ロシアでの現地生産化を検討する企業

AP通信

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ドイツの自動車メーカー「ダイムラー」が、ロシアで高級セダン「メルセデス」の生産を行う可能性がある。組み立て候補地にはモスクワもあがっている。経済制裁にもかかわらず、成長市場に関心を持つ海外メーカーはロシアでの工場開設を続けており、ここ数ヶ月で日本の「日立建機」とドイツの「メルク」が新工場を立ち上げている。

ロシアで現地生産化

 ロシアの経済紙「RBCデイリー」が伝えている関係筋の話によると、ダイムラーはメルセデスの生産拠点として、ロシア国内のいくつかの場所を検討。「ルノー日産」が組み立てを行っているモスクワもその一つ。ダイムラーは特に高級セダンの生産を計画しており、7月中旬の同社の取締役会の決定待ちとなっている。ダイムラーはすでにロシアのトラック・メーカー「カマズ」との合弁企業をロシアで設立しており、モスクワの東1060キロメートルに位置するナベレジヌィエ・チェルヌィで「メルセデスベンツ」トラックを生産している。モスクワの東420キロメートルに位置するニジニ・ノヴゴロドでは、ロシアの自動車メーカー「ガズ」が、契約にもとづいてライトバン「メルセデス・ベンツ・スプリンター・クラシック」を組み立てている。

 高級セダン部門のダイムラーの競合企業の多くが、すでにロシアで組み立てを行っている。バルト海沿岸の飛び地カリーニングラードではロシアの自動車メーカー「アフトトル」が「BMW」セダンを組み立て、モスクワの南200キロメートルに位置するカルーガでは「フォルクスワーゲン」の工場が「アウディA6」と「アウディA8」を生産している。

 

対露制裁とWTO加盟の影響は 

 ロシアの投資分析会社「インヴェストカフェ」のジュニア・アナリスト、ロマン・グリンチェンコ氏はこう話す。「多くの会社がロシアでの現地生産化をうまく進めている。市場の今後の成長とそれにともなう収益が見込める新興国であるため」。ロシアのメーカーからは競争力のある提案がないため、エンド・ユーザー向けの価格を抑えることで、市場でのシェアを高めることができる。

 しかしながら、ルーブルの不安定なレートと対ロシア経済制裁によって、専門家らはロシアでの組み立て生産予測の見直しを余儀なくされた。ドイツのコンサルティング会社「ローランド・ベルガー」は、ロシアの自動車メーカー「ソレルス」の受注を分析し、経済の現状維持とWTO加盟による輸入関税の引き下げという条件下での、「2017年以降のロシアでの現地生産化は適当ではない」と判断。ロシア市場での現地生産化された外車のシェアは、現在の52%から26%まで低減する可能性があるという。また、リスク圏内に入るのは中国のブランド、プジョー・シトロエン、BMW、サンヨン、オペルだという。

 

参入後の展望

 ロシアでの現地生産化をすでにとりやめた会社もあるが、それは今のところ、自動車メーカーではない。イギリスの会社「ディアジオ」のウイスキー「ジョニー・ウォーカー」の現地瓶詰め化が始まるというニュースが、5月に流れた。だがその後、ディアジオはこれを否定。投資会社「フィナム・マネジメント」のアナリストであるマクシム・クリャギン氏はこう話す。「世界的な大手企業によるこのような製品の現地生産化は、ロシアでのウイスキーや度数の高い高級アルコールの販売の十分な成長率を考えると、中期見通しでは発展の可能性を秘めている」

 ロシア市場には、新しい会社の参入も続いている。7月にはドイツの製薬会社「メルク」が、ロシアの製薬会社「ファルムスタンダルト」との提携の一環として、モスクワの東1345キロメートルに位置するウファで、多発性硬化症治療薬「レビフ」の生産を開始。「メルク・セロノ・ロシア&CIS」のロジャー・ヤンセンス社長はこう話す。「ロシアは我々にとって戦略的に重要な地域であり、当社発展の重要かつ合理的な一歩として、現地化プロジェクトの実現を検討している」。ロシアで現地生産化することで、オリジナルの医薬品がより手に入りやすくなるという。メルクは現在、腫瘍学および内分泌学を含む治療学分野に特化したロシアの大手と、他のプロジェクトに取り組むことを検討しているという。

 

日立建機は出荷開始 

 日本の「日立建機」は6月、モスクワ州に隣接するトヴェリ州で生産された、ショベル「ZX200-5G」と「ZX200LC-5G」を5台初出荷した。工場の稼働開始は昨年12月。現地生産化の総投資額は25億ルーブル(約75億円)。日本の日立建機の技術者がロシアのニーズに応じた独自の図面と技術を開発し、それにもとづいてすべての製品が生産されている。

 クリャギン氏は、ロシアの現地生産化が続くと考えている。ただし、新しい生産にかかるコストと、製品輸入による収益の損失を比較する必要があるという。「経済がグローバル化する中で、現地生産化は客観的な妥当性の枠内に制限され、目的自体にはならない。場合によってはコストが高くなりすぎる」