セルゲイ・ククシン撮影/ロシア新聞
―今回のロシア代表団の中国訪問の過程では、ロシア産ガスの中国市場への輸出に関する先例のない協定が調印されましたが、この協定はロシアと西側のパートナーの関係悪化に起因していると言えますか?
中国との関係は、欧州の出来事とは一切無縁で、露中間には、かねてからの安定した関係があり、エネルギー関連のものを含む多数の政府間委員会が存在しています。今回の予定された訪中の際に調印された多くの協定は、両国関係のさらなる発展を促すものと期待されます。
―ロシアのエネルギー資源の輸出拡大という点からみて現時点でもっとも有望な市場は?
私たちは、EUをはじめとした従来のバイヤーに対する契約義務をつねに履行しており、それを放棄するつもりはありません。しかし、消費のテンポは、まず第一にアジア太平洋地域の中国、インド、日本、韓国、島嶼国家などで増大する見通しであり、私たちは、そうした需要を満たすべく産地を開発したり必要なすべてのインフラを整備したりしています。
―西側のパートナーとの関係の冷却化といったものを感じましたか?
たしかに、現在、ロシアで活動する欧米企業に対する政治家サイドからの風当たりは強まっていますが、そうした圧力は、経済ではなく政治の話であり、企業側は、制裁の導入を非合理的とみなしています。
―欧州へのロシア産ガスの輸出に取って代わるものはあるでしょうか? 欧州をアメリカ産ガスの輸入にスイッチさせるとの米国の主張をどう思いますか?
それは、根拠のない声明であり、欧州は、ロシア産のエネルギー資源なしでは立ちゆかず、輸入に占めるロシアの割合を減らすことができるとしても、それは何年も先のことでしょう。ロシアは天然資源に恵まれており欧州にはそれがないというのは、歴史的な事実なのであり、しかも、2020年までに欧州におけるガスの総採取量は1千億立方メートルすなわち20%減少し、ロシアからの輸入が減れば価格は大きく跳ねあがります。つまり、ロシア産エネルギー資源の輸入拒否を口にできるのは国際市場のシステムにあまり精通していない人、ということになります。私たちは、欧州へエネルギー資源を供給するどんなメーカーとも競争する用意がありますが、今のところ、価格の点でロシアに太刀打ちできるところはなく、カタールでさえ、欧州向けの輸出を大幅に減らして価格のより高いアジアへそれを供給しています。現時点で米国に余剰のガスはなく、ガスの輸出に関する法律も採択されておらず、ガスをさかんに国外へ輸出すれば国内の価格が上昇するリスクがあります。手元の情報によれば、今のところは主にアジア向けのわずか900万トンの液化ガスを生産するターミナルの建設に関する決定しか行われていません。アメリカも含めてガス価格で欧州を補助するところはおそらくないでしょう。ロシアからの輸入の割合を低くしたいと思っても、今のところ経済的な観点からそれは叶いません。もっとも、私たちにはどんな場合でも競争する用意がありますが…。
―ウクライナ側との交渉はどういった段階にありますか?
目下、欧州委員会との交渉プロセスが進行中ですが、ウクライナは、3月からガスの代金を支払っていません。状況は、きわめて深刻であり、私たちは、債務の支払いおよびウクライナ経由のガス供給の保障という観点からこれを懸念しています。私たちは、5月初めに前払い制へ移行しましたが、債務返済の問題は、ウクライナにおける政変を支援したからにはその国の出来事に対する責任を負わねばならないEUと一緒に解決する必要があります。もしも今夏に地下のガス貯蔵施設に必要な量のガスが満たされなければ、ウクライナ側は、それが欧州向けであるとしてもガスを奪うかもしれません。総じて、私たちの姿勢は明確であり、それは、ウクライナ側には5年前に調印された契約に基づく義務があり、これはかならず履行されねばならない、というものです。
―エネルギー資源採取の新しいテクノロジーの発展という観点からロシアはどれくらい競争力を備えているのでしょう? この面でロシアは西側にどれくらい依存しているのでしょう?
私たちは、絶対的な競争力を備えており、ペチョラ海では、すでにプラットフォーム「プリラズロームナヤ」が始動しています。それはとてもユニークなプロジェクトで、ノルウェイの同様のプラットフォームは北極の条件下で活動できませんが、ロシアのそれには可能です。しかも、最初の石油はすでにロッテルダムへ運ばれている、つまり、私たちには将来に対する技術的な備えができているわけです。
―新しいテクノロジーの開発という点では、ロシアには「ヤマルLNG」という優先的なプロジェクトがありますが、ロシアは、液化ガス市場の6%のシェアを獲得してカタールやオーストラリアを凌ぐことができますか?
「ヤマルLNG」は、優先的プロジェクトの一つにすぎず、他にも、ウラジオストク、サハリン、レニングラード州における液化ガス工場の建設が予定されています。生産力500万トンのヤマルの工場の第一工期分は、2017年に完成することになっており、国家は、インフラの費用を負担することでこのプロジェクトを支援しました。ですから、液化天然ガス市場におけるロシアのシェアは増大します。「ヤマルLNG」だけでも1500万トンの増加となりますから、現在の1000万トンと合わせればほぼ二倍に増えます。他のプロジェクトが実現されると、LNGの総採取量は6000万トンとなります。LNGの輸出先は、中国、インド、日本などです。
―代替エネルギー源の分野においてロシアには現代的なテクノロジーはありますか?
現在、ロシアでは太陽電池や風力発電装置がさかんに開発されつつあり、最近、国内の必要量の注文をこなせるシステムが創出されました。この市場は補助金によって発展しつつありますが、それは予算からのものではなく、消費者自らそうしたエネルギーに対してより高い料金を支払っています。クリミアにはソーラーステーションが幾つかあり、この分野はクラスノダール地方やヤクーチヤ(サハ共和国)で発展しつつあり、カムチャッカやクリル(千島)列島では地熱発電プロジェクトが推進されています。現在、再生可能エネルギー源の割合は1%足らずで、私たちはそれを2%に増やす予定ですが、いずれにしても、エネルギー消費に占める再生可能エネルギー源の割合はそう大きくはなりません。
―ロシアには自国の利益を主張するための外交の場はそう多くありません。先日モスクワで行われた国際経済フォーラムでは、国際社会に何らかのメッセージを発信することができましたか?
国際経済フォーラムは、ひじょうに重要な会合であり、私たちは、3年前に同フォーラムのロシアでの開催が決定されたことに対して深く感謝しています。今年は、15の国際機関のトップが出席し、およそ100の代表団が参加しました。しかし、こうした行事の目的や成果となるのは、きまって具体的な決定ではなく共同の声明です。今回のフォーラムにおける主な議題は、エネルギー資源の需給の構図およびその変化でしたが、すべての参加者が、ベクトルはアジア太平洋地域のほうへシフトしつつあるという見解で一致しました。会合では、現在26億人が食事を作るのに非現代的なエネルギー源を使用しており13億人がエネルギーへのアクセスをまったく有していないという報告がありましたが、この問題は何とか解決しなくてはならず、供給の安全や現代的ツールの利用といった問題がさかんに議論され、これらすべての事柄がフォーラムの成果をまとめる声明に盛り込まれました。
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