ロイター通信撮影
制裁後に生じた問題
アメリカ政府が発動した制裁は、ロスネフチのその後の契約に支障をきたした。ロスネフチの顧客である日本の大手は8月初め、ロスネフチの入札に参加することができなかった。経済紙「フィナンシャル・タイムズ」によると、制裁に驚いた銀行が取引への融資を拒んだという。
アメリカ財務省は先月19日、アメリカの企業、金融機関、個人に対し、中長期的(3ヶ月以上)な資金融資や新株を伴う資金融資をロスネフチに行うことを禁じた。
イギリスのエネルギー情報会社「アーガス・メディア」によると、日本企業の一社は、銀行が融資を拒んだことによってロスネフチの入札に参加できなかったことを認めたという。潜在的な融資元はフランスの金融機関「クレディ・アグリコル」、「三井住友銀行」、「三菱東京UFJ銀行」だった。他のロスネフチの取り引き先もアーガス・メディアに対し、フランスの最大手金融機関「BNPパリバ」、イギリスの金融機関「HSBC」などからロスネフチの石油の調達費用として融資を得る際に、困難があったことを伝えたという。
ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、イリヤ・バラキレフ氏はこう話す。「確かに制裁には実感性があり、多くのヨーロッパやアメリカの銀行はロスネフチとの取り引きへの融資を拒みながら、慎重な姿勢を取っている。正式にはこのような融資は制裁対象ではないが」
BNPパリバが記録的な巨額の罰金を科されたことが、このような対応の理由なのだという。アメリカ政府が定めたスーダン、イラン、キューバなどの制裁対象国と、2004年から2012年に渡って金融取り引きを続け、アメリカの法律に違反したとして、BNPパリバは7月、89億7000万ドル(約8970億円)の罰金を科された。BNPパリバはアメリカに合意し、ジョルジュショドゥロン・ドクルセル最高執行責任者(COO)を含む13人の幹部を解任。さらに、ドル立ての非現金業務も制限された。
バラキレフ氏は、日本の石油開発会社はあくまでも入札に参加できないのであって、参加したくないというわけではないと話す。「今後は中東から一部石油を購入しなければならず、追加的な支払いが必要となる」。オーストリアの調査会社「JBCエナジー」によると、日本は今後数週間以内に、ロシアの石油に代わる中東のムルバンの輸入量を拡大するという。
ロシア政府に支援を要請
このような状況から、ロスネフチのイーゴリ・セチン社長はロシア政府に対し、資金的な支援を要請した。ロスネフチが提示した支援案5案のうち、国にとってもっとも困難なのが、国民福祉基金の資金でロスネフチの債券を1兆5000億ルーブル(約4兆3000億円)分購入するというもの。これはロシア経済にとって記録的な支援額だ。ちなみにロシア政府は同規模の額を、2014年から2020年までの支援として、農業に割り当てる。
国民福祉基金は石油ガス収入の主な貯蓄先。2004年に安定化基金が創設され、その後これが2008年に「準備基金」(2014年6月初め、8兆6400億円)と「国民福祉基金」(2014年6月初め、8兆7000億円)の2基金にわけられた。GDPと石油価格を計算に含むという複雑な図式にもとづいた、石油販売から得られる余剰収入で、基金はまかなわれている。基金への資金供給量を左右するのはGDPと石油価格。国民福祉基金の総資産は8月初めの時点で、861億ドル(約8兆6100億円)にのぼっている。
ロスネフチの債務総額は2兆2000億ルーブル(約6兆2700億円)。うち昨年のTNK-BP社の買収額が540億ドル(約5兆4000億円)。ロスネフチはこの買収で国際的な銀行から310億ドル(約3兆1000億円)を借り入れていた。2014~2015年の間に返済しなければならないが、アメリカから科された経済制裁により、欧米の銀行で再借入れし、借り換えをすることもできない。
バラキレフ氏はそれでも、ロスネフチが完全に孤立しているわけではないと話す。「まず、制裁に参加していない国で、ロスネフチとの提携を積極的に続けている契約先がある。次に、エクソンモービルの例が示している通り、以前締結された契約は有効であり、それを無効にしようとするところはない」
エクソンモービルは制裁にもかかわらず、ロスネフチとの提携を続けているという。両社は8月、カラ海の北極圏大陸棚の石油プラットフォーム「ウェスト・アルファ」で、掘削を開始した。
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