児童のサマー・キャンプが人気

「アルテク」キャンプ、1963年=ペトルショフ撮影/ロシア通信

「アルテク」キャンプ、1963年=ペトルショフ撮影/ロシア通信

ロシアでは児童向けのサマー・キャンプの需要が急拡大しており、一プロジェクトに約100億円を投じる用意のある投資家らが市場に参入している。2週間のキャンプの参加費用は約10万円。子どもたちはさまざまな授業を受けたり、「ミシュランガイド」で星を獲得している業者の食事を食べたりすることができる。外国の子ども向けのプログラムも増えていく可能性がある。

「アルテク」キャンプ、1963年=ペトルショフ撮影/ロシア通信

始まりはソ連時代にさかのぼる

 サマー・キャンプというものがあらわれたのはソ連時代。子どもが夏休みの時間を有効利用できるように企画されたもの。参加する子どもはピオネールと呼ばれていた。ロシア赤十字が主導して1920年代に始まったこの活動では、街中に住む子どもがひと夏をキャンプで過ごしていた。ピオネールは村の住民の手伝いをし、村の子どもたちに交じって楽しい田舎生活を体験していることも多かった。最初に組織され、もっとも有名だったキャンプは、1924年にクリミア半島で開設された「アルテク」。ここには外国の子どもも招かれていた。1980年代末までにソ連国内には約4万ヶ所のキャンプができ、年間最大1000万人の子どもが参加した。大手工場などの活動が多かったが、ソ連崩壊後の1990年代に国営工場の多くが存続の危機に陥り、キャンプは閉鎖された。

 

復活したキャンプ

キャンプに参加した児童の数

昨年ロシアでキャンプに参加した児童は520万8000人。受け入れた施設は4万5000ヶ所以上。オリガ・ゴロデツ副首相によると、今年は850万人の利用が見込まれており、施設も5万3000ヶ所に増えるという。ロシアの2013年の子どもの人口は6~15歳で約1400万人。約半数がキャンプを利用している計算になる。

 ロシアでは最近、サマー・キャンプの構想が復活。ピオネール・キャンプとは違う、新しいレベルのキャンプだ。モスクワ市中心部から西に120キロメートルほどに位置しているボロジノ村には今年7月、児童創造キャンプ「セロー」が開設される予定だが、申し込みの受け付け開始後数日間で、3000件の申請があった。このプロジェクトの特徴は、さまざまな有名人、ブロガー、ジャーナリストが創設に関わっていること。中には「エスクァイア」誌ロシア版のフィリップ・バフチン編集長もいる。

 キャンプでは毎日、映画、音楽、絵画などの芸術活動が行われ、ミシュランガイドで星を獲得している唯一のロシア人レストラン店主である、アナトリー・コム氏が料理長を担当する。2週間の参加費用は3万7000ルーブル(約11万1000円)ほど。これは慈善活動ではなく、ビジネスとして発展している。投資家集団が資金援助を行っており、2018年までにロシア国内で25ヶ所のキャンプを開設しようとしている。各キャンプへの投資額は37億ルーブル(約111億円)ほどで、大部分は借り入れ金になる。

 

専門サイトで検索・予約

 ロシアの投資会社「フィナム」のデータによると、ロシアではキャンプが年間10~15%増加している。児童休暇プログラムの専門ウェブサイトwww.incamp.ruも立ち上がり、約800件の国内外のプログラムの中から、価格、年齢、ランキング、テーマなどの条件で検索、予約ができるようになった。児童向けの旅行市場では、テーマ・キャンプがトレンドの一つになっている。ロシア西部のさまざまな場所で10~13歳の子どもの夏季エコ教室が行われているし、カレリア共和国の白海沿岸では北部の自然を学べるキャンプも企画されている。このようなキャンプの費用は2週間で1200ドル(約12万円)ほど。トヴェリ州の美しいセリゲル湖(モスクワ市中心部から北西約370キロメートル)では、ダンス・キャンプも行われている。

 

英語を学ぶキャンプには外国人教師も

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夏はキャンプだ

 ロシアの投資分析会社「インヴェストカフェ」のジュニア・アナリスト、ロマン・グリンチェンコ氏のデータによると、キャンプには競争がほとんどないことから、投資家にとって資金的に大きなチャンスであるという。このようなキャンプは外国の子どもを積極的に受け入れる可能性もあると話す。「現在外国人の利用が最小限であることを考えると、プロジェクトをしっかりと整備して、この分野に外国の子どもを誘致する可能性がある」。現在キャンプに参加している外国人とは、主に教育者だ。サンクトペテルブルク郊外の「イン・オレンジ」キャンプでは、イギリス、アメリカ、カナダ、ニュージーランドなどからの英語教師が活動している。キャンプの関係者によると、給与は2週間で700ドル(約7万円)と少ないが、運営者は追加的に滞在費と食費も支給しているという。

 

子どものためなら

 ロシアでキャンプ展開の大きな障害となっているのが法的規制だと考えるのは、ロシア経済・国家行政アカデミー不動産経済学部生産・サービス分野経営過程管理講座のガリーナ・デフチャリ教授。キャンプに必要な教育者の人数、場所、賃貸借契約の種類などが、法で細かく定められている。

 投資会社「フィナム・マネジメント」のアナリストであるマクシム・クリャギン氏は、このような問題があっても、この分野への投資家の関心はここ数年明らかに高まっていると話す。「投資価値の新たな要因となっているのは、利用者側からの確実な需要。妥当な質と児童向けの追加的なサービスがあって、比較的価格が安ければ、そのような旅行はとても魅力的になる」。国外移住者の子どもに、ロシア語や民族文化を教えるプロジェクトも市場にあるという。

 保護者が子どものためにお金を使ってもいいと考えていることが、市場成長の主な原動力となっている。児童用品業界企業組合のデータによると、ロシアでは児童用品への消費額が子ども1人につき1000ドル(約10万円)。アメリカではこれが2000ドル(約20万円)だが、差は勢いよく縮まっているという。

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