マレー機事故が露経済に影響

ロイター通信

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ウクライナ東部で17日にマレーシア航空ボーイング777型旅客機が墜落した後、ロシア経済には負の影響が及んだ。特に投資家は、欧米からの新たな経済制裁を予期している。ロシアの株式市場は下落し、航空会社は航路の変更とそれにともなうコスト増という影響を受けた。

株価指数の変化

 18日から21日までの期間に、ロシアのMICEX(モスクワ銀行間通貨取引所)とRTS(ロシア取引システム)の株価指数は平均6~8%下落した。休み明けの21日月曜日、MICEXの終値は1400の大台を割った。これはここ2ヶ月の安値更新となる。RTSの終値は1349.79。5月13日以降の最安値である。

 投資家が反応したのは、ボーイング777型旅客機墜落事故後に流れたロシアについての負の情報。特にアメリカのジョン・ケリー国務長官は20日、旅客機を撃墜したとする防空設備を義勇軍に供与したとして、直接的にロシア政府を非難した。市場関係者はこのような条件下で、アメリカだけでなく、高官の立場が一致しているヨーロッパも、ロシアに対する新たな経済制裁を発動すると予測している。

ルーブルには影響せず

ロシアの通貨ルーブルのレートに、経済制裁は影響を及ぼさなかった。その理由について、ロシア中央銀行の厳しい金融政策と原油高が続いていること、また今週始まった課税期間で、企業が納税のためにルーブルを買わなければいけないことを、アナリストはあげている。

 アナリストは興味深い現象を指摘。「アメリカがロシアに対して新たな経済制裁を発動することが明らかになった時、制裁対象リストにあがったロスネフチやノバテクなどの資源会社の株価が下落した。ボーイング777型機の墜落後は、アメリカやイギリスの証券取引所に上場しているヤンデックス、キウイ、その他のロシアのIT企業やメディア企業の株価が下落した。一時ヤンデックスで-6%、キウイで-13%まで下げた。だが取引時間の終了までに状況は少し改善し、ヤンデックスは-3%、キウイは-6.5%だった」と、ロシアの投資分析会社「インヴェストカフェ」のアナリスト、ティムール・ニグマトゥリン氏。

 事故後に影響を受けた企業には、外国人投資家が積極的に投資していたことがその理由だ。「ヤンデックスとキウイはナスダックに上場しているため、資本化率が高く、市場の評価も乗数で行われている。新たな経済制裁がなくとも負の経済的背景から悪化しかねないが、投資家はこの時、制裁のリスクを計算した」とニグラムリン氏。

 だが株式市場の状況は22日から改善を始める。取引時間中にMICEXは+1.85%で1400を取り戻し、RTSは+2.66%になった。ボーイング777型機のブラック・ボックスがマレーシア政府に引き渡されたというニュースが、好影響となった。マレーシア航空機のフライトレコーダーとボイスレコーダーの解析は、イギリスの航空事故調査当局が行うことになった。

 

航路変更のコスト

 ボーイング777型旅客機の墜落事故は、航空会社にも負の影響を及ぼしている。民間機がウクライナ東部のドネツィク州とルハンシク州、また近隣地域の上空を飛行することは、禁止された。欧州航空航法安全機構(ユーロコントロール)のブライアン・フリン代表は、この禁止措置が少なくとも30~40社に影響し、1日約350便が航路変更を余儀なくされると話した。また、航路は著しく逸れないものの、ポーランド、ブルガリア、トルコの空域はより混雑することになるという。

 ロシアの航空会社「アエロフロート」、「トランスアエロ」、「UTエアー」は、「乗客からの強い要望」に応じて、ウクライナ空域経由の飛行をとりやめた。ウクライナの都市に向かわない便が同国を迂回することで、飛行時間は平均20~30分のびる。

 専門家によると、迂回による燃料費の増加は片道1000ドル(約10万円)で、さらに乗員の人件費や、航空航法業務の費用も増えるという。

 このようなコスト増が航空券代金に影響するのかについて、ロシアの航空券販売会社「アヴィアセールス」のヤニス・ゼニス氏はこう考える。「航空券代金には影響しないはず。航空会社は追加的な負担を被っても、乗客に対して値上げはそうそうできない。乗客はむしろ、今回の件が及ぼす為替レート、金融市場への影響を感じるだろう」

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