Lori/Legion Media撮影
システムの意義とは
国家決済カード・システムは独自のプラットフォームを基盤として創設されると、中央銀行広報部は7月29日に伝えた。「最終的な決定が行われた。技術的基盤は自銀独自のものだが、国内外のシステムも考慮に入れられる」と、ロシア下院(国家会議)金融市場委員会のアナトリー・アクサコフ副委員長はタス通信に説明した。
今年5月、アメリカの制裁リストに加えられたロシアの銀行が発行したカードについて、ビザとマスターカードの国際決済システムが業務を停止。その後独自のシステムの創設が定められた。アメリカの制裁リストには、ユリヤ・コヴァリチュク氏が大口株主となっている「ロシア」銀行、またウラジーミル・プーチン大統領の側近とされる大富豪のアルカジー&ボリス・ロテンベルク兄弟が大口株主となっている「SMP銀行」が入っている。
「プロムスヴャジバンク」債券市場調査・分析部のエレーナ・フェドトコワ部長によると、新たな決済システム創設の期間はすでに定められているという。開発に1年、カード発行に1年半だ。
多くの専門家は以前、ロシア最大手「ズベルバンク」の既存の開発品を基盤にして、システムがつくられると考えていた。ズベルバンクには「PRO100」システムと、それにもとづいた汎用電子カード・プロジェクトがある。このカードは義務医療保険でも使えるもの。PRO100の主な競合システムは「ゾロタヤ・コロナ(金冠)」。ロシアのシステムの中では、カード発行数で他を寄せつけない。PRO100が29万5000枚なのに対して、金冠は1900万枚。また、参加行の数でもトップである。PRO100は14行だが、金冠は513行。それでもPRO100は最大手のシステムである。
「中央銀行は、銀行間の平等性を保ち、誰にも嫌な思いをさせないような策をとった」と、 vvCube社グループのパートナーであるヴァジム・トカチェンコ氏は話す。
PRO100を使用した際の問題とは、ズベルバンクの立場をさらに強めてしまうことである。ズベルバンクはロシアの他行と比較すると、ほとんどの項目ですでに圧倒的な強さを誇っている。
選択の理由
ロシアの大手証券会社「フィナム」のアナリスト、アントン・ソロコ氏によると、決済システムを独自に開発することを選んだのは、その創設過程を完全にコントロールするためだという。「一方で、開発という観点からすると、国内外のソリューションを参考にするとはいえ、ゼロから始めるのだから、この選択はもっとも時間と費用がかかるもの」
ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、イリヤ・バラキレフ氏は、システムをゼロからつくるとしても、事前にすべての問題点を精査し、疑義を回避することは可能だと話す。「プラットフォーム自体は、既存の開発品や既存のシステムのイメージにもとづいて、それほど時間をかけずに構築できる。実現期間は最終的に、リソースの集中度によって変わってくる。場合によっては数ヶ月でできる」。より大きな課題とは、このソリューションをユーザーの間で普及させること、また少なくとも国内市場で、ビザやマスターカードと同等に競争できるようなシステムまで高めることだという。
「システムの能力を整えて、参加者を加えるのに、1~2年かかる」と、決済システム「ラピダ」のオレグ・グリシン社長は話す。
それでも新システムの開発は始まるという。「国家決済システムの創設によって、同時に可能な『瞬時崩壊』のシナリオからロシア市場を保護でき、ロシアのシステム参加者2者の間の授権がロシア国外で生じるという不適切な状況を回避できる」と、「インテルコメルツ」銀行のデニス・フレノフ上級副総裁は話す。
このようにして、銀行はアメリカの制裁リストにどの会社が含まれても、カード決済を行うことができるようになる。ただ、会計事務所「フィンエクスペルティザ」金融機関提携部のナタリヤ・ボルゾワ副部長によると、これほどの短期プロジェクトを実現するためには、中央銀行が全速力で動かなければいけないという。
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