モスクワに日本のパフを売るお店

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日本のパフをロシアで売ろうと、レイラ・カントロヴィッチさんは日本のシュークリーム専門店「ビアード・パパ」の関係者に自らアタックした。

 「ビアード・パパ」のパフは、クリームの入った大きくて甘いパフだ。だがモスクワのレイラ・カントロヴィッチさんのカフェ「パフ・ポイント」には、甘いパフ以外にも、カニ、七面鳥、グリル・ズッキーニなどが入ったサンド・パフもある。カントロヴィッチさんは半年未満でモスクワに8店舗開業し、1ヶ月1000万ルーブル(約3000万円)ほどを売り上げている。 

 

「称賛されるべき人々」との仕事

 カントロヴィッチさんがアジアの料理を食べたのは、ウラジオストクでの開催を控えていたアジア太平洋経済協力(APEC)会議の準備を行っていた時。APEC諮問委員会の業務執行理事を務めながら、APEC参加者と協議を行っていた。もともとの仕事はアメリカ系資源開発会社「ハリバートン」のエンジニアだが、APEC後に退社することを決めた。「3人目の子どもが生まれたので、大手企業や政治から離れなければならなかった」とカントロヴィッチさんは説明する。

 「APEC開催中は、日本人と仕事をするのが一番楽しかった。称賛されるべき人々。どんなものでも完璧に仕上げる」。事業をするなら日本の会社との提携しかないと考えた。

 アタックした会社は、「ビアード・パパ」などの洋菓子店・外食店チェーンを運営する「麦の穂」。当時モスクワにはすでにビアード・パパが2店舗あったが、カントロヴィッチさんは麦の穂の幹部と接触し、日本文化への愛をアピール。その結果、CIS諸国でのマスター・フランチャイズを提案された。

 麦の穂欧米部門の関係者はこう説明する。「カントロヴィッチさんとお会いした時、ビアード・パパが好きなんだということがすぐにわかった。経験よりも当社のブランドと商品への情熱を重視している。当社のビジネスでは、新しい人でも短い時間で仕事を覚えられるようになっているが、商品を愛する気持ちは研修で教えることができない」

 

スイーツというより軽食

 モスクワで開業したカフェでは、甘いパフ以外にも、ボリュームのある食材やサラダの入ったサンド・パフが提供されている。日本人はこれに反対しなかった。麦の穂はむしろ、このレシピの一部を他の国のフランチャイズにも提案しようと考えている。

 モスクワでは食べ物や飲み物(モスクワではコーヒーを提供)以外にも、店の名前が異なっている。ビアード・パパという響きは、ロシア市場向きではないと判断したためだ。また、ビジュアル・コンセプトも異なっている。パイプを加えた黄と青のヒゲのおじいさんを見て、ロシア人は食べ物とコーヒーをイメージしないと考え、パフをそのままシンボルにした。

 「パフ・ポイント」の食材は、主にロシア国内やヨーロッパから調達されているが、重要なパフは日本から冷凍輸入されている。

 パフも日本産食品も対ロシア制裁の報復措置の対象になっていないことは、店を大きく助けた。

 

出だしは失敗続き

 カントロヴィッチさんによると、最初の店舗は失敗したという。経験不足と完璧主義が邪魔をした。昨年4月に開業した最初のカフェでは、非常に高額な設備を購入し、その修正にも多額を投じた。かかったコストは総額25万ドル(約2500万円)。

 立地の選定も正しくなく、あまり人は入らなかった。人通りは多かったものの、そこでの需要と合わなかったという。この店舗の最初の1ヶ月の来店数はわずか600人。2店舗目は日本側の助言などから、鉄道クルスク駅近くに開店した。日本ではどこかへ出かける時に、カフェやファーストフード店に立ち寄るという。だがロシアでは駅の利用者はパフやコーヒーに興味を示さなかった。

 結果的に2店舗を閉鎖した。カントロヴィッチさんは落ち込むことなく、ビアード・パパの元店舗を2店購入。また、好奇心旺盛な人々を求め、ショッピング・モール、最新式のビジネス・センター、公園にも出店した。

 現在パフ・ポイントはソコリニキ公園、ゴーリキー公園、VDNH(経済達成博覧会)にもある。すでに8店舗まで増え、1ヶ月の来店者数は約3万人、売り上げは1000万ルーブル(約3000万円)になっている。「フランチャイズ契約での計画よりも早くチェーンは展開されている」と日本側は話す。

 

経済制裁で計画見直し

 カントロヴィッチさんは最近、集中生産拠点を設けた。パフのクリーム、サラダ、その他の中身は一ヶ所でつくられるようになる。これによって質の管理や設備にかかる費用を削減でき、新しい店舗への投資額を56万ドル(約500600万円)まで減らすことができる。つまり最初の店のわずか5分の1である。今年末までにあと10店舗開業する予定だが、見直しを余儀なくされそうだ。対ロシア制裁によって、状況が悪化していると、カントロヴィッチさんは説明する。今後は自己資金のみで展開し、高まり続けるロシア人のコーヒー愛に期待する。

 カフェの人気は確かに高まっている。しかしながら外食を利用しない人もまだまだ多いため、大きな成長は長期的な見通しにおいてのみ可能だ。

 

記事全文(露語)