AP通信
日本がロシアからの天然ガス・パイプラインの敷設を目指して動いていると、アメリカの通信社「ブルームバーグ」が伝えている。33人の日本国会議員からなる連盟は、秋に予定されているウラジーミル・プーチン大統領の訪日が実現した際、安倍晋三首相がこれを議題に挙げることができるよう、提案パッケージを作成した。
サハリンから茨城県まで、見積は59億ドル
サハリンから茨城県までの、全長1350キロメートルのパイプラインが想定されているという。議連を率いる竹本直一自民党衆院議員がブルームバーグの取材に応じ、これを明らかにした。プロジェクトの見積価格は59億ドル(約5900億円)。
日本は昨年、8749万トンの液化天然ガス(LNG)を輸入した。
昨年のガスの輸入額だけで7兆ドル(約700兆円)を支払っている。額は3年間で2倍以上に拡大。今のところ、日本はロシア産LNGを必要としている。ロシアからの輸入量は、日本の全LNG輸入量の9.8%。オーストラリア、カタール、マレーシアに続く4番目に位置している。
5月のLNG平均価格は100万BTUあたり13.5ドル(約1350円)。2月がピークで、19.7ドル(約1970円)だった。パイプラインを建設すると、ガス輸入価格を著しく抑えることができる。竹本議員は、「LNG工場の建設は大きな投資で、ガス料金を著しく増大させる」と説明する。
パイプラインの輸送能力は年間200億立法メートル。これはLNG1500万トン、または日本の輸入量の17%。
賛否両論
日本がパイプライン建設の問題を提起したのはこれが初めてではない。すでに9年が経過しており、福島原発事故によって新たな協議が始まった。ガスプロムのアレクセイ・ミレル社長は2012年、このプロジェクトの妥当性に疑問を示した。「複数の敷設コースを分析したが、答えは同じだった。日本までのパイプライン敷設は、技術的にも、経済的にも妥当ではない。したがって結論は出ていて、LNGのみの輸出となる」。ガスプロムはガゼータ・ルの取材に対し、こう答えた。「プロジェクトの採算性についてのガスプロムの意見は変わっていない。この地域では地震活動が活発であることがみとめられるし、深さが最大3000メートルの、海嶺の起伏の激しい海底で、パイプラインを敷設することは、既存の技術的可能性の限界に近い」
独立エコノミストの藤沢治氏はこう話す。「ロシアは市場の拡大に関心を持っている。中国と契約を結んで、次は日本。そうすればヨーロッパへの輸出に依存しなくてもよくなる」
ロシアの専門家も、パイプラインに複数の長所を見いだしている。ロシアの資産運用会社「コンサーン・ジェネラル・インベスト」のヴラジスラフ・メトネフ氏はこう話す。「買い手にとっては、パイプラインのガスが全体でLNGより20~25%安くなる。これに加え、日本はガス輸入国として、ロシアとの交渉で良い地位を得られるだろう。ロシアにとっては、パイプラインのコースは技術的な観点から、よりわかりやすく、すばやいソリューション。ノース・ストリームやブルー・ストリームのプロジェクトで、すでに経験がある」
相互の信頼が必須
ただこの案には、ガスの唯一の買い手に依存してしまうという、リスクもある。このリスクは長期契約によって低減可能。契約条件(価格や輸入量)が変わった際に、損失を被る買い手側が融資する契約である。
このように、パイプライン敷設には当事者同士の高い信頼度が必要になる。
「LNGの決定はロシアにとって、総じて販売路を柔軟にするもの。またすでに『ヤマルLNG』(ノバテク)、『ウラジオストクLNG』(ガスプロム)というプロジェクトもある。ロシアから日本へのパイプライン経由のガス供給案が完全になくなってしまうと、ロシアのLNGプロジェクトの将来にも影響を及ぼす」
日本とロシアの信頼関係の問題も簡単ではない。平和条約はまだ結ばれていないし、領土問題も存在する。またウクライナ情勢をめぐり、対ロシア経済制裁も発動されている。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。