「アエロフロート」に新LCC

PhotoXpress撮影

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ロシアの国営航空会社「アエロフロート」は今秋にも、新たな格安航空会社(LCC)を創業する。設立したばかりのLCC「ドブロリョート」にはクリミア路線があったことから、EUによって制裁が発動され、結果的に業務停止に陥った。新会社はその代わりとなる。新会社はクリミア乗り入れを行わず、他の路線で運航するだろうと、専門家は予測する。

LCCの復活 

 ドブロリョートが制裁によって業務を停止したことから、アエロフロートは新たなLCCを創設する。アエロフロートのヴィタリー・サヴェリエフ社長が25日、記者会見でこれを明らかにした。

 ドブロリョートは8月初め、クリミア路線を運航していたことを理由にEUの制裁リストに加えられた。その後、ヨーロッパの契約先は航空機のリース、メンテナンス、保険の契約を白紙にした。サヴェリエフ社長によると、近々新しい子会社の登記を行い、

 1027日にも運航開始が可能になるという。ドブロリョートは半月間の活動でLCCモデルの収益性を証明したため、今後もこの事業を続けて行くのだという。

 

 ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、イリヤ・バラキレフ氏はこう話す。「アエロフロートはLCC市場でシェアを獲得することを固く決心し、そのために全力を尽くすようだ」。ロシアのLCC需要は主に国内線だという。「ドブロリョートの過ちは、国内線固めをせずに、クリミアに就航したことだろう」。そのため、次の新会社はドブロリョートが活動を開始した方向から始めるものの、クリミアへは飛ばない可能性が高いという。

 サヴェリエフ社長の説明によると、サマラ行き(モスクワの東1050キロメートル)、ヴォルゴグラード行き(モスクワの南970キロメートル)、ソチ行き(モスクワの南1600キロメートル)、チュメニ行き(モスクワの東2100キロメートル)の路線が運航される可能性が高いという。

 新会社は新たに運航認証を取得し、使用航空機数は4機にするという。それはドブロリョート用に購入された2機のボーイング737-800と、今年末に受け取る2機の同等の航空機だ。

 

ビジネスモデルの展望

 8月に発動された制裁により、ヨーロッパの企業はドブロリョートとの協力を禁じられた。ドブロリョートのEUの資産はすべて凍結される。

 経済紙「コメルサント」によると、主な問題となったのは、アイルランドの「SMBCアビエーション・キャピタル」が、ボーイング737-800NGのリース契約の履行を拒否したことだという。また、ドイツの「ルフトハンザ・テクニック」も、メンテナンスを拒否した。しかしながらこの制裁はドブロリョートの運航に対するものだけであり、アエロフロートは追加的な損失を被らなかった。

 それでもロシア最大の銀行「ズベルバンク」の情報によると、アエロフロートは3月までにプログラム総投資額1億ドル(約100億円)のうち、2000万ドル(約20億円)を費やしていたという。経済紙「RBCデイリー」は8月中旬、ドブロリョートが今年末まで運航を続けていた場合、14億ルーブル(約42億円)ほどのマイナスEBITDAを計上した可能性があると伝えた。

 「LCCは世界中で成功しているのだから、ロシアで機能しない理由はない。ドブロリョートの業務停止は経済的な理由ではなく、政治的な理由によるものであるため、完全な不可抗力。経済には無関係」と、ロシアの投資会社「フィナム・マネジメント」の上級専門家であるドミトリー・バラノフ氏は話す。つまり、ドブロリョートは一定の期間を置いた後、活動を普通に続けることができるのである。

 多くのヨーロッパの航空会社が自社のLCCを創設している。ロシアNOWの取材に対し、「ルフトハンザ」広報部は、グループにルフトハンザ、SWISS、オーストリア航空、ブリュッセル航空以外にも、LCC子会社ジャーマンウイングスも入っていると説明した。モスクワとサンクトペテルブルクから、ドイツの非ハブ空港へ向かう路線は、ルフトハンザからジャーマンウイングスに移譲されている。ルフトハンザはこれ以外にも、大陸間LCCを始める予定で、最初の路線は来年冬にも運航開始になる可能性がある。

 バラキレフ氏は、ドブロリョートのビジネスモデルの継続性に疑問を示す。「航空輸送費に占める燃料費と空港乗り入れ料が大きすぎる。これらが今後数年間で大きく下がることはなさそうだ」。ドブロリョートはロシア初のLCCというわけではなく、3社目である。以前創設された他の2社スカイ・エクスプレスとアヴィアノヴァは、2011年に破産した。

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