廃車前の車を輸出

タス通信

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さいたまのタウ社

 JRさいたま新都心駅に直結したオフィスビルの10階。受付ロビーでは大型モニターに映し出されるウラジオストクの映像が来客を出迎える。日本で使われなくなった車を輸出する株式会社「タウ」の本社だ。同社にとって、ロシアは最大の輸出先だ。

 タウのビジネスは自動車関連業界の中でも変わっている。中古車輸出なら珍しくないが、中古車よりむしろ、事故や災害で傷つき、廃車になる可能性のある日本車を安く入手して輸出している。

 このような「ダメージカー」を修理して乗れるようにするのは原則的に輸出先のパートナー。人件費が高い日本よりも低コストで直すことができ、現地で売る時に原価を抑えられる。

 あまり注目されることはないが、自動車ディーラー、損害保険会社、リース会社などダメージカーを抱える企業は存在する。そうした企業から見れば、解体業者に処理を頼むより、再利用を前提とするタウに売却した方が経済的にもメリットがある。各方面の利害が釣り合ったところにビジネスが成立しているわけだ。

 創業は1996年。初期の輸出先はオーストラリアやニュージーランドが主だった。対ロシアでは、北陸や新潟などを拠点に中古車を買い付けているロシア人向けの小さな取引がほとんどだったという。

 

売り上げ1位はロシア向け

 だが2000年代に入ってからのロシアの経済成長とともに取扱量が急増。営業や顧客対応のため、04年9月にはウラジオストクに事務所を設けた。

 現在、100カ国を超える地域に輸出する中で売り上げ1位はロシアだ。ロシア・CIS圏で言えば、13年9月期は同社の海外売上高のうち4割を占めた。09年にロシアで中古車への輸入関税が上がった影響で失速した時期もあったが、その後は順調に回復している。

 タウの宮本明岳社長はロシア市場について「住民の所得は上がっており、まだまだ拡大を続ける」と見る。

 今ウラジオストク以外では、販売などの協力業者がハバロフスクにいるほか、つい最近、ノボシビルスクにも同様の業者を確保した。さいたまの本社には10人近いロシア人社員が在籍。対ロシア体制は充実しているといえるだろう。。

 

ウラジオ事務所10周年

 ウラジオストクの現地事務所は今秋、開設から丸10年を迎える。

 決してロシアとのパイプが太かったわけでない同社にとって、ここまでの道のりは平たんではなかったはずだ。

 「当初はロシア人の労働観や習慣がわからず、日本式を通したため現地社員が定着しませんでした。でも休暇や賃金など労働条件を現地向けに調整し、今は勤続3年の社員も出てきています」(宮本社長)。

 5月中旬、ウラジオストクで日本製エンジンオイル販売の発表会を開いたところ、メディア記者に交ざって、地元の車好きをはじめとする「タウのファン」が数十人集まったという。

 いずれは車以外の分野でもロシアに日本製品を届けることを視野に入れている。次の一手をどう繰り出すか、経験で培った日露ビジネスのノウハウを元に社内議論を重ねている。