ロシアの国営ガス会社「ガスプロム」と、ウクライナの国営ガス会社「ナフトガス」は今月末、ガスの価格を見直す=タス通信撮影
ガスプロムのセルゲイ・クプリヤノフ広報担当者はこう話す。「当社のウクライナとの関係は良好。通過も行われている。ただ支払いとなると、期日を過ぎた未払い額は現時点で15億4900万ドル(約1549億円)。昨年と現在供給されているガスの未払いは多額」。ロシアは以前、ウクライナのガスの未払いを解消するため、ウクライナに30億ドル(約3000億円)を融資したという。
ナフトガスは昨年、ロシアから1000立法メートルあたり平均400ドル(約4万円)で、130億立法メートルのガスを調達。ロシアは昨年12月、2014年の価格を268.5ドル(約2万6850円)まで下げることを決定。だが契約では、価格が3ヶ月ごとに見直されることになっている。
「ウクライナが義務を履行できていないため、現在の値引きを続けられない可能性がある。適時かつ全額の支払いが行われることを契約の値引き条件としている」とクプリヤノフ広報担当者。
ウクライナ・エネルギー・石炭産業省のエドゥアルド・スタヴィツキー元大臣は、ロシアが今年の第2四半期でも低価格を維持することに期待していた。「低価格は維持できると思う。政治的な価格設定から離れることができ、ガス会社だけで交渉できれば」。
現在の1000立法メートルあたり268.5ドル(約2万6850円)で、350億立法メートルのガスを必要としているウクライナは、他のエネルギー市場を検討する可能性もある。だがスタヴィツキー大臣臨時代理はこう話す。「供給元を広げるのは技術的に今でも可能。天然ガスの供給問題について、私はずっと最大限の自由化を支持してきたし、それを変えることはない。ただし安い国からの輸入が必要で、ロシアが現在、そのような国となっている」。
いかにして返済するか
ウクライナの対外債務は1400億ドル(約14兆円)にのぼっているが、うち650億ドル(約6兆5000億円)を今年にも返済しなければならない。国家予算はほとんどなく、外貨準備高は短期債務の4分の1にしかならない。ウクライナのアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は、国庫が空っぽであることを明らかにしている。
同国のアルセニー・ヤツェニュク暫定首相は国民の協力を求め、経済的な打開策を模索。国内のガス使用料などを引き上げ、経済の改善を図る可能性がある。さらに助成金や社会プログラムを削減する可能性もある。
EUは値引き反対か
ウクライナ・エネルギー・石炭産業省のユーリ・プロダン新大臣がこの状況に影響を及ぼすことはできないと考えるのは、ロシア・エネルギー専門家センターのアナリスト、アレクセイ・プハエフ氏。ロシア政府がいつウクライナ政府を正式な政府と認めるかによって、すべてが変わる。「合意の決定は現在、プロダン新大臣ではなく、ロシア政府に依存している。ロシア政府は依然として、ヤヌコビッチを正式な大統領だと考えている」。
ロシア・エネルギー専門家センターのアナリスト、政治学博士である、ロシア経済・国家行政アカデミー・国家安全保障学部対外経済活動講座のアレクサンドル・ミハイレンコ主任は、ウクライナの新政府がロシアとガスについて交渉できないと話す。「プロダン新大臣が交渉を成功に導けるような人格特性を発揮できるかは、大きな疑問。ロシアとウクライナの関係が絡む全体的な状況が、ガスの値引き交渉によい影響を与えるとは言えない」。
恒例のウクライナ向けの値引きには、EU自体が反対する可能性もあるという。「ウクライナの新政府はEUと連合協定を結ぼうとしている。ロシアはEU向けのガスにそのような特恵を行っていないため、EUが反対する可能性がある。ウクライナにだけ特恵を与えることは、競争や市場の法律をゆがめかねない」。
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