ビールの広告が復活

PhotoXPress撮影

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ロシア下院(国家会議)は、スタジアムおよびスポーツ中継でビールを宣伝することを「許可」した。ビール会社は、すでに宣伝費として50億ルーブル(約150億円)ほどを用意している。専門家は、2012年に禁止されたビールの広告が復活する理由の一つを、2018年FIFAワールドカップ・ロシア大会だと考える。

W杯の大口スポンサーは大手ビール会社

 下院は春会期最終日、公式なスポーツ・イベントでのビール宣伝禁止を解除する法案を承認した。法案審議の期間は10日と記録的な早さだった。この法案によると、2019年まで、スタジアム、スポーツを中継するテレビ番組で、ビールを宣伝しても良いという。また印刷物にも、先頭ページと最終ページを除いて、広告を掲載することが可能となる。

 投資会社「フィナム・マネジメント」のアナリストであるマクシム・クリャギン氏はこう話す。「何よりも2018年ロシアW杯の実施という条件が決定させた。大会の大口スポンサーは国際的な大手ビール会社。また、このビッグイベントの収益性と回収性を高めるためには、追加的な資金を呼び込むことも必要」。経済の落ち込みと赤字予算を背景として、他の資金源を確保することも、喫緊の課題だという。

 広告の復活をどこよりも喜んだのはビール会社。ビール醸造会社「バルティカ」(カールスバーグ・グループに入っているロシア最大のビール会社)マーケティング部のマクシム・ラザレンコ副部長は、ロシアNOWの取材に対してこう述べた。「当社は長年、さまざまなスポーツ、スポーツ・クラブ、リーグを支援している。スポーツの発展は常に、地元社会とのつながりにおける当社の優先事項となっていた。販売拡大は法の範囲内でのみ行われてきた。2018年にロシアで開催されるW杯に向けて、スポーツ・イベントの開催会場、定期刊行物、テレビでのビールの宣伝に対する制限が撤廃されることはとても嬉しい」

 「バルティカ」は以前、国内の数々のスポーツ・イベントを支援し、ロシア・プレミアリーグのスポンサーも務めていた。

 

世界では宣伝が一般的

 法律事務所「ズイコフ&パートナーズ」のセルゲイ・ズイコフ最高責任者はこう話す。「ビールが国民的な飲み物となっている国(ドイツ、チェコ、オランダなど)、昼食の休憩時間にビールを飲むことが文化となっている国では、ビールの宣伝は禁止されていないし、一般的」。

 アメリカのビール「バドライト」は、全米バスケットボール協会の全試合の正式な飲料である。同じくアメリカの「サミュエル・アダムズ」は、ボストン・マラソンの公式スポンサーだ。

 ロシアの投資会社「UFS」の主任アナリスト、アレクセイ・コズロフ氏はこう話す。「海外の例としては、ハイネケンとUEFAチャンピオンズリーグの長年の提携もあげることができる」

 ロシアでは2002年、スタジアムやその他のスポーツ・イベントでのビール販売が厳しく禁じられた。この原因となったのは、2002年日韓W杯でロシア代表が日本代表に負けた後、モスクワ中心部でサポーターが起こした暴動。このようにして、ロシアはスタジアムでビールが販売されない、めずらしい国の一つとなったのである。

 反ビール広告が始まったのは2004年。スタジアム、朝と昼のテレビでの宣伝が禁止された。2005年1月1日からはビールの宣伝に人と動物のイメージを使用することが禁止され、2009年にはラジオとテレビから完全に宣伝が消えた。2012年9月、ビールが他のアルコール飲料と同等の扱いになった。

 

鶴の一声 

 ウラジーミル・プーチン大統領は2012年、この制限に反対し、「ヨーロッパまた世界のどの国でもスタジアムではビールが販売されているし、いかなる支障もない」と述べていた。

 オランダのビール会社「ハイネケン」には、ロシアでビールの宣伝が復活した後、スポーツ・イベントでの宣伝に50億ルーブルを投じる用意がある。ノンアルコール・ビール「アムステル」のコマーシャルは、2014年6月末からすでにロシアのテレビで流されていた。ハイネケン広報部はこう伝えている。「試合観戦時にビールを飲むことは長年の伝統であり、そのことと、アルコールの悪用および、それによる健康への悪影響との間には、何の関係もない」。

 ズイコフ氏によると、「スポーツ・イベントでのビールの広告はビール自体の消費に影響しない」という。

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