すると警告した。制限の理由はウクライナの電力不足。具体的には、ロシアの国営天然ガス会社「ガスプロム」への債務によってロシア産ガスの供給が停止していること、ウクライナ南東部の炭鉱の活動が武力衝突によって停止していることの影響だという。 

 不足が生じた際には、半島で1日のうち、9時から11時まで、また19時から23時までの6時間、電力供給を止め、最大都市のセヴァストポリでは住宅地と工場への供給を完全に止める。ウクライナ政府は831日の夜、電力供給を停止。シンフェロポリ、セヴァストポリ、ケルチなどの主要都市が影響を受けた。その後供給が再開された。

 

主な決定内容

  ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」の上級専門家であるドミトリー・バラノフ氏はこう話す。「クリミアへの電力供給中断をウクライナが続けた場合、8月末に使用された可動式非常電源が再び使われるだろう」。クリミアの自家発電量も増えて行く可能性があるという。ロシア政府はすでに、発電能力22メガワットの可動式ガスタービン発電設備を15台半島に供給済。うち6台が首都シンフェロポリに、5台が最大都市セヴァストポリに、4台が西クリミア変電所地域の主要な街から離れた場所に置かれている。

 ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、イリヤ・バラキレフ氏によると、総発電能力は最大330メガワット。クリミアの電力消費量は約500540メガワットだが、冬になると850メガワットまで増える。つまり、自力で消費をまかなえないのだ。

 

 可動式ガスタービン発電設備の電気の原価は、ウクライナ本土から輸入するよりも高くつく。正式なデータによると、1キロワット時は最大5ルーブル(約15円)。ウクライナからの輸入電力の場合、1キロワット時は3.42ルーブル(約10.26円)。ちなみにこの地域の太陽発電では、1キロワット時が3ルーブル(約9円)ほどである。ロシアは半島の電力システムを強化し、ロシア本土の電力網とつなげることを計画している。しかしながら今のところ、新電力網の技術条件が作成されているだけで、投資家は決まっていない。

 

将来の計画

 ロシア連邦エネルギー省は4月末、700メガワット以上のガス火力発電所を半島に建設する計画を定めた。建設予定地はシンフェロポリとセヴァストポリの近く。新たな電力インフラ創設にかかる費用は、710億ルーブル(約2130億円)と試算されている。これによって

2017年までにはウクライナへの電力依存から脱却させる考えだ。

 「キエフは半島のエネルギー依存を意図的に守ってきた。このような条件にずっと耐えることはできない」と、クリミア自治共和国のセルゲイ・アクショノフ暫定首相は述べた。

 バラキレフ氏はこう話す。「クリミアの電力依存問題を解決する手段はいくつかあるが、どれも時間がかかるか、中断された電力のほんの一部を補償できるか」。クリミアの電力網がロシア本土とつながるまで、ウクライナは主な電力源のままとなるという。つながる時期はロシア本土との橋またはトンネルの建設が完了する時。これ以外に半島には、黒海の大陸棚でガス採掘を行っている資源基地の強化など、独自の計画もある。「ウクライナへのガス供給の問題が近い将来解決することを願う。これがクリミアへの安定した電力供給につながる。ウクライナの国家予算の状況は厳しいため、クリミアへの電力供給は貴重な収入源となるし、断るのはもったいない」とバラキレフ氏。

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