写真提供:Mj-bird / wikipedia.org
日通は12年春から昨年末までの1年8カ月の間に、矢継ぎ早に4カ所の地方営業所を立ち上げた。ウリヤノフスクのほかはトリヤッチ(サマラ州=12年4月開所)、ウラジオストク(沿海地方=12年6月)、イジェフスク(ウドムルト共和国=13年2月)である。
各営業所は、主に自動車産業関連の輸出入をコーディネートする役割を担う。日系自動車メーカー・部品メーカーがロシアの地方に進出しており、各地域で対日本の物流量が増えてきたのに合わせ、日通も拠点を広げてきた。
日系企業の在庫拠点として
始めから積極展開していたわけではない。現地法人「ロシア日本通運合同会社」が発足したころは、日本の実業界でロシアのビジネス環境に対する信用度は低く、物流のボリュームも限られていた。日本企業はロシア国内に在庫を置かず、ロシア企業向けにはフィンランドなどの在庫拠点を利用するパターンも多かったという。しかしその後のロシアの経済成長や信用度の向上を受け、ロシア日通は09年、モスクワに約2万平方メートルの倉庫を確保した。
日本メーカーがロシアに納品する場合、従来ならヨーロッパなどの在庫拠点から運ぶことが多く、そのたびに時間とコストを要していた。あらかじめロシア国内に在庫を持つことでこうした問題が解消される。日通が倉庫を構えた後、日本企業のロシア進出が増え、ほどなくモスクワの倉庫はフル稼働となった。
物流拡大で安定的に黒字計上
自社でロシアの通関までできる体制を整えたのは、日露間の輸送が今後も増えると見るからだ。まずはシェレメチボ空港に専門職員を配置した。将来はサンクトペテルブルク港などの主要港や、地方税関でも通関できるようにしたい考えだ。
ロシア進出当初は物量の少なさゆえ利益が出ず、「撤退」の2文字もちらつく苦しい時期が続いた。しかし現場の地道な努力によって事業が成長し、極東を含むロシア全土7拠点という「10年前には考えられなかった体制」(本社・海外企画部の相澤卓哉次長)を実現。現地法人は安定的に黒字を計上できるまでに育った。今後も物流ニーズに応じて、営業拠点を増やす可能性があるという。
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